「サル化」する人間社会 (知のトレッキング叢書)

著者 :
  • 集英社インターナショナル
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797672763

作品紹介・あらすじ

ヒトの睾丸はチンパンジーより小さく、ゴリラより大きい。この事実は何を物語っているのか。さらに、現代は「上下関係」のないゴリラ社会ではなく、「序列重視」のサル社会に移行していると警鐘を鳴らす。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルからもっと社会学的な本をイメージしていたのだが、良い意味で裏切られた。著者はアフリカでのゴリラ研究のフィールドワーク経験が豊富で(あのダイアン・フォッシーとも関わりがあったらしい)、それを元にした比較行動学的内容が9割を占め、より一層私好みの本であった。

    著者の研究に基づいたゴリラの生態について詳しく述べ、また超序列社会のサルを引き合いに出しながら両者の違いを比較、そこから、最終章では、人間社会を優劣のない平和主義のゴリラとサル社会との中間くらいと位置づけ、サル化している、と警鐘を鳴らして締めくくられている。
    ははあ、だからこのタイトルなのかと納得できたものの、個人的には、著者の研究によるゴリラ考察が単純に面白く、最終章はなくてもよかったのでは、と思ってしまった。

    霊長類の生態に興味があればとても楽しめる一冊。

  • ゴリラとサルに二分される。

  • 読んで良かった面白い。タイトルみを感じるのは最後のちょっとだけでほとんどはゴリラの社会。

    猿は勝ち負けがあり上下関係があるけどゴリラにはなく、同性愛行動もする。

    動物にそれぞれ名前をつけて観察するのが日本発でしかも下位の動物に名前をつけるとは!と西洋から反感を買うのは時代を感じてここまでしょうもないのかと笑ってしまった。

    他の本も読んでみよう。

  • サル、ゴリラ、チンパンジーとヒトの距離感と、なぜヒトがこのような社会を営むのかをつかむことができた。筆者の山極さんがゴリラへの愛情を込め、今西錦司さんから代々受け継がれる京大の霊長類学の系譜を丁寧にたどり、人間社会にメッセージを送る内容。幼少期のゴリラの遊びなどほんわかする話もあるし、ゴリラの同性愛、家族の作り方などはヒトにも通じる点があり考えさせられる。

    子供に読ませたいと強く感じた。

  • ゴリラの生態を研究している研究者の方から見た人間社会。

    生物って、いかに自分の遺伝子を残すか(生殖活動)と、いかに食料を確保するか、と言うところにすべてつながっていくのかなぁ、と改めて思った。

    そして、タイタスとの26年ぶりの再会の話は目がウルウル。

    母性社会(サル)なのか父性社会(ゴリラ、チンパンジー)なのか、家族の作り方のあり方も、進化の中で変わっていくとのこと。そして人間は、家族のほかに社会的集団も持つ。

    瞳によるコミニケーションで、人は白目があるけれども、白目があると視線が分かるので行動が読める。コミニケーションには有効だけれども捕食者に対峙するときにはデメリットなので、類人猿にはない、と言うのも面白かった。

  • 猿は勝敗をつける。上下関係組織をもつそうです。それに対してゴリラは、勝敗を付けずに喧嘩してもお互いを理解して和解するそうです。組織も対等だそうです。

  • チンパンジー(サル)の欲望と
    ゴリラの家族の論理

    これが人間…。

  • 2021/02読了。霊長類研究の話にはじまって、人間社会を論じる。平易な語り口で霊長類社会と人間社会の差異や類似点、最近の(といっても2014年の本だけど)インターネット社会の風潮まで幅広く。

  • サル化した現代社会の考察というよりゴリラの社会性を綴った本。著者の長年の研究を読みやすくサラッとまとめてます。
    著者は序列社会のサル社会より平等なゴリラ社会のほうが過ごしやすいというスタンス。

    暇つぶしにおすすめな一冊。

    バローの惣菜パンを食べてる感じ。

  • ゴリラ生態研究記! タイトルの内容は主に最終章

    タイトルから人間社会について論じている本かと思いきや、そうではなく、その前段階として類人猿(ゴリラなどのサル)の社会を学び人間と比較することが人間社会の起源を検討する上で重要だとしています。

    そのため、筆者のゴリラ研究での経験談が存分に語られています。

    ●印象的だったところ
    ・二十数年ぶりに合ったゴリラが筆者を覚えていて童心に返る行動をした

    ・人間社会はサルのような個人主義に向かっている
     サル社会は厳しい上下社会。個人主義の生活が家族やコミュニティからの束縛から離れて良いと思うかもしれないが、平等さは失われる。

    ・人間の技術がどんなに進歩しようとフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションは失われない。

    ・・格差社会の原因は個人主義の隆興によるものが根本的なものの可能性があるが、古代から人間社会の基礎となってきた家族や地域コミュニティがなぜ疎まれるようになってしまったのだろうかということについての著者の見解が知りたかったなと思いました。(そこは専門外なのかもしれませんが)

    ワークライフバランスが今後発展して、「個人で」働いて「家族などのコミュニティ」での時間を大切にするとなっていったとき格差はどうなるのか?

    そんなことを考えさせられました。

    ●余談
    他の方も書いていますがもっといいタイトルが合ったと思います笑

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著者プロフィール

第26代京都大学総長。専門は人類学、霊長類学。研究テーマはゴリラの社会生態学、家族の起源と進化、人間社会の未来像。

「2020年 『人のつながりと世界の行方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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