若い読者のための文学史 (Yale University Press Little Histor)
- すばる舎 (2020年12月14日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784799109410
作品紹介・あらすじ
若い読者のために書かれた文学史。網羅的ではないが、古代から現代、そして未来へと文学全体を見渡すことによって、読者が自ら積極的に文学を楽しむ姿勢を持つことを促す本である。ホメロス、チョーサー、シェイスクピア、ディケンズ、ブロンテ姉妹、オーウェル、カフカ、村上春樹など、およそ100名もの作家とその著作に光を当て、その時代や思惑を読み解いていく。聖書、『ロビンソン・クルーソー』、『指輪物語』、『高慢と偏見』、『1Q84』など、おなじみの作品も盛りだくさん。一方で、舞台や映像化、著作権、ベストセラーや賞、電子書籍など、商業面の発展にも言及し、人と文学との関わり方の変化も考察している。
感想・レビュー・書評
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イギリスの文学(とくにイングランド)を中心に据えて語られた文学史(アメリカ文学も少しくらい)。原題がリトルヒストリー(小史)なので、文学全体をカバーしているわけでないけれど、概観はつかめるようになっている。詩や詩人についてもその紹介にけっこう紙片が割かれている。読んだことのある本や、名前だけ知ってる著者やその作品が年代順に繋がっていくような感覚があってとても楽しめた。
流れとしては、神話から始まって、各国の叙事詩の紹介(イングランドはベーオウルフ)があり、具体的な英文学の始まりとして、チョーサーの『カンタベリー物語』が紹介される。その後シェイクスピアや、サミュエル・ジョンソンという最初の偉大な批評家が登場する。(ジョンソンがシェイクスピアを絶賛したことで、シェイクスピアは当代でも詩聖としての文学的地位を確立したらしい。)
小説の興りはイタリアのボッカチオ作の『デカメロン』やスペインのセルバンテスの『ドン・キホーテ』がその原型だとされる。イングランドで小説というジャンルを興した人物として紹介されるのはダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー』。ジョナサン・スウィフトによる『ガリヴァー旅行記』しかり、大航海時代後の英国にあって、旅人の法螺話的な小説がたくさん売れたということのなのだろう。そしてその後ジェイン・オースティンやチャールズ・ディケンズたちが登場し、小説はさらに発展してゆく。
イングランドは僕の理解ではイタリアなどに比べて文化的には後発だったのじゃないかと思うが、本書を読んでいるとまるでイングランドがその"らしさ"というべきものを獲得していく歴史を読んでいるような気もした。文学史という観点からその国の興りを見ている、といった感じだろうか。この場で紹介しきれないくらいたくさんの作者や著書が紹介されていて、とても勉強になった。読みやすく面白いので、文学史の流れの一端をつかむ一冊として、文学に興味のある方は手に取って損はないと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
文学とはなんなのかを知りたくて、読み始めました。文学作品の数々を知ることができる素敵な読書案内書にもなっています。本書で紹介されている書籍を読むことで、人生がより豊かになることでしょう。その作品が生まれた時代背景や、その本が生まれた時期に読まれていた書籍、作者の人物像など知ることができます。
「若い読者のための」と表紙にあるとおり、もっと若い時に読みたかった一冊でございました。 -
ざっくりと文学の流れを大きな枠組みで解説するのかなと思っていたが、それだけでなく間に著作権や検閲、文学賞などの変わった切り口で語られた章もあり、批評家である著者視点での「文学」の定義が興味深かった。
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神話と叙事詩の時代から、インターネットとSNSの時代まで。イギリスを中心に、時代ごとの文学史的ヒーローをピックアップし、コラム形式で解説。著作権という概念が生まれてきた経緯や、資本主義が文学に与えた影響なども取り上げる、軽い語り口で読みやすい文学史入門。
叙事詩を語るのにマーベル映画を引き合いにだしたり、かなりくだけた文章ですごく読みやすいし文学史としてフレッシュで楽しい。一つのトピックについて章内で現代への影響までコンパクトに語ってくれるので、時系列を追ってなくてもその章だけ読めば話がわかるコラム形式。目次通り読まず、つまみ読みでも面白く読めると思う。正直、表紙がとっつきづらいので、もう少しフランクな装幀になるとタイトル通り"若い読者"にプレゼントしたくなるんだけどな(今の表紙だと贈っても読んでもらえる気がしない(笑))。
注意点としては、「文学史」と名乗っているが、世界文学史でも西洋文学史でもなく、あくまで英文学史の本だということ。欽定訳聖書、サミュエル・ジョンソン、桂冠詩人などの章にそれが如実に表れている。ギルガメッシュやイーリアスについて話し、アメリカ文学にも章を割いてはいるけれど、〈文学〉を見る目が完全にイギリスに固定されている。ある種、この本自体が帝国主義的だとも言える(笑)。
訳者あとがきに書かれている通り、選外に漏れている作品を言いだしたらキリがないのは承知の上で、それでもサザーランドの選出はクセが強いと思うのだ。ブルームズベリーグループのモダニストに数章割いてシュルレアリスム運動には触れなかったり(これはわかるけど)、ロシア文学者は春樹のお気に入りとしてドストエフスキーが名前だけでてきて終わりだったりする。ポストモダンを扱う31章「仕掛けの箱」にナボコフくらいだしてくれ。
その代わり、ピューリタニズム、帝国主義、資本主義と文学の関係が丁寧にフォローされているのは良いと思った。児童書に一章割いて、〈児童書〉という概念が成立するには〈子ども〉という概念がまず発見されなければならなかったことを説明していたり、女性作家の自立の問題についても目配りが行き届いている。単に"こういう作家がいてこういう本を書いた"というだけじゃなく、そのときの社会情勢が作家にどう影響し作品にどう反映されたかを常に問うている。シェイクスピアが世にでてくる下地として、中世の街角でおこなわれた大衆演劇(ミステリー劇)を取り上げているのも丁寧。セクシャルマイノリティーや人種的・言語的マイノリティーの文学についてはいまいち踏み込みきれてない弱さがあるけど、原書が2013年刊なのでこの点は少し古くなっていると言えるのかもしれない。 -
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若者向けに読みやすく、有名小説の歴史が書かれている作品。
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#英語 A Little History of Literature by John Sutherland
「何を読むかは人生の大問題だ」
まさしく!#読書 熱が高まりました! -
エピックって言葉がある。日本語だと叙事詩。
いろんな場面でよく聞く言葉。なんとなく意味は伝わるのだけど、なんでそんな偉大な文学ジャンルが今では書かれていないのか。
叙事詩は、過去の偉大な時代を舞台として、壮大さが過去のものになってしまった哀しさを描くらしい。
その意味では、アメリカから同じような作品が世に出ても、国として若すぎるために、叙事詩と認めることは難しいそう。
社会の変化の中で生まれてきた(西洋)文学の流れを、なんとなく知ることができる。どんな環境からどんな文学が生まれてきたのか知ることは、作品をより楽しむのに良いことなんだろうと思う。
いろんな本、ゆっくり読んでみたい。
若くなくてごめんなさいシリーズ、読むのはアメリカ史、経済学史、宗教史に続いて4作目。次は何を読もう。 -
イギリスを中心とした文学史。残念な事に古典的名作を読まずに来てしまったので、大まかにでも作品に触れたいと思い若くないけど読んでみた。名の知れた大作が並び読んでみたい作品も多い。本として読んでいなくても古典的名作は映画化されている物が多く、映画の印象が頭に残っていたりする(原作に忠実かはさておき)。若い人向け(中高生?)との事で読みやすい。
村上春樹の名前は出てくるけれど、作品作風等一切触れられていない。