今こそ読みたいガルブレイス (インターナショナル新書)

著者 :
  • 集英社インターナショナル
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797680669

作品紹介・あらすじ

新型コロナウイルス禍がもたらす経済停滞、主要IT企業による世界支配、
米中を軸にした新冷戦、一強状態の政治……
新不確実性の時代の今こそガルブレイスの「異端の経済学」を!!
1970年代、アメリカの経済学者、ジョン・ケネス・ガルブレイス(1908〜2006年)が書いた『不確実性の時代』は世界的なベストセラーとなった。
とりわけ日本で大きな人気を博したこの本は、恐慌、冷戦、大企業・多国籍企業による支配、貧困問題などを根拠に当時を「不確実性の時代」として定義した。
数十年が経った今も、これらの問題には解決策が見出されず、深刻さを増すばかりである。
『不確実性の時代』同様の性格をもつガルブレイスの他の著書『満足の文化』『ゆたかな社会』『新しい産業国家』なども丹念に読み解き、現代の難問へのヒントを見つける。
「新不確実性の時代」とも言える今こそ、ガルブレイスを読みたい。

ガルブレイスの経済学が現代に有効な理由
●1970年代からのガルブレイスによる環境問題への指摘から新型コロナウイルス禍を考える
●多国籍企業やグローバリズムを定義する際の「経済の公共目的」という視点から巨大IT企業の存在をとらえる
●ピケティ、スティグリッツ、クルーグマンらスター経済学者にも流れ込むその経済思想から、バブルや格差などの問題を理解する
●女性の解放、国家の解放、信条の解放/現代にも通じる「三つの解放」の重要性を認識する

目次から
序章 ガルブレイスはなぜあれほど人気があったのか?
第1章 揺らぐ「拮抗力」
第2章 誤解された『ゆたかな社会』
第3章 大企業体制の光と影
第4章 「公共国家」は実現しうるか
第5章 軍産複合体の脅威
第6章 「満足の文化」への警鐘
第7章 『バブルの物語』の教訓
終章 甦るガルブレイス

【著者略歴】
根井雅弘(ねいまさひろ) 経済学者。京都大学大学院経済学研究科教授。一九六二年、宮崎県生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。京都大学大学院経済研究科博士課程修了(経済学博士)。専門は経済学史。
『ケインズを読み直す』(白水社)、『経済を読む ケネーからピケティまで』(日本経済評論社)、『20世紀をつくった経済学』(ちくまプリマー新書)、『現代経済思想史講義』(人文書院)、『資本主義はいかに衰退するのか』(NHK出版)など著書多数。

感想・レビュー・書評

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  • 図書館で新刊コーナーにあって、思わず借りたんだけど、面白くて一気読み。なるほど、ガフブレイスというのはこういう人だったのね。拮抗力とか依存効果とかなるほどという感じ。オススメです。

  • 昨年読んだ本の中で紹介されて興味を持ち、読んでみた。
    異端の経済学者ガルブレイスの良き理解者が書いた本だけあって、大変分かり易く面白かった。アメリカの1930年頃の大恐慌時代以降の経済史に対するガルブレイスの理解、そしてその後自身が経験した経済的事象に対する考え方が著書からの引用を通して解説されており、その解説もまた分かり易くなっている。「ゆたかな社会」を今後も読み継がれる経済書と挙げる理由もよく分かる。
    ■寡占企業の私的権力への対抗措置としての拮抗力(強力な需要者、労働組合)
    ■他人よりも優越的に立ちたいという欲求を満たす
     相対的ニーズは際限がない
    ■消費者需要が広告や販売術によって操作されて
     いる現実(欲望は欲望を満足させる過程に依存
     する=依存効果)
    ■「計画化体制」では大企業に都合のよいものが
     優先され、「審美的次元」が犠牲に
    ■軍産複合体と名ばかりの民間企業
    ■「満足せる選挙多数派」の意を汲む政権

  •  アメリカの経済学者 ジョン・ケネス・ガルブレイスの経済学的なスタンスを、主著である3作(『ゆたかな社会』、『新しい産業国家』、『経済学と公共目的』)を軸に解説すると共に、その他の幅広い文筆作品から彼の思想を概観したガルブレイスの解説本。

     「今こそ読みたい」とタイトルにある通り、GAFAに代表される巨大企業による市場独占とその影響、新自由主義に対する再評価の機運、その他にも環境問題や女性の社会進出といった、現代にも通じるテーマについてガルブレイスがこれらをどのようにとらえていたかも言及されています。

     前半では主著の3作を紹介しながらガルブレイスの経済思想が紹介されます。
     印象として、ガルブレイスの経済思想は異端。その上挑発的とも感じます。
     『ゆたかな社会』では、生産側によって演出・創作された購買欲求によってアメリカ経済が過度な消費経済に変遷し、それが民間と公共の資本バランスをいびつにし、結果的に環境問題など様々な社会影響を及ぼすに至ったする論を展開しますし、『新しい産業国家』では、いまや大企業の「計画化」作用が経済全体をコントロールしていると説きます(計画化という言葉自体、社会主義の計画経済を連想させるという意味で挑発的な語彙選択だと思います)。
     どれも学校ではお目にかかれない内容です。

     後半では上記3作以外の文筆作品からガルブレイスの主張が紹介されます。
     軍産複合体への理解と危惧、レーガン・ブッシュ(パパブッシュ)政権における「発言力を持った一部選挙民」(=「満足せる選挙多数派」)による不公平な経済・社会構造、バブルの分析とその崩壊の予言など、どれも卓見だと感じます。
    (ただでさえ名文家だったということもあり、経済学者よりも文筆家のほうが輝いて見えるくらい・・・)

     また著者である根井さんは経済思想史が専門だということで、要所要所に当時の経済思想の潮流が解説されており、これがまた非常に参考になります。たぶん私は根井さんの経済思想史の著作も購入することでしょう。

     ガルブレイスはケネディ大統領とも知己の関係であり、政治スタンスは一貫してリベラルだったそうです。そんな彼が今にも続く保守潮流を「リベラルの後退」と捉えていたのは興味深いと思います。
     個人的にもこの潮流は保守が勢いを増したのではなく、リベラルが凋落したためだと考えている(アメリカではリベラル政権が誕生しましたが、その取り巻きの思想は極端でありバランスを欠きます)のでこの辺も興味深いと感じました。

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著者プロフィール

1962年、宮崎県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、京都大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。現在、京都大学大学院経済学研究科教授。著作に、『今こそ読みたいガルブレイス』(集英社インターナショナル新書)、『英語原典で読むシュンペーター』(白水社)、『現代経済思想史講義』、『経済学者の勉強術』、『来るべき経済学のために』(橘木俊詔との共著)、『ブックガイド基本の30冊 経済学』(編著、以上四冊は人文書院)など多数。

「2021年 『16歳からの経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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