鹿よ おれの兄弟よ (世界傑作絵本シリーズ)

著者 :
  • 福音館書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (36ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834006322

作品紹介・あらすじ

小舟をこぐ猟師は、川をのぼって鹿猟に出かける。鴨が飛び立ち、魚が跳ねる。猟師は、牝鹿に耳を舐められていた幼い頃の甘い思い出にひたる。父さんも祖父さんもここで鹿を獲った。母さんも祖母さんも焚火を囲んで笑っていた。だがいまは、あちらとこちらの別の世で暮らしている……。 児童文学者の神沢さんが北方民族への深い思いをこめた作品を、シベリア在住の「ロシア人民芸術家」である画家パヴリーシンさんが渾身の力で表現した。

感想・レビュー・書評

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  • これは!なんと贅沢な絵本!
    樺太で幼少期を過ごした神沢利子が、自然そのものと生きる北方民族を書いた文章に、ロシア人芸術家である画家パヴリーシンが絵を付けた生命への讃歌。
    鹿を狩る民族は、鹿の命で自分たちが生きているからこそ鹿への感謝と敬意を忘れない。狩り、食べることは力関係ではなく、生命は支え合っているのだ。


    シベリアの森で生まれたおれたちは代々猟師をしている
    鹿を狩り、鹿の肉で家族を養い、鹿の皮や腱で作った服を着る
    鹿の肉はおれの血となり肉となる。だからおれは鹿なんだ
    ありがとう、鹿よ、おれの兄弟よ
    お前の魂は森に帰った
    おれたちはお前のくれた物で生きていく

  •  シベリアの森へ鹿を狩りに来た猟師。森の恵みであり近しい存在でもある鹿や、過去の思い出、自分の家族のことに思いをはせる猟師を乗せ、小舟は川を進む……。


     図書館本、再読。
     いやもう、圧倒的。
     神沢氏のお歳から考えると、シベリアの森で寝泊まりされたことはおそらく無いだろう。それでいてこの迫力、生き生きとした自然の描写。
     パヴリーシンの緻密で美しい絵も素晴らしい。

     鹿を仕留めたところもしっかり描かれる。
     絵本だからとやんわりとぼかすのではなく、他の生き物を喰らって生きることや、糧となった生命への感謝とも向き合っている。

    『おれは 鹿の肉を くう
     それは おれの血 おれの肉となる
     だから おれは 鹿だ』

     この力強さ、あべ弘士氏には悪いが、あべ氏の「よあけ」とは比較にならない。


     言葉遣いがそれなりに易しいとはいえ、内容的には結構難しいのでは。小学校高学年からでも良さそうな……。

  • 生きるとはこういうことだ!
    あれこれと思い悩む本も悪くはないけれど、
    シンプルに生きることを語る絵本は素晴らしい!

  • 絵本を評するのにふさわしいか分からないけれど「骨太」な印象。
    ネイティブの暮らしと周辺の動物が描かれている。
    時には残酷と捉えられがちな、生きるために他の生命をいただくという描写も正直に表現してて読む側もしっかり受け止めようと思った。
    大判な絵本なので精緻な絵が楽しめる。

  • くまの子ウーフでもお馴染みの神沢さんが、シベリアで生きる猟師を書いた作品。
    鹿を単なる獲物、狩りを単なる食料確保と考えておらず、鹿への畏敬の念が見える気がする。鹿のおかげで自分も、家族も生かされているみたいな。

  • 5年教科書掲載本

    物語は猟師が鹿に語りかける口調で進んでいく。

    生きるために鹿を撃つ猟師。

    「死んだ」ではなく「たましいが森の主のもとにかえった」と表現されている。

    幼い子も、一対一の読み聞かせで、何か感じてほしい。

  • 大画面の森が美しい。
    詳細な草花、木々、動物の描写。
    シベリアの落ち着いた色合いに赤系統が映える。
    異なる擬音語も楽しい。

    大自然で営まれる人の生活。
    自然の豊穣な世界と厳しさ、木訥さをしみじみと感じる。

    じっくり何度も読み返したい作品。

  • 「鹿よ おれの兄弟よ」神沢利子 作/G.D.パヴリーシン 絵
    アニミズム的、絵本。紫。
    クレヨンハウスブッククラブR '12.9

    大判の絵本で、迫力がありました。
    大樹の絡み合った画面がとても好き。

    福岡生まれ、北海道・樺太育ちの作者が書いた文に、極東出身のロシア人作家が絵を付けた、北方少数民族の精神性のお話。
    小難しくなくても、とにかく絵が綺麗!(3)

  • (中2の息子が書きました)
    シベリアで生まれ育った漁師の話です。
    彼は鹿の肉を食べて過ごします。
    着ている服も鹿の腱からできています。

    作中で彼は鹿のことを”兄弟”と呼んでおり、狩った鹿を少しも無駄にしません。

    彼の幼少期、彼の父や祖父も鹿を獲っており、
    まだ子どもだった彼をひざに乗せて、鹿のことを語っていました。

    今は彼が家庭を持ち、やってくる鹿を狩って過ごしているのです。

    ちいさなえほんや”ひだまり”さんセレクト、10才までに読みたい”こころが豊かになる110冊”より。

  • 絵の見ごたえあり。自然の敬いがうかがわれる。

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著者プロフィール

神沢利子 1924年、福岡に生まれる。子ども時代を北海道樺太で過ごす。文化学院文学部卒業。童話作品に『ちびっこカムのぼうけん』(理論社)『くまの子ウーフ』(ポプラ社)『銀のほのおの国』『流れのほとり』(福音館書店・日本児童文芸家協会賞)『神沢利子コレクションI~V』(あかね書房・巌谷小波文芸賞)など、絵本に『たまごのあかちゃん』『おばあさんのすぷーん』『ぽとんぽとんはなんのおと』『おっとせいおんど』『いいことってどんなこと』『えぞまつ』(以上福音館書店)など多数の作品がある。東京在住。

「2022年 『てんのくぎをうちにいった はりっこ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

神沢利子の作品

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