ハイ・フライヤー: 次世代リーダーの育成法

  • プレジデント社
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784833417198

感想・レビュー・書評

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  •  リーダシップは生得的なものではなく、学習によって身に着けるものであるという主張と実践方法。また、リーダーシップは一意のものでなく多岐にわたる型があり、それぞれの型は場合によっては強みにも弱みにもなる。

     筆者はさまざまな企業の観察結果から、生得的な既に存在する才能に依拠する「何もしない」「選抜に依存する」手法よりも、「人材開発を実施する」という経営幹部の育成を推奨する。必要となるのは、
    1.本人の学習能力
    「冒険心」「洞察力」「コミットメント」という初動に加え、重要なのは「フィードバックを積極的に求めること」「フィードバックに対して肯定的に対処すること」というループ。
    2.学習環境の構築
    ・人事制度、報酬制度(敢ての配属、早期選抜、ラインマネージャーへのインセンティブ、経営幹部のコミットメント等)
    ・「情報の改善」「刺激誘因と資源の提供」「変化に対する支援」
    3.経営者による戦略的リーダーシップ開発
    ・どのような経験により、どのようなリーダシップが取得できるのかを把握
    ・現在および将来の戦略を実行するうえで必要なリーダーシップの把握(到達コンピテンシー)
    ・経営者による2へのコミットメント

     実践においては、「なぜ人と組織は変われないのか」「学習する組織」「経験学習」がより参考になる。

     筆者の主張には強く同意するものの、実行に関しては昨今の日本企業では難しいのではと感じた。従業員に対して短期の成績ではなく成長を求める組織は理想的ではある。しかし、このようなジョブローテーションと現在の地位によらない報酬制度が可能であることを前提とした運営は、終身雇用なくしては機能しないのではないだろうか。適所のなくなった人材(いらないというつもりはないが、その会社には居場所がない)や年功という形をとった役割に拠らない報酬制度により日本企業の競争力がそがれているという負の側面からこの制度は継続が難しい。
     そう考えると、一従業員としては自ら経験(キャリア)のデザインをし、それを求めて仕事をしていくことがリーダーシップ開発の唯一の道であるように思われる。

  • ●ハイ・フライヤー~次世代リーダーの育成法~
    経営幹部のポータブル・スキルと特性
    ・戦略発想に基づき全体像を描き、ネットワークを作ってビジョンを実現するリーダーシップを備える
    ・学習機会の追求、誠実な行動、文化の違いへの適応、変化への関与、広範囲の事業知識の追求、人の最も優れた部分を引き出す、新しい視点(洞察力)、リスクを冒す勇気、フィードバックの利用、失敗からの学習、批判への傾聴

    環境
    ・有能な人材に何を学ばせるかを、事業戦略と結びつけて考える
    ・「成長させる経験」だけでなく、目標設定、進捗確認、メンタル支援が必要

    自己責任による継続学習
    ・個人は自分の潜在能力の開発に対して責任を負う必要がある
    ・多くを学習する人は、経験からの学習機会を増やすよう行動している
    ・「成長を促す経験」を早期に開始し、適切なペースでの継続が必要
    ・各職域の特徴(市場重視/現場重視/成長志向)により、伸びるスキル(臨機応変/効率性/戦略思考)が異なる
    ・課題に焦点を当てれば、必要なスキル(経験)が絞られる

    失敗への態度
    ・問題は、つまずいたことを学習機会として捉えず、不適格ととらえること
    ・失敗、昇進を逃すこと、惨めな仕事、キャリア変更等の修羅場が成長を促進する

    成功体験への対応
    ・過剰管理や詳細管理で自分の仕事に手が回らなくなることを避ける

    海外勤務
    ・多様な人の行動・自分の影響力を予測し、不確定な中で行動する能力が身に付く

  • リーダー育成の古典的名著。

    1. ひとは経営幹部に至るまでいくつになっても発達するという基本発想(会社で働く人の高度な『中年以降の発達課題を扱った書籍)
    2. リーダーシップという観点からひとを育てるのは、経験だという視点(生まれつきの資質よりも経験が重要という視点)
    3. しかし、ラインに放置するのではなく経験を系統立てる方策を追及 (才能を経験に展開するメカニズム【有能な人に必要な経験を積ませる実践方法】、経験を「その人のいいところ」に展開する触媒【フィードバック情報の改善、インセンティブとリソースの提供、変化のための支援】)
    4. ラインのマネジャー、人事部、経営者の役割を人材開発という面から照射(人事部だけでなく、現場のマネジャーや経営の仕事として人材育成を捉えなおす)
    5. 経験が大事というのを前提に研修に意味を再探索(経験を意味づける/経験に弾みをつける研修の実践、研修を独立せず配属・登用と連動する)

  • 経験から多くを学ぶこと
    リーダーシップは生まれつきではなく、経験で習得できる

  • ”人開レター発行のために再読。
    ---
    T:
    P:
    O:
    ---
    <読書メモ>”

  • 人材育成、採用などに関わる人におすすめ。
    コンピテンシーという単語を初めて聞いた人にも、この本がおすすめ。

    昨今、コンピテンシー重視の育成が中心になっていますかが、その良い点悪い点を考えさせられます。

    次世代リーダーをどう育てるのか。
    本書は参考になります。

  • リーダーシップという問題に関心はあるのだが、なかなか面白い本にあたることは少ない。が、食わず嫌いもいけないと思い、一応、リーダーシップ論関係でよく言及される本書を出張の往復の飛行機のなかでざっと読んでみた。

    リーダーシップには才能も必要だが、経験がより大切。人は経験を通じて学び、成長するのだから、人事ローテーションは人の成長と組織の目的が適合したものでなければならない。

    ということなのだが、これって、すごく当たり前じゃない?これが新鮮だというのは、欧米的なジョブディスクリプションがきっちりしているところとか、「リーダーシップは天性の才能だ」と素朴に考えている人くらいじゃないのか。

    あるいは、こうした当たり前の話が、新鮮に聞こえるほど、リーダーシップ論の世界は混迷を極めていたということだろうか?

    でも、著者も言うようにこうした当たり前の事ができてるか、というとこれまたすごく難しいわけですね。で、その実現への困難性をどう乗り越えるかというと、これまた当たり前の話ばかりで、要するに、人材開発に特効薬はないということか?

    と言うこと自体もまた何ら新しい見解ではない。

    にもかかわらず、なんか特効薬を求めてしまうと言うのも人の性。

    結局、皆が「特効薬はない」ことを徹底的に共有することからしか、何も始まらないのではないかと思った。

    監訳の金井さんのあとがきが、日本的な文脈にあうような形で、うまく本書のポイントを要約していて、参考になった。

  • リーダーはもともと生まれ持った資質や適性を持っている人しかなれないのか、誰でもなれる可能性があるのか。
    この本は主に後者の立場で、リーダー育成の枠組みを仮説設定してそこに必要な組織要件や属人的要件を解き明かした稀有な本。
    仮にリーダーになれる資質や適性があってもドロップアウトさせてしまう"離脱のダイナミズム"など失敗要因に言及しているところも興味深い。
    タレントマネジメントの枠組みを構築する上で参考にしたい一冊。
    Sさんが大切にしていた理由が分かります。もう一人のSさん、早く返してあげてくださいね。
    (和田)

    ↑欲しがりますね~。犯人は私じゃなさそうです笑
    (実島)

  • リーダーシップ開発の名著ということで
    先輩から推薦された本。

    ネットで探すとびっくりするほど高い中古ばかり…
    今回は偶然普通の中古本の値段で手に入れられたものの、
    それだけの価値のある本だということなのだろう。

    よくリーダーシップ開発には、
    「一皮むける経験」が必要などという話は出てくるが、
    その前提としてその経験を活かせる人にその経験を与えること、
    さらにそれを組織の戦略と結びつけるなども関係するようだ。

    日本でなかなかリーダーシップ開発がうまくいかないのは、
    組織としてのリーダーシップ開発の意識(もしくは意思決定)が不足していたり、
    本当のポテンシャルを見誤り、見逃してしまい、効果が出なかったり、ということだろうか。

    個人レベルとしては、
    経験から学び、環境に合わせて変わる(成長する)ことが必須。
    あと、その延長上で組織をも動かすような成長をしていくこともやっていくことが求められるだろう。
    それを徹底することで自らポテンシャルを発揮し、
    組織のトップ・上司にアピールし、
    意思決定に影響を与えられる…

    それができればその人が既にリーダーシップを発揮できているということだろうが、
    組織としてはいつそのような人が出るか、
    本当に出るのかわからないリーダーの誕生を待っているようでは組織の将来に不安を抱え続けることになるだろう。

    組織がどこまで次世代リーダーに集中できるか。
    リソース投下、環境整備…
    あれもこれもと考えているようではなかなか話は進まない。
    目の前だけでなく、中長期も含めての判断が肝になりそうだと感じた。

  • 人生において変化を学ばない人は取り残されてしまう(ミハイル・ゴルバチョフ)

    リーダーシップスキルは人に本来備わっているものではなく、経験によってある程度開発できるそうです。組織内にある自然の力が、放っておけば、成果を上げるリーダを生み出すのではなく、経営者側から積極的にリーダーを生み出す仕組みを作らなければなりません。そういう意味では、日本企業によく見られる「異なる部門を経験させるローテーション」のメリットを説いていました。

    しかし、「異動のための異動は全く異動がないよりはましであるが、非効率である」とも警告しています。現在のところ異動の経験はありません。あるとしたら来年でしょうか。その時にマネージャーから「あなたはこういう理由で異動することになります。異動先ではこういうスキルを身につけることが期待されています」という説明があるのでしょうか。説明がなければこちらから問い正すまでですが。新陳代謝のためだけの人員配置には意味がないでしょう。

    マネージャーたちは数字を重視しがちです。つまり、実績をどのようにあげたかよりも、実績そのものが重要であるとのスタンスです。

    現在の知財の仕事でも数字が重要視されます。特許でいう数字とは「出願件数」です。「上半期に何件出願する」といったことを目標とし、その達成度によって成果が判断されます。営業の方がいくら売り上げるという目標とは違い、コストしか生み出せません。出願すればするほどコストが発生し、それをなぜ喜ばなければならないのでしょうか。

    しかし、いくら売り上げるかという目標を基準に考えられてしまうと、それを達成することは困難です。特許は一般の商品のように顧客の範囲が広くなく、得てしてライセンス料としてして払う側は好んでそれを払ってはいません。また、明確な財産として規定されているわけではなく、バランスシート上は研究開発費の一部として計上されるのみです。

    企業にとっては特許は損害賠償権のはずですが、権利化を主に担当している部署にとっては存在自体に価値を置く財産権と捉えがちです。現に、社内ではそれで成果として認められてしまうことに権利化部隊のいびつさを感じてしまいます。
     
    知財の世界に入ってから二年経過しました。エンプロイアビリティ(もし、この会社で働いていなかったとしても、あなたの姿や行動を見たら、やっぱり雇いたいと思うくらい自分を磨いているか)が身についたとは思えません。

    「リーダーシップに関する才能の最低必要条件は、経験から学ぶべきことを学ぶ能力であるといえる」とありましたが、何の役にも立たないとして切り捨てた経験も多々あります。「経験はそこに何かあると言うことえお教えるだけであり、成長が保証されるものでない。」と自覚して、経験からできる限りのことを吸収しようとするスタンスに立てたのは最近でしょうか。

    弁理士受験が落ち着き、今は実務的な知財の知識の吸収に集中しています。しかし、「成長を最大にするには、これまでしたことのないことを行い、どうすればいまくできるかということを学んでいかなければならない。」のなら、知財とは違った何かを始める必要があるかもしれません。弁理士受験の勉強をしていた時のような日々の加速度的な成長感が得られなくなりました。

    そろそろ何か新しいことを始める時かもしれません。

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