風の島へようこそ (福音館の科学シリーズ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (40ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834027068

感想・レビュー・書評

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  • 福音館の『母の友』という雑誌で、大野更紗さんが連載してるというのをどこかで見て、図書館にあるかなと調べたら、あったので、昨年春の連載スタートにさかのぼってちょっとずつ読んでいる。

    その『母の友』で大野さんが紹介していた絵本を借りてきてみる。日本語版は去年(2012年)、原作は一昨年(2011年)に出ている。

    デンマークにある小さな島・サムス島は、海にかこまれていて、いつも強い風が吹いている。少し前までは、電気や燃料のつかい方も、「とてもふつう」で、暗い冬の夜にはあかりをたくさんつけ、暖房であたたかくして、お湯もつかいほうだいだった、という。その電気は、デンマーク本土の火力発電所から、海底ケーブルで届けられていた。

    あるとき、デンマーク政府が、どこかの島を選んで、そこで使うエネルギーをすべてその島でつくろうという計画をたてた。選ばれたのはサムス島。

    「サムス島を自分たちのつくるエネルギーだけでくらせる島にしよう」という計画がうごきだす。子どもたちは、新しい考えにわくわくしていたが、大人たちがわくわくしはじめるには、もうちょっと時間がかかった。「今のままでいい」「カネがかかる」「まっぴらごめん」「べつの島の人たちにがんばってもらったら?」等々、変わること、変えていくことには抵抗も大きかった。

    この計画のリーダーとなったソーレン・ハーマンセンさんは、あきらめず、いろんなひとによびかけつづけた。

    ▼みんなは少しずつハーマンセンさんの話に耳をかたむけるようになり、自分たちでエネルギーをつくる計画に賛成する人もふえはじめました。でも、じっさいにはだれも、なにかを変えようとはしませんでした。

    「実際には誰も、何かを変えようとはしなかった」、それは、ほんとにほんとにたくさんあることだろう。私自身も、なかなか変えられない、変わらない。

    けれど、動き出すきっかけはどこかにある。サムス島が停電になったとき、激しい嵐の中でも風車のおかげで停電なんてへっちゃらだったという話がかけめぐって、みんなが自然のエネルギーを使いだすきっかけになった。

    サムス島は今、風力発電や太陽光発電にくわえ、麦わらや木ぎれを燃やしてその熱を暖房につかったり、菜種油でトラクターを動かしたりするようになった。暮らしはだいぶ変わり、風がとても強い日には、自分たちが使う以上の電気をつくれるので、デンマーク本土へ電気を送っているほどだという。

    実話をもとに描かれた「風の島のものがたり」。巻末には「エネルギーとわたしたちのくらし」という解説があり、これがコンパクトによく説明してあって、わかりやすい。その後ろの、「自然の力ですべての電気を―人口4000人の島の挑戦―」という井田徹治さんの文章もいい。

    ▼自然エネルギー100%プロジェクトは、欧州連合(EU)などの補助金で始められたものだが、ソーレンは「島民がお金を出し合い、自分たちで風車を建てる」という原則にこだわった。「自分たちのものでなければ、風車なんて邪魔者だよ」と彼は言う。「どこかの会社の人間がやってきて建てた風車だと、それが回るときの音がうるさくて腹が立つ。でも、それが自分のもので、風車が回れば収入になると思ってごらんよ。今度は、風車が回る音がしないと、気が気じゃなくなるもんさ」。

    自分たちがお金を出して、自分たちのものを持つ。それは、自治ということと深く関わっていると思う。なかなか変わらず、動かなかった大人たちの姿とともに、そこに呼びかけ、人の気持ちを耕してきたソーレンさんが「サムス島で産まれ育った、ごくふつうの人」で、「音楽が好きで、バンドではベースギターをひいて」、「環境を守るために、いろいろなことをしたいと考えていた」というところに、心ひかれる。自分たちにも、できるんじゃないかと思えてくる。

    (5/14了)

  • デンマーク風の強いサムス島がエネルギーの島と所以を絵とわかりやすい言葉で描いている。。わたしたちにもできるかも/中西

  • デンマークには2012年に行きました、水車も見ました。化石燃料、温室効果、再生できる燃料等々地球は皆で大切にしなくては・・・

  • デンマークの人口4000人の島、サムス島。風力発電で島の電力をまかなっている話。

  • デンマークのサムス島で実際に行なった事。島に住むソーレン・ハーマンセンさんは、「エネルギーを作り、ガソリン輸入や送電に頼らない島」の素晴らしさにいち早く気づき、反対していた島の人達に粘り強く話していった。人口4000人の島で、小さな電力や、大規模な施設が作られていく。

  • ラベル:桃501
    資料番号:5000501352

  • 風力で実際に島のエネルギーをまかなっている島がある。やればできるんだ。化石燃料や原子力に依存せず、くりかえしつかえる自然のエネルギー。

    地球だって宇宙に浮かぶ島、と考えれば、サムス島だけじゃなくてどの国でもできることなんだって、書かれてた。

    amazonの解説より。
    デンマークのまん中にあるサムス島は、海にうかぶ小さな島。いつも、強い風が吹いています。15年前、島でつかうエネルギーを、すべて島でつくりだそうという話が持ち上がりました。島で生まれ育ったソーレン・ハーマンセンさんは、その実現を夢見て、根気強く人々を説得します。島のだれもが、身のまわりの自然から生まれるエネルギーだけで暮らす―そんな日は果たしてやってくるのでしょうか。実話を元にえがかれた風の島の物語です。

  • 図書館で借りる。
    高学年におススメ。
    井田さんの解説のなかの島民の言葉「自分たちのものでなければ、風車なんて邪魔者だよ」というのが印象に残った。原発が必要という人は、自分の家の隣に原発があり、地下に使用済み核燃料が埋まることを想像して欲しい。

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著者プロフィール

アラン・ドラモンド イギリス・ロンドンの王立芸術大学でイラストを学んだイラストレーター、作家。著書に『風の島へようこそ』『みどりの町をつくろう』(ともにまつむらゆりこ訳/福音館書店)、挿絵に『戦争をくぐりぬけたおさるのジョージ』(ルイーズ・ボーデン文、福本友美子訳/岩波書店)など。イギリスのサフォーク州在住で、お気に入りのパラリンピックスポーツはバスケットボール。

「2021年 『パラリンピックは世界をかえる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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