エイラ 地上の旅人(9) 平原の旅 中

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834251135

感想・レビュー・書評

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  • エイラとジョンダラーとの旅は続く。ジョンダラーの親族シャラムドイ族との出会いと別れ。

    クロマニョン人は言葉を獲得して、部族ごとに言葉は違うが、それでも積極的に交流を欠かさなかった。小さな戦争に近いものもまだ存在しない。むしろ、縁組を積極的に求めていた。

    馬とオオカミを従えたエイラたちの一行は、部族からは怖れられるが、理解が進むと素晴らしい知恵を身につけた人物と言うことで大切にされる。馬を飼い馴らすということを、旧石器時代の人たちは想像することも出来なかった。ましてやオオカミおや。オオカミがイヌになるのは、ずっとあとのことである。部族の人たちは先ず彼らを霊から来た者とみなす。やがてそういうことがあり得るのだと説明されても、幾人かはエイラを女神の使いだと思い込む。それらの彼らの心の動きがとても興味深い。

    言葉を獲得したことで人類は「相手の真意をはかる」ということが習い症になった。そしてそのために大いに悩む。無くしたものもたくさんある。しかし、もしかしたら得たものも多くあったに違いない。言葉を獲得したことで、人類は抽象的にものを考えることが出来るようになった。こういう考察が出来るのも言葉のおかげだ。言葉が戦争の遠因になるとすれば、それを克服する手段の遠因にもなるだろう。
    2014年7月6日読了

  • シャラムドイ族のむらへ。
    ウルフが可愛いてしゃーない。
    のでところどころジョンダラーにイラッとするシーンもありました。
    今まで親切な人間にばかり会っていたけれど、そうじゃない人間との出会い。

  • 本来ならばまっすぐ西へ進めば最短であるのを一旦南へと迂回することを選んだのには訳があった。シャラムドイ族の住む地に立ち寄るためである。
    母なる川ドナウの行き着く先をたどる旅の途中、ジョンダラーは、弟ソノーランと共にその村人に出会った。それからソノーランはそこで生涯の人を見つけ、お産で妻を亡くすと自暴自棄な旅に出たのだった。
    ジョンダラーもその地でつれあいにと望む女を見つけもしたが、ソノーランを放っておくこともできず旅立っていた。そして、その死を知らせる、また、古く関わったものたちと会うただ一度のチャンスとして迂回してきたのだった。

    シャラムドイ族は、シャムドイ族とラムドイ族の二つを合わせた名前で、シャムドイ族は山の民、ラムドイ族は川の民である。。
    世話になったシャムドイ族の、一度は愛した女の息子ダルヴァロを偶然に見つけ、村に案内される。そこではかつてとずいぶん違う雰囲気が合った。族長のつれあいロシャリオが腕を骨折し、動けなくなっているというのである。険しい地に住むものにとって、両腕が使えないということは、村の役に立てないことを意味し、ロシャリオは、生きている甲斐が無いと、腕の痛みより苦しんでいた。

    かつての仲間、ジョンダラーが連れてきた薬師としてエイラは信頼され、治療を施す。そのためには、一度繋がりかけた腕を再び折り直し、正しい一に戻すという手術が必要だった。そのための鎮痛剤もあったが、薬は強く、死の危険が伴う。ロシャリオの固い決意を感じ、治療をするが、その経過を見ている最中に、エイラの出自が明らかになる。
    彼らが「平頭」と呼ぶものたちに育てられたという過去を。
    エイラには、全く自分の過去を蔑むつもりはない。しかし、それは大きな波を起こす。かつて、族長ドランドの炉辺の息子が平頭に殺されたといって、ひどく憎んでいたのだ。エイラとシャムドイ族は和解し、それどころか去り難いまでにはなっていくのだが、これは一つの試練への布石だろう。

    かつて、ジョンダラーは、エイラの出自を知り、ひどく汚らわしげに避けたことがあった。それは畢竟、ジョンダラーの感覚を育てたゼランドニー族の「平頭」観を現しているからである。エイラはそこでジョンダラーと共に暮らしたいという思いを残しながらも、愛する人が行こうとする故郷へとまた旅立っていく。

    途中、ジョンダラーが他に立ち寄った村人にも出会い、そこで、それより北へは行くな、と忠告される。言葉が分からずそう伝えたいと言うこと以外理由も分からなかったが、それはできない、と、先へ進む。
    チェコとスロバキアの国境あたりにさしかかったころ、真っ白な馬が支配する群れを見つける。強い雄馬のいる群れは、エイラの友だちの雌馬ウィニーを連れ去ってしまう。それを追跡し、連れ戻そうとするところで、ある簇の馬を狩るところに鉢合わせし、ジョンダラーは連れ去られてしまうのだった。


    旅は一筋縄ではいきません。馬が3万5千年前に飼われていた痕跡はなく、実際は6千年前と創作の域を出ませんが、それでも最古の乗馬の跡はこの地にあるそうです。
    狼のウルフは、自由ではあるけれど、人間の長らくの友、犬と同じような振る舞い。
    エイラのしつけによく従い、子どもと遊ぶのが大好きで、鼻がよく、ジョンダラーの痕跡を追うにも役立つ。あんなに煩わしげに「置いて行ってしまえば良い」とまで考えるジョンダラーに、読んでいて、なんだ、身勝手な男だな、とイライラしましたが、どうだい? 役に立っただろ! とでも言いたくなります。もちろん届きませんが。「下」ではとうとう、ジョンダラーを連れ去った人々と対決でしょうか。楽しみです。

    某サイトより転載

  • クロマニヨン人;単純な方法で効果が何倍も増すような発想を次々とし、新発明をするようになった、「抽象化」ができるようになったのだ

    ~偶然の発明~
    土器
    槍先を別に、付替え可能にした(柄は別のため壊れにくい槍になった、槍先だけ持てばよい=道具をたくさん持てる)

  • H23.8.18

  • 上巻は退屈だったが、やっと中巻から争いシーンで盛り上がってくる。

  • いつもの旅の描写ばかりなのかな、なんて思って読んでいたのですが、後半ではジョンダラーがさらわれて話が動きました。どうなるのかな...という気持ちでどんどん読み進めることができました。

  • で、でた。コワイ人が。

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