ロシア革命史入門 (インターナショナル新書)

著者 :
  • 集英社インターナショナル
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797680072

作品紹介・あらすじ

200年に及ぶ帝政を打倒し、世界初の社会主義国を樹立したロシア革命の本質は「反戦運動」だった! 二月革命勃発から100年を迎える今年、まったく新しい視点で20世紀最大の社会実験の実体を捉え直す。

感想・レビュー・書評

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  • 入門というタイトルだけど、なんかロシアについての前提知識がけっこういるようだった。たぶん著者の年代の人には常識なんだろう。そして著者の年代の人からしたら当然だけど、それと別にこういう事実もあってすごいでしょ!?という雰囲気がほぼ全編にわたって醸し出されていた。
    内容としても、著者としては、イデオロギー的革命だと(自分が)考えてきたロシア革命が反戦市民運動の賜物だったのだ!!という論旨なのだが、そのわりに主人公がレーニンなので彼のイデオロギーと軌跡の話題が大半で、都市部の庶民層なり農村部なりの人間の話はイマイチぼんやりとしか描かれない。
    これ読むなら最初からもっと分厚くていいからわかりやすい教科書読む。

  • ロシア革命の勉強しました!

    あとがきのこの文章が心に残ります。

    ロシア革命の本質は、ロシアの民衆と兵士が手を組んで残忍な戦争を終わらせようと決意したところにあったのだ。その結果、戦争に勝利して権力を確立しようとする皇帝や莫大な利益を求めて、そこに群がる資本家たちを打ち倒す活動の成果がロシア革命だったのである。これは左翼主義と言うより、人類史上まれに見る最大の「国際的な反戦運動の成功」であった
    ところがそうして生まれた共産主義国のソビエト政府が今度は独裁権力を駆使しようとして、手のひらを返したように革命の主体となった労働者と農民と言う最も大切な民衆に対して凶悪極まりない弾圧を加え、罪のない人々を強制収容所に送り、経済崩壊を起こしてしまった。ついにはソ連が共産主義を放棄して資本主義になだれ込んだ。また、それを見てほくそえんだ、アメリカとヨーロッパの強大な資本主義経済支配者が秘密の人脈を通じて、ソ連に乗り込んでソ連の産業を食い物にしてきた。それが「ロシア革命」の結末であった。

  • 何だか、ロシア革命についてそれなりに知っておくべきと感じて。
    …結果、これは知っておくべき歴史ですね… かつ、私が学生だった頃にはまだ知られていなかった事実も近年徐々にですが分かって来ていますし… 学生の頃に表面的に認識していた理解とはかなり異なる風景が。ロシア革命とその前後の歴史およびその背景。

  • 事実関係が主で、思っていたのとはちょっと違った。膨大な資料にあたった労作であることは間違いない。

  • 十月革命が起こるまでの部分は、レーニンがどこに流刑になっただとかどこに逃げただとかどうたらこうたらで読むのが辛かった。。十月革命以降は知らなかった事実が満載で面白い。レーニンによる粛清が歴史的にも有名なスターリンの粛清よりも酷いものだったとは。市民、農民のために立ち上がったはずだったのに、彼らを一番に苦しめてどうする。

    レーニン然りチェゲバラ然り、革命家というものは革命がゴールだとでも思っているのだろうか。その後の政治のお粗末さたるや。今では日本のジャンヌダルク()小池百合子か。

  • 早大卒業後、世界史日本史原発問題など幅広い分野で執筆を続ける広瀬隆さんは、
    ちょうど100年前に起こったロシア革命をくわしく調べるうちに
    いろいろなことに気づかされ、膝を叩いて興奮したそうです。
    おかげさまで私も。

    「この無慈悲な戦争(第一次世界大戦)を終わらせ、
    貧しい庶民に充分なパンを与えるために起こったのがロシア革命であった」のだ。

    「ロシア革命と同時期の日本人が、日露戦争と第一次世界大戦の勝利に歓喜し、
    日の丸を打ち振って軍国主義に突進したのに対して、
    ロシア人が戦争に反対して、その結果、政府を倒して革命を起こしたという史実は、
    きわめて重要な出来事だと思わないか?」

    しかし革命の成功から72年後の1989年にベルリンの壁が崩壊、東西冷戦が終結した後、
    ソ連が行った暴虐の歴史が次々と明るみに出されます。
    「正しくおこなわれた革命」の成功後に、そこに誕生した共産主義の独裁国家が、
    完全に道を誤ったことに原因があったのです。

    レーニンはロシア革命成功までの期間に国外逃亡や流刑を経験しますが、それは意外に穏やかな生活だったよう。
    彼は理論については並外れた知識の持ち主でしたが、
    産業界と国家行政機関で働いた経験がなく、労働者としての体験もありませんでした。
    農業の実態もまったく知りませんでした。
    彼の独裁は、自分が生涯をささげて成し遂げた「共産主義革命の成功を死守する」ためならいかなる手段でもとる、
    ということが目的だったのです。

    ではスターリンは?
    共産主義どころか、帝政を崇拝し、ロシア帝国を建国した“偉大なイワン雷帝”を自分の目標としていた!
    レーニンの時代からロシア・ソ連の70数年の全期間を通じて
    多い数字で2000万から4000万もの人間が粛清されたともいわれています。

    しかもロシア革命は、ロシアから貴族を一掃したのではありません。
    桁違いの人数が粛清されたのは、大部分が農民であり、
    ロシア貴族の多くは家財をもってフランスやドイツなど西ヨーロッパへ逃亡してしまったのです。
    内戦の中で、懐に大金を持つ貴族たちは十分な余裕をもって脱出でき、
    また革命後に愛国心から革命政府に参加した者もかなりの数あり、
    一方で革命政府が求めた人材も「階級闘争」どころか、
    かつてロシアを支配した経験豊かな貴族階級の知識人だったのです。
    これがマルクス主義?

  • ソ連があった事態に革命について書いた書物と、その崩壊後に出てきた資料をミックスして論じられているという本。この方の文章を読むにはいつも若干の留保が必要と感じている。ボルシェビキが政権を取って以後の庶民の虐殺数は、ナチスのホロコーストの数をはるかに上回っている。本当か?と正直言いたくなる。が、革命の理想が諸事情で独裁に暗転していく様はたぶんその通りなんだろうと思った。

  • 「東京に原発を」で知られる広瀬隆さんがロシア革命を論じるというのを楽しみにしましたが、ロシア人民の反戦の機運が革命を生んだとしていたにもかかわらず、スターリン以上に革命直後のレーニンによる粛清や秘密警察の設立によって悪夢の70年が築かれたことがわかる、何とも気分の悪い一冊でした。

  • ロシア革命の流れがわかりやすい。レーニンけっこうひどいな。。

  • 今年がロシア革命100周年ということと、著者が広瀬氏だったため購入。
    ロシア革命の一連の流れがよく理解できる。
    革命が単なる左翼主義運動ではなく、国際規模の反戦運動が昇華したものだった。
    そして、その流れに乗った政権取得までのレーニンの行動は指導者として認めることができるものの、政権取得後とその維持のための非常な弾圧手法にゾッとさせられた。レーニン政権時の5年間は、かの1930年代のスターリン大粛清を上回る規模という。
    共産党独裁の維持という手段が、最終的な目的である正常なる国民国家の運営を崩壊させるという逆説。

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著者プロフィール

京都府生まれ。1986年、京都府立大学文学部卒業。
1991年、大阪市立大学大学院臨床心理学分野後期博士課程(単位取得退学)。2006年、ISAP (International School of Analytical Psychology), Zurich修了、ユング派分析家。
現在、帝塚山学院大学人間科学部心理学科教授、北大阪こころのスペース代表、臨床心理士、公認心理師。

共著書に『キーワードコレクション カウンセリング心理学』、『現代社会と臨床心理学』、『心理療法ハンドブック』、『心理臨床大事典』ほか。共訳書に『ユングの世界』。

「2021年 『セラピーと心の変化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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