- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784805110560
感想・レビュー・書評
-
同氏は本書の目的をインテリジェンス機関がどのような役割を果たしているか検討することにしている。また同氏はサイバーセキュリティを非伝統的安全保障の一環として捉えている。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
スノーデン事件が巻き起こしたプライバシーvs国家の安全保障という対立軸を念頭に、米英のインテリジェンス機関や軍隊のサイバーセキュリティへの関与、国連における、サイバーセキュリティに関する多国間協議などについて概説している。
2015年に出版されたものであるのでもちろん情報の一部は古くなっているが、米英のインテリジェンス機関のサイバーセキュリティへの関与の概要については辞書的に参照することが可能かと思う(インテリジェンス機関は種類が多く関係性も複雑であり、一読するだけだと分かりにくい部分もある)。
個人的には、本書のタイトルと同名の第6章が一番興味深く感じた。中露を中心とする上海協力機構(SCO)が、情報セキュリティを情報そのものとインフラストラクチャを含む幅広いものと認識した一方で、表現の自由を支持する米国は情報セキュリティをインフラストラクチャに限定すべきとしたことは、米国や日本における「重要インフラ」の捉え方にも少なからぬ影響を及ぼしているように思われた。
また、ロシアが、あくまで政府や国際機関がサイバースペースに責任を持ち、新たな国際法による統治が必要であると主張する一方で、米国(や日本)が、国連憲章を含む既存の国際法がサイバー空間にも適用され、基本的は民間事業者も主体的に関与して管理されていくべきであると主張したことも、面白い。たしかに、ロシアや新興国の立場から考えると上記のような主張が出てくるのは当然にも思われた。
このような対立軸の妥協案として公表された第3回GGEの報告書内容には、各国の苦労が透けて見えて面白い。
ちなみに、現時点で第6回GGEまで開催されているようであるので、各回の歴史を踏まえて今後読んでみようと思う。 -
安全の確保 v. 通信の自由というジレンマ
-
米英のSIGINT機関を中心に、特にインテリジェンス機関の重要性を強調している。平易な文体ながら扱う分野は広く、読みやすかった。
冷戦後にインテリジェンス機関は不遇だったが(SIGINTに限ればウォーターゲート事件後に既に規制が厳しくなっていた)、9.11を機に状況は一変。オバマ政権でも大規模通信傍受を含むテロ対策はむしろ拡大。しかしスノーデン事件から官民の協力は後退し、また対象がコミュニケーション手段を変更するなどインテリジェンス機関への被害は大きいという。その他、高度なサイバー人材を政府が確保する困難さ、セキュリティ・クリアランスの重要性など。
また、英では一般の人々もインテリジェンス活動の重要性を理解し、GCHQの活動にあからさまな反対はなく、スノーデン事件に対してそれほど大騒ぎをしていないというのが意外だった。国・社会の安全の確保と通信の自由のバランス、というのは本書を含めよく指摘される課題だが、中露が前者を重視することをはじめ、国によっても感覚は異なるようだ。 -
流れがよく分かる。基礎基本。
-
Amazonで買ったつもりがクレジットカード番号の不備に気づかぬまま、ぼけっと待つこと2週間!
2章から6章までで、スノーデンによる情報漏えい事件、米国と英国のインテリジェンス機関のサイバー分野での機能とそれを可能にする制度整備の状況、もはやサイバーと切り離すことが不可能な軍事国連をはじめとする主要な国際交渉の動きなどが丹念に解説されている。特に5章は筆者の過去の著作でも触れられることの少なかった、宇宙空間とサイバーセキュリティの関連性などについて書かれていて目新しい。
日本におけるサイバーセキュリティ対策が米英と比較して不十分であり、その差を埋めるには日本においてサイバーセキュリティ対策にインテリジェンス機関の活動を拡大することが不可欠であることを多面的に描きだす。 7章ではそれらの前提にたち、日本におけるインテリジェンス機関の機能拡大についていくつかの道筋が示されたうえで、課題が提示される。