ルポ池袋 アンダーワールド

  • 大洋図書
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784813022879

作品紹介・あらすじ

魔都東京、異形の街で見た女、死、怪ーー。
SDGsと再開発の裏で起きる怪異と殺人事件。闇に集う娼婦と異常性欲者たち。ここは暗黒街か、黄泉の国かーー。気鋭の作家ふたりが紡ぐ妖しくも猥褻なノンフィクション。

第一章 池袋の怪
心霊スポット/人斬り一族/江戸川乱歩の棲家

第二章 史上最高齢のSM女王様
異常が日常/聖水ショー/未来都市の住人/女の足の匂いを嗅ぐ

第三章 池袋の女
醜い女/首都圏連続婚活殺人事件/愛さないから愛される

第四章 変態ママと殺人事件
特殊性癖を語る場所/露出が好きな主婦だった/桶川ストーカー殺人事件/高齢化する変態たち

第五章 池袋の死
悲劇を巻き込む/四面塔の怪異/上級国民の暴走/無差別殺人/ひとりでは死ねないから

第六章 街娼は駅前に立つ
消えた立ちんぼ/SDGsの犠牲者/お掃除とフェラチオ/義父に襲われる/住民票もない

第七章 池袋の宿
ラブホテル/出会いカフェ殺人事件/売春の罪/若くない女の欲望/死にたいなら殺してあげる

第八章 埼玉県の植民地
東京の入り口/女子大生風俗嬢/東武東上線で乙女ロードへ/最低な生活/子ども部屋おじさん/ちゃんとした恋したい

第九章 池袋の疫
恐山/コロナとストリップ/売る女、買う男

第十章 東口と西口のあいだ
地下道/もう元の自分には戻れない/処女のピンサロ嬢

感想・レビュー・書評

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  • 暗く、深い闇

  • 私にとっては新宿や渋谷よりもずっとよく行く縁のある街、池袋。
    池袋の暗部を探る中村淳彦さんと花房観音さんの共著で、その時点で濃ゆ〜い内容が想像できるのだけど、その期待どおりに読み応えのある内容だった。
    昔は池袋に監獄があったとか処刑場があったとか、江戸時代には辻斬りが多かったとか、そんなこと全然知らなかったからびっくりした。
    サンシャインシティや東池袋中公園がそんな所以のある跡地に存在しているだなんて、知っている人はどれほどいるんだろう?
    あまり怪異とか信じるタイプじゃないんだけれど、巻き込み事故は池袋ばかりで起きていると言われると確かにそのとおりだし、みょうに納得させられた。今度池袋に行ったら四面塔を探してみよう。
    池袋は再開発がすすんで表向き文化的でサブカルにも理解がありますよ、みたいな風をしてるけど、実際は北口付近に厄介事を掃き溜めているのだという見解が恐ろしい。

    そして中村淳彦さんによる後書きが、すごく胸につまる話で、最後そこで池袋につながるのかとハッとさせられた。
    池袋西口公園──人間の業が積層する普通じゃない公園──に佇んだ筆者が、〈池袋は「いい街だな」と思ったことをよく覚えている。〉という一行が、すごく、とにかくすごく良い文章だと思った。

    • naonaonao16gさん
      昔、池袋ウエストゲートパークのドラマが大好きで、東京って怖いなと思っていました。池袋という場所を知ってからも、あのドラマが大好きでよく見てい...
      昔、池袋ウエストゲートパークのドラマが大好きで、東京って怖いなと思っていました。池袋という場所を知ってからも、あのドラマが大好きでよく見ていました。
      窪塚洋介のカリスマ具合に毎回興奮しています笑

      未だによくいく池袋。コロナ禍は公園にびっちりと若者が集まってお酒を持って飲みまくってました。
      色んな人がいるお陰で、不思議と居心地の良さを感じる街です。ここにいてもいいんだな~と。
      包容力のある街、という風に感じます。
      つづきさんとどこかですれ違っていたら、おもしろいですね。

      独り言のようなコメント失礼致しました。
      2022/07/02
    • つづきさん
      naonaonao16gさん

      コメントありがとうございます!
      池袋ウエストゲートパーク!私は小説でしか知らないのですが、ドラマ面白そうです...
      naonaonao16gさん

      コメントありがとうございます!
      池袋ウエストゲートパーク!私は小説でしか知らないのですが、ドラマ面白そうですね〜
      機会があればぜひ観てみたいです。

      そうですね、ファミリー層もふくめ老若男女があれだけ入り混じる繁華街って、意外と池袋ぐらいかもしれないですね。包容力のある街、わかります!
      お気に入りのお店がいくつかあって、昼も夜もよく行くので、本当にどこかですれ違っているかもしれませんね笑
      2022/07/05
  • 池袋といえば東武百貨店や西武百貨店などの「上級」なイメージでしたが、過去の歴史や事件・事故なども深掘りしていくと闇深い土地だな....と思いました。中村淳彦さんと花房観音さんの共著なので、それぞれの視点で描かれるのも興味深かったです。中村さんの奥様の最期を描いた「おわりに」は響きました。

  • そうなんだけど、そうなんだけど。それでもちょっといくと普通の住宅街だし、物騒な町といいつつ夜中におばちゃんが一人でゆっくりと食事できるし。やはり特別な町なんだろうとは思うけど。
    前に読んだのが麦本三歩だったからかなあ。

  • 死にたいと思っても自分では死ねない人を、業の深い街・池袋は引き寄せる。殺人事件や巻き込み事故の多さに改めて驚いた。生物学的な死だけでなく、社会的な死についても考えさせられた。一方で、そんな死の街がアニメート(生命を吹き込む)の街としても存在していることが非常に面白くも感じた。

  • ・池袋は子供の頃から親しんでいた街だった。その猥雑さも含めて好きな街で、子供の頃からよく行っている。今も。
    ・池袋の「アンダーワールド」性は自分にとって折り込み済みだったが、社会人になって東京住みの人達から敬遠されているのを知り、不思議な気持ちだった。東京でも端の方にあるので、距離的な話で来たがらないのだろう、と思っていた。
    ・読む前のイメージでは装丁からの印象もあり、心霊的な本だと思っていた。そういう話も無いではないが、実際はその池袋の「猥雑」な部分の話だった。
    ・ので、落ち込む様な暗い話が多め、なのだが。
    ・作者達がどこか池袋に親しみを込めている様に、自分も全く嫌な感じはしなかった。心性が近いのだと思う。

  • 池袋、まず行く事がないので過去の風景どころか現在もどんな街か知らない。ただ昔から闇が深い土地柄なんだなぁ。東京オリンピックや「SDGs未来都市計画」などで、豊島区が街娼と変態、最底辺の人々の排除に本格的に取り掛かり、ずいぶんと変わったそうだけど、西口駅前広場や西口公園は苦戦したらしい。排除される側の人に取材しているが、中には幸せそうに思える人もいる。でも、このコロナ禍に、排除された多くの人たちは、どこへ行き、どうなってしまったのだろう。

  • ついつい引き込まれる事件ルポ
    久しぶりに木嶋佳苗の存在を意識
    何故そんなに魅力があるのか。。

  • 池袋の闇の部分、猥雑な側面に的を絞ったルポ集。対談ではなく、章ごとに筆者が交替する共著だ。

    私が元々いた編プロは、「池袋サンシャインシティ」内のマンションにあった。池袋は20代前半の一時期に毎日通った馴染み深い街である。

    ゆえに、本書も興味深く読んだ。
    サンシャインシティも、A級戦犯たちが処刑された「巣鴨プリズン」の跡地に建てられたため、心霊スポットの一つとして1章に登場する。

    いちばん衝撃的だったのは、4章に登場する「桶川ストーカー殺人事件」の主犯・小松和人の話である。

    小松は1990年代、池袋で熟女風俗店を経営し、チェーン化して大儲けした「若き風俗王」だった。その店のスタッフとして働いていた女性から見た、小松の別の一面を浮き彫りにした内容なのだ。

    殺人事件の側面から見れば、小松は冷酷なサイコパスでしかない。だが、女性によれば「小松君はすごく爽やかで感じがよくて誠実だった」そうだ。

    小松は《子どもがいる風俗嬢が安心して働ける託児所の開設》を夢として働き、《風俗嬢やスタッフから信頼され、愛されていた経営者だった》(97ページ)という。

    どちらの顔が真実であるという話ではなく、人間はそれだけ多面的な存在だということだろう。

    小松は逮捕される前に北海道の屈斜路湖で水死体となって発見され、警察により自殺と断定された。
    だが、本書に登場する女性は、暴力団関係者に金を奪われて殺されたと推察している。

    全体としては面白く読んだが、著者の一人・中村淳彦には自分の限られた見聞を根拠に全体を決めつける悪癖があって、それはこの本でも相変わらずだ。
    たとえば――。

    《ここまで「池袋=変態」という話が散々出てきた。そうなると、埼玉県民が変態という見方もできる。残念ながらそれはある程度事実で、埼京線が痴漢まみれというのは有名な話だ》(176ページ)

    池袋のラブホ街・風俗街に変態が集まりがちだとしても、池袋全体が「変態の街」だということにはならない。
    池袋に埼玉県民がよく行き、埼京線に痴漢が多いからといって、「埼玉県民が変態」だということには普通ならない(笑)。
    あたりまえの話だ。なのに、中村はあっさりと2つをイコールで結んでしまう。

    もう一つ例を挙げる。

    《いま大学は貧困の巣窟であり、女子学生が学費のためにカラダを売るのは普通のこととなっている》(179ページ)

    もちろん中にはそういう人もいるだろうが、さすがに「普通のこと」ではないと思う。「普通」と感じるセンサーが歪んでいる。

    私が中村淳彦の著書を読むのはこれで7冊目で、ある意味「ファン」といってもよいのだが、いつもこの悪癖が気になる。

    たとえば、『崩壊する介護現場』では、介護業界で働く女性の多くが副業で性風俗をやっているように思える書き方をしていた。

    ■『崩壊する介護現場』レビュー
    https://booklog.jp/users/gethigh316/archives/1/4584124175

    また、『日本の貧困女子』の1~2章は、茨城・栃木・群馬の北関東3県の貧困女子に取材しているが、それを読むと、北関東が女性が不幸になるしかない「人外魔境」に思えてくる。そういう極端な書き方なのである。

    ■『日本の貧困女子』レビュー
    https://booklog.jp/users/gethigh316/archives/1/4815601232

    なお、花房観音が書いた章は、どれもわりとよい。
    ルポというより、池袋を舞台にした私小説に近いテイストになっている。

  • 本屋で一目見て即買いしたけどクッソおもろかった〜
    池袋で過去に起きた事件だったり実際に池袋に住み着いている人に取材してるからすごいリアルだし
    私も池袋ほぼ毎日利用して庭だと思ってたのに全然知らないことだらけだった
    本には色んな人が出てくるけどみんなギリギリで生きてる人ばかりで自分なんて全然恵まれてる方じゃん?と思った
    池袋はそういうどうしようもない人たちを生かさせてくれる場所なのかもね〜
    しんどい時、仕事で疲れた時、たしかに池袋に引き寄せられるのはわかる。
    なんかたまに行きたくなる。
    この本を読んで池袋行くと見方が変わるかもしれない。

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著者プロフィール

1972年生まれ。ノンフィクションライター。AV女優や風俗、介護などの現場をフィールドワークとして取材・執筆を続ける。貧困化する日本の現実を可視化するために、さまざまな過酷な現場の話にひたすら耳を傾け続けている。『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)はニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞ノミネートされた。著書に『新型コロナと貧困女子』(宝島新書)、『日本の貧困女子』(SB新書)、『職業としてのAV女優』『ルポ中年童貞』(幻冬舎新書)など多数がある。また『名前のない女たち』シリーズは劇場映画化もされている。

「2020年 『日本が壊れる前に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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