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- Amazon.co.jp ・本 (99ページ)
- / ISBN・EAN: 9784860001391
作品紹介・あらすじ
時を超え、現代の詩として甦った昭和一八年の名詩集。生きることが最も困難であった時代から混迷の現代に贈る、気高い詩精神。
感想・レビュー・書評
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杉山平一詩集「夜學生」を読んだ。
帯に書いてあった文句にひかれて読んでみたところ、
思いのほかよかった。
たとえば、こんな詩がある。
「橋の上」
橋の上にたって
深い深い谷川を見おろす
何かおとしてみたくなる
小石を蹴ると
スーッと
小さくなって行って
小さな波紋をえがいて
ゴボンと音がきこえてくる
繋がった!
そんな気持ちで吻とする
人間は孤独だから
「人間と川とを結びつける小石」という発想が、
詩人ならではの感覚だなあと感心してしまう。
川に石を投げたり、水たまりを踏んだりする理由は、
どこかで繋がっていたいという感情のあらわれかもしれない。
同じく孤独をえがいた詩にはこういうものもあった。
「孤独」
万国の旗はまばゆくひらめいていた
楽隊ははなやかにながれていた
けれどもさびしいこの世の運動会であった
もうみんなテエプを切っているのに
びりの少年よ おまえは
いっぱいの悲しみに戦きながら
たったひとりで走りつづけていた
「びりの少年」や他の詩にでてくる「工場労務者」「はたらく娘たち」に、
焦点をあてるところが杉山平一の人柄であり、
昭和一八年という時代性でもあるように思えた。
この時代性をつづった心象風景は、現代社会にも通底するように感じられた。
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