深山の桜 (『このミス』大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (391ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800237422

作品紹介・あらすじ

日本から約一万二千キロ、アフリカ大陸。国際連合南スーダン派遣団の第五次派遣施設隊内では、盗難事件が相次いでいた。定年間近の自衛官・亀尾准陸尉と杉村陸士長が調査に乗り出すが、さらに不可解な事件が連続して発生する。謎の脅迫状、そして小銃弾の紛失。相次ぐ事件は何を意味するのか。日本から特別派遣されてきた警務科のちょっとオネエなキレ者・植木一等陸尉も調査に加わり、連続事件の謎に挑む!2015年第13回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 南スーダンに派遣された自衛隊内で銃弾の紛失とトップへの脅迫状。定年間近の亀尾准陸尉は杉村と調査を始める。植木礼三郎も東京から派遣される。
    駆けつけ警護も出来ず、攻撃されない限り身を守れない自衛隊の矛盾を小説にしたもの。
    オネエ言葉の礼三郎は他の作品にも出てくる。

  • #読了。2015年「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞受賞作。初読み作家。PKOで南スーダンに派遣された陸上自衛隊。隊内で盗難事件、脅迫状、そして小銃弾の紛失とトラブルが続出。定年間際の自衛官・亀尾を中心に真相を探るが。筆者が元自衛官ということもあり、精密かつ迫力のある描写は秀逸。

  • 2017.5 泣けますね。特にラストシーン。自衛隊、南スーダン、安全保障に対する日本国家の姿勢。
    今も憲法9条の議論は激しいが、自分は他人事の様に平和ボケしてましたが、すごーく考えさせられました。

  • 第13回このミステリーがすごい!大賞優秀賞受賞作。ミリタリオタクでも軍事マニアでもありませんけど、自衛隊の存在意義を問うという意味ではすべての日本人に読んでもらいたい傑作。「女王はかえらない」が大賞で本作が優秀賞とは、審査員の見識を疑うなぁ

  • PKOでアフリカに派遣された自衛隊の基地内での事件。
    ミステリとしては地味で,オネエ自衛官はじめキャラも現実離れしているが,身内に自衛官がいる身としては,いろいろ考えさせられる社会派な内容。

  • 南スーダンに派遣された施設隊の最先任上級曹長の亀尾忠二は停年が近い.杉村陸士長が部下である.隊長宛の告発メール,盗難事件などを調査する.さらに小銃弾の紛失もある.植木礼三郎が派遣されて調べることで次第に真相が明らかになる.反政府勢力の攻撃があり,敵の戦車に狙われるが,亀尾がカンボジアで助けた少女が兵士になっており,彼女の武器で難を逃れる.法律が整備されていない中での自衛隊の活動の問題点を浮き彫りにする内容だが,変に過激な文言を使っていないにもかかわらず,確信をついている記述に感心した.
    東さつきやイサムの存在が良い.ただ結末は悲しいな.

  • 「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞(2015/13回)

  • PKOで南スーダンに派遣されている陸上自衛隊の宿営地内での私物盗難事件から、小銃弾、小銃の紛失、自衛隊の南スーダンからの撤退を求める脅迫文と、相次ぐ事件を追ううちに見えてくる、この国と自衛隊が抱える患部と、自衛官としての矜持。
    外地派遣の隊員の自殺の問題や、駆け付け警護など、タイムリーかつデリケートな話題を、押し付けがましくなく読ませる点が素晴らしい。
    小銃紛失を扱った作品として古処誠二のアンフィニッシュトがあって、そこでも、またこの作品でも、在日朝鮮人と自衛隊という問題が提起されてるけど、自衛隊のなかでも結構問題意識としてあるんだろうか?
    バディもので熱くてよかった。自衛隊の抱える矛盾という重たいテーマを扱いながら、しっかりエンターテイメントになっている。


    「あれを見よ 深山の桜咲きにけり 真心尽くせ 人知らずとも」
    本書のタイトルにも引用され、自衛官の矜持として示される「深山の桜」。序盤の、立ち込める暗雲と雨天の市ヶ谷は、自衛隊を取り巻く、矛盾に満ちた現状を表現している。
    深い山のなかにあっても桜が咲いていられるのは、そこに僅かでも射す光があるからだ。山深いなかにあって健気に咲いている桜の花の上に、冷たく重い黒雲が覆いかぶさっている現状を、そして、そのなかにあってもけっして咲き誇ることをやめない桜があることを、本書は教えてくれている。

  • 2015 このミスの力作

     かなり退屈な前半。オネエが登場する頃には、もう読むのやめようかなと思ったくらい。自衛隊のリアリティーか密室のミステリーか、どっちを楽しむかで評価は異なるんだろうな。

     がんばって読み進めると、謎はあまりきれいに解決されないんだな、これが。ミステリーとしては、おもしろくないわけ。しかし、後半戦はすべてのピースがピタリとはまっていく感覚はなかなかのもの。

     自衛隊のリアリティーで攻める前半、風呂敷が畳み込まれていくファンタジーで攻める後半。この切り替わりになかなかついていけなかった。1日間をあけて読んだよ。

     あまりにピースがはまっていくと、そこにはリアリティーがなくなっていく。おもしろいんだけど、一気に娯楽小説化しちゃうんだよな。このバランス難しいな。もう少し登場人物少なくしても良かったかもね。

  • 南スーダンのPKOを巡るミステリ。

    著者の出身が自分と同じ愛知県春日井市と知って親近感がわきました。
    非常に特殊な環境下のミステリーということもあり、前半の南スーダンのPKOの宿営地の詳細な描写や現時点での人間関係や階級関係の説明にほとんどが費やされたのは仕方ないですね。
    後半、盗難事件を発端に脅迫、隠蔽と怒涛のごとく押し寄せるサスペンス的ミステリーは圧巻です。
    友人の息子が名探偵的にふるまうかと思わせての展開も面白かったですが、ミステリーの真相については結構読めてしまうので、要注意です。
    ただ、今このテーマで語られることが重要だとは思いました。

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著者プロフィール

1969年愛知県生まれ。中学校卒業後、陸上自衛隊少年工科学校(現、高等工科学校)に入校。北海道にて74式戦車の操縦手として勤務。自衛隊を3等陸曹で依願退職。その後、韓国に留学。以降、韓国と関わる仕事に従事。2014年、第13回『このミステリーがすごい!』大賞にて『深山の桜』で優秀賞を受賞。著作に『七四』『赤い白球』『桜と日章』、共著に『伝奇無双「秘宝」 』『幕末暗殺!』がある。

「2023年 『さくらと扇 国を護った二人の姫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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