ひきこもれ <新装版> ひとりの時間をもつということ (SB新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784815604585

作品紹介・あらすじ

孤独の時間が 豊かな人生をつくる!

100分de名著(NHK)で『共同幻想論』が話題!
今また注目される、思想界の巨人が
平易な言葉でかたった人生論が
よみやすい新装版で復刊!


「一人でこもって誰とも顔を合わせずに長い時間を過ごす。
『分断されない、ひとまとまりの時間』をもつことが必要なのだとぼくは思います。
一人でこもって過ごす時間こそが『価値』を生むからです」「『孤独』ということを、どこまで自分の中に呑み込んで、つきつめていけるか。
その上で、どこまで風通しよく生きていけるか。
それを目指していこう」“思想界の巨人”が普段着のことばで語る、もうひとつの社会とのかかわり方。

コロナ禍で、人と人とが分断されるなか、自分の時間をいかに使うのか―ー
いまこそ読み直したい、不朽の名作が、
読みやすいレイアウトと人気絵本作家のイラストとともに、新装版として出版!


「自分の世界に、沈潜せよ!」
本書はそんなメッセージが込められた、熱い本です。

解説:齋藤孝氏(明治大学教授)

感想・レビュー・書評

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  • 冒頭にある齋藤孝さんによる13ページの解説と長い目次のあと、138ページの本文が続きます。改行が多く、文字サイズも大きく、聞き取りのため表現も平易で、あっさり読め通せます。大筋としては「ひきこもり」への肯定と、その理由が綴られています。以降は気になった箇所を、箇条書きで残します。

    ・一人でこもって過ごす時間こそが「価値」を生む
    ・誰でも「意味」(コミュニケーション)か、「価値」(ひきこもり)に傾く
    ・ひきこもりが増えたのは経済的に豊かになったから
    ・「教師は生徒に向き合うべき」という考えは思い上がり
    ・学校などは適当にさぼって何となく卒業するくらいでいい
    ・いじめる子どもと、いじめられる子どもの両方が傷ついた子ども
    ・普通は年老いた方が生にケチ臭くなり、若いほうが生に執着しない
    ・人は自分の死を自分で支配することはできない
    ・老いの次に死が来るなどということはない(フーコー)
    ・安楽死が安楽であるかさえわからない(著者は安楽死・臓器提供反対)
    ・10年続ければ何でもものになる
    ・老いに耐えること自体、相当な労力を要する

  • ●今の私たちは、ヒキコモル事はよくないことだと思いがちです。自分の殻に閉じこもるな、もっと人とコミニケーションを取れ、みんなと仲良くしろ、と迫ってきます。しかしそれは正しいのでしょうか?吉本隆明さんは、むしろ内を向け、と言っています。そして自分の世界に深く潜れ、と言っています。
    ●マズローによれば、自己実現を達成した人には「友人が少ない」と言う共通点があるそうです。大勢の人と交わらなくても、社会的成功を収めることができるのです。
    ●世の中の職業の大部分は、引きこもって仕事をするものや、一度ひきこもって技術や知識を身に付けないと一人前になれない種類のものです。
    ●「分断されない、ひとまとまりの時間」を持つことが必ず必要。これは子育ての時にも気をつけること。1人で過ごすまとまった時間。端から見ると、何も作り出していない、意味のない時間に思えても、本人にとってはそうでは無いのです。
    ●引きこもりは善悪とは関係ない。自分の欠陥かもしれないけれど、悪とは違うぞ、と考えます。
    ●教師は生徒に向き合うべきだと言う考えには、子供を指導してやろうと言う、教師のある意味思い上がった気持ちがあります。そんなことをしなくても、毎日後ろ姿を見ているだけで、子供は良い先生を見抜きます。自分の好きな先生を見つけて、勝手に影響を受けていくのです。
    ●いじめの問題で忘れていけないのは、いじめる子供と、いじめられる子供の両方が問題児なのだと言うことです。問題児とは何か。それは心が傷ついていると言うことです。
    ●大人になっても親の代理死としての自殺をする人がいます。太宰治や三島由紀夫といった人は、その要素が強いと言えるのではないでしょうか。2人とも、傷つけられた子供がそのまま大人になって文学をやったような面があります。
    ●人は歳をとるほどに、生命に対してケチ臭くなるからです。

  • 時間を分断しない。そうかもな。子どもが何やらやってる時はほうっておくとするか。お手伝いなんか頼まずに。

  • 自分はひきこもり体質。
    大学時代は学校をサボって自宅にひきこもり、サークルの会長もしていましたが、活動がなければ、やはり自宅にひきこもっていました。
    たいてい本を読んで、ボーッと考え事をしていましたね。
    20年ほど前でしょうか、社会人になってから、ゴールデンウイークの休日5日間を部屋で一人きりで過ごしてみて、はっきりと自覚しました。
    人に一切会わないのが、全く苦痛じゃないのですね。
    さすがに3、4日目くらいから人恋しくなるのでは、と思いましたが、5日目も「このままずっとひきこもっていたい」と思うほど。
    危うく社会復帰できなくなるところでした。
    でも、ひきこもりって、そんなにいけないこと?
    むしろ、積極的に評価すべきでは。
    これが本書の主題です。
    著者は、「知の巨人」とも言うべきあの吉本隆明(1924~2012)。
    コロナ禍の中、本書は新装版として9月に出版されました。
    ひきこもりは、社会的にマイナスイメージでとらえられます。
    コミュニケーション重視の流れが強まる中、ひきこもりはいよいよ立場がない。
    でも、本書のこんな記述にハッとさせられます。
    「世の中の職業の大部分は、ひきこもって仕事をするものや、一度はひきこもって技術や知識を身につけないと一人前になれない」
    自己実現理論で知られる心理学者、アブラハム・マズローによると、自己実現を達成した人には「友人が少ない」という共通点があるのだとか。
    「引っ込み思案は駄目で、とにかく社交的なほうがいいいんだ」という社会に支配的な価値観に対しても、吉本は明確にノーと言います。
    「その人なりの他人とのつながり方というのがあるのです」という言葉に、救われる人も多いのではないでしょうか。
    実は、吉本自身が引っ込み思案で社交下手。
    ですから、「若者たちよ、ひきこもれ」という呼びかけには、説得力があります。
    「教師が生徒と向き合おうとするから生徒は迷惑する」
    「学校なんかに期待する親は大きな間違いを犯している」
    「子どもの自殺は親の代理死である」
    「ひきこもっていることがマイナスにならない職業がいつか見つかる」
    「戦争で死んだ日本人を歴史から抹消してはいけない」
    など、吉本の透徹した批評眼を経た問題提起に、得心することしきり。
    ちなみに、ぼくは、コミュニケーションだけやたらと上手くて中身のない人より、寡黙だけれども存在感のある人に憧れます。
    じゃあ今の自分はというと、コミュニケーションがあまり上手くない上に中身がなく、少しおしゃべりで存在感が全くありません。
    死のうかな。

  • 「ひきこもり」を肯定的にとらえる本。字が大きくて気軽に読めるのも良い。ただ社会問題や精神病理としての引きこもりの解像度は低めで、孤独の価値を問い直すような内容だった。世の中の流れから少し身を離してみるとこんな感じの考え方になるだろうか。
    印象的だったのは、「ひきこもっている人とは何もしていない人ではなく、熟考し、自己との対話を繰り返すことで価値を増やしている人」という視点。言われてみればなるほどなと感心した。
    確かに、始終「繋がって」いればネット情報をコピペしたような頭の中になるしかないし、そんな人の話す言葉はうすっぺらで聞いていてもあまり面白くない。情報をただ右から左に運んでいるだけでは独自の考えや価値観などが見えないからだ。そういう価値ある物は孤独から生まれると言う。他人の書いたススメスポットやお買い得情報のままに右往左往する人たちは健全にひきこもれなくなった人たちでもあるのだと読みながら思った。
    あと、どんな形であれ自分の考えを表に出すのは大切だという話も響いた。確かに、どんなにひきこもっていても人は社会の一部であり、自分が思うことは他の誰かが思うことでもある。だから文筆家でなくても各人の思いには価値がある。時にアウトサイダー的な人の言葉が社会を動かすのは健全な孤独でもって深い視点で社会を見ているから。その意味では引きこもりには存在価値がある。

    もちろん実際の「引きこもり」当事者には終始ネットに接続されている人も多いし、病的な孤独は心身への悪影響が著しいため、引きこもり支援者への批判などには多少的外れの感じはあったが得る所はある本だった。

  • 主観強めじゃないですかね。でもおもしろかった。ひきこもることって大切だなって思いました。

  • 2021

  • おしゃべりとはいえ吉本隆明とは思えない読みやすさ。内容はとても共感できる。人生には細切れではなく,まとまった時間が必要なんですよ。

  • やさしい、読みやすい、手厳しい。
    サラッと読めて心に残る、お得な時間が持てた。

  • タイトルに惹かれて購入。

    ひきこもりの時間、ひとりで、ひとまとまりの時間を持つことの大切さが紹介されていて、なるほどと思いました。

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著者プロフィール

1924年、東京・月島生まれ。詩人、文芸批評家、思想家。東京工業大学工学部電気化学科卒業後、工場に勤務しながら詩作や評論活動をつづける。日本の戦後思想に大きな影響を与え「戦後思想界の巨人」と呼ばれる。著書多数。2012年3月16日逝去。

「2023年 『吉本隆明全集33 1999-2001』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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