- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784860114701
作品紹介・あらすじ
小豆島でヤギと暮らす──どっちが飼い主?!でもそれでいいの。だって私もヤギになって、一緒に美味しい草を食べて、頭突きしあって、日向ぼっこして暮らしたいんだもん。ヤギと私の交遊録。イラスト多数収録。
感想・レビュー・書評
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ヤギ・カヨとの生活。
ヤギは、家畜で草を食べてもらえるので役立つ。という浅い認識しかなかった。
だが、カヨ一頭だけではなく交配を重ねて予測もしないほど増えてくると関係性というものがみえてくるようだ。
人間かのようにちゃんと気持ちもあり、個々の性格もある。
実に興味深い。
著者が言うには、ヤギを複数放し飼いにしていることの醍醐味は、彼ら独自の間合いとのこと。
間合いのすべてが会話である。
群れの敵でも未知の客でもなく、同じく時間と空間を共有する仲間として認識される至福に浸っているらしい。
カヨは、ヤギの形をしているけれど、なにか別の特別な生き物なのではないかと思えてならないと言うのがとてもよくわかる。
それほどまでに分かり合えているということだろう。
そして愛しいということも。
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ヤギの「カヨ」との暮らしが綴られたエッセイ。装丁がシンプル&素朴、且つしっかりとした作りでとても好み(栞が2本付いている!)。
カヨとの生活は結構シビア。愛玩動物以外の生き物とのリアルな暮らしはこういうものなのか…
「ドライブ」が可愛らしくて良かった。
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【サイン本】内澤旬子「カヨと私」 - Calo Bookshop and Cafe | Online Shop
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内澤旬子「こんにちは ヤギさん! ヤギが飼いたくなったなら」 - Calo Bookshop and Cafe | Online Shop
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ヤギとの言葉を超えた濃密な交流。その生活は小説以上に波乱万丈!〈週刊朝日〉 | AERA dot. (アエラドット)
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https://dot.asahi.com/wa/2022083100028.html2022/09/02
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初めての作者さん。予備知識なく、表紙の白ヤギの絵と、センスの良い装丁が目に入り手に取った。
一人で移り住んだ小豆島で、白ヤギのカヨと暮らすことにした作者。ヤギのお世話をするのは初めてで、始めの頃はカヨと二人だけで濃密な時間を過ごしていたけれど、カヨが子を産んで家族が増えていく。
ヤギといえば、メェ〜と鳴き、草食で大人しい、そして、のほほんとしてずっとぼーっとそそこに居るというイメージしかなかった。よく考えてみればそんなはずはないんだけれど…。
この本を読んでヤギがとてもユーモラスで活動的で、そしてとってもお世話が大変だと知った。今すぐヤギのあるどこかに行って、ずっと見ていたくなった。
女性が一人で生きて行くこと、動物の発情と出産のこと、ヤギの多頭飼いで、それぞれのヤギの性格に応じて対処していく難しさ、ヤギのためにこうしてあげたいという思いと現実的に難しいという葛藤、島民の方の助け、など様々な話題に触れられていた。
一番印象的だったのは、発情の問題。発情すると本能のまま突き進むヤギ。その姿を見ていると、その衝動や欲望を、そして、子を産むということを叶えたあげたいと飼い主は思う。発情や、出産で動物の行動はかなり変わってきて、読んでいる私でさえかなり狼狽えてしまったのだから、飼い主はもっとだろう。去勢や避妊に対する考え方も改めて問われた。人間の発情に関しては、色々と醜聞を耳にするけれど、それでもまだ統制されているのだなぁなんて妙に感心したり…
読んでいて、作者はとても強い人だと感じていた。自分でできる限界を超えていそうなことも何とかやってのけ切り抜けていく。そして、とてもヤギに愛情深い。ただ、その他のことがあまりイメージできなかったので、ネットで検索して作者の写真など見てみると…身体は細いけれど、想像以上にめちゃくちゃ強そうな人だった!写真からもピリッとしたものが伝わってくる。この方がヤギに愛情を注ぎ、お世話に四苦八苦しているという絵があまり浮かばなかった。そして、この方だからこそ、感情的になり過ぎずにヤギ達の問題に立ち向かい、それを書けたのだと少し勝手に納得した。
ヤギにあまり興味がなかった私でも、興味深く面白く読めた。そして、読後、いい本だなぁとため息が出た。読まずとも本を手に取ってみるだけでも、ヤギへの愛情が伝わってくる宝物のような不思議な一冊だ。 -
自然豊かな小豆島でのヤギたちとの暮らしを綴る、エッセイ。
雑草除去としてやってきた、ヤギのカヨ。
初めてのヤギ飼い、初めて一匹で飼われるヤギ。
日を経るにつれて、少しずつお互いが寄り添ってゆく。
それは、著者とカヨの信頼と愛情の日々。
だがカヨが妊娠して子育てを繰り返す、その様子への葛藤。
仔は増えて成長するし、個々の個性もばらばら。
何と言っても本能の凄まじさ。まさに命が行動している!
発情、交配、出産、誕生、成長、別離、去勢、死など、
ヤギたちに振り回される日々は、命に向き合う日々でもある。
オロオロしながらも命に立ち向かってゆく、著者の姿が逞しい。
成長したカヨとその家族を愛し、見守る著者の眼差しも良かった。
あとがきの「カヨと私とプラテーロ」も著者の心情を
垣間見た感じ。著者とカヨとの関係性が何とも愛おしいなぁ。
挿絵のヤギたちの絵がステキで、特に月を仰ぐカヨの姿が好き。 -
文筆家・イラストレーターの内澤旬子のエッセイ。
小豆島でヤギと暮らす日々のあれこれである。
田舎の島で動物と暮らすというと、牧歌的なイメージを受けるが、本書はやや異なるように思う。
著者は『世界屠畜紀行』という著書もあり、自身、わな猟免許・狩猟免許も持つ。(こちらは私は未読なのだが)実際に豚を飼って食べる肉にして食べるまでのルポ『飼い喰い』も書いている。
この時点で、単なる動物好きというのとはいささか違う。
本書の主役たるヤギのカヨは、食べるために飼っているわけではなく、家の周りの草を食べさせるために飼い始めている。ではドライな関係になるのかと読み進めると、その予想も外れていく。
何だかカヨの方が主導権を握っているように見えてくるのだ。
ペットとか愛玩動物というのともまた違い、1頭と1人の間に徐々にのっぴきならない関係性が生じていくようで、牧歌的というよりはむしろスリリングでさえある。
何せヤギのカヨは要求が多く、草の好き嫌いも多い。また、発情期があり、それが21日周期と相当頻繁である。そのたびに鳴いて騒ぐので、考えあぐねた著者は、島外のヤギ牧場まで行ってそこの雄ヤギとカヨを交配させる。すったもんだの挙句、無事妊娠して出産。それでめでたしめでたしかと思えば、ある程度子育てが終わればまた発情してしまうのが生き物の性。
他所にもらわれていった雄の子ヤギと久しぶりに再会したら、その子はカヨを見て発情。その場は収まったが、やがて発情期を迎えたカヨは、「私をあの男(=自分の子)のところに連れて行きなさい」と著者に“命令”するのである。
畜産や競走馬の世界では親子間の交配も珍しくはないという。結局のところ、カヨは自分と息子の間の子供を産む。そしてさらに、また次の子供も。
ヤギの欲情のまま、際限なく増やし続けるわけにはいかない。発情期のたびに子を産んでいたらヤギだらけになってしまう。世話も追いつかない。
とはいえ、著者が一番に心配するのは、カヨの身が持たないのではないかということ。
息子の去勢をし、カヨには何とか納得してもらうしかないのである。
関係性としてはまるで、女王様(カヨ)と下僕(著者)である。
ヤギなら皆かわいいかというとそうではない。カヨは著者には特別なのだ。カヨの子供たちの面倒も見、かわいがりもするけれど、カヨに比べるとどこか「薄い」。息子の去勢に複雑な思いは抱くものの、他の選択肢はありえない。ともかくカヨが一番なのだ。
そして築かれる、カヨが統べるヤギの国。
その顛末にのけぞりもし、またおかしさも感じるのだが。
とはいえ、他人のことを笑ってもいられない。
我が身を顧みれば、家の犬と同じベッドで寝ているが、人によっては眉を顰めるだろう。数か月前に別の犬を亡くした時は、親が死んだ時より泣いた。
誰か・何かと深く関わる時、そこに生まれる関係性は「個」と「個」のものであって、他人のうかがい知れない部分というのは出てくるものではないだろうか。
何だかそんなことまで考えさせてしまう。
だからこの本は「カヨと私」なのだ。
「ヤギと人間」ではなく。 -
内澤さんが小豆島でヤギを飼っている様子は、ツイッターで見たことがある。てっきり本書はその紙版で、お笑いをまじえたドキュメンタリータッチで書かれたものだと思って読み出したら、あらら?冒頭からなんだか雰囲気が違う。あの内澤さんがこんな風に書くなんて、ちょっと驚き。
自分の乳癌手術やストーカーとの闘いもいたってクールに綴っていた内澤さんだが、本書の筆致は、何と言いますかもう、ベタベタのメロメロ。ヤギのカヨに注ぐあふれんばかりの愛情、そこから来る悩み不安葛藤を、マジもマジ正面から吐露しまくっている。くり返すけど、内澤さんがこんなことを書くとは。その熱さにやられて一気に読んでしまった。
うーん、このせわしない心の動き、覚えがあるぞ。自分も愛着のあるものにおぼれやすい体質だという自覚がある。以前飼っていた猫やジュウシマツやハムスター、かわいくてかわいくて、その分心配で仕方がなくて、死なれるとダメージが強烈で、だからもう何も飼うまいと決めている。子供(人間の)の場合は、なけなしの自制心がどうにか働いて、溺愛とまではいかなかった(と思う、思いたい)が、動物だと「愛したい、可愛がりたい」衝動が全開になりそう。
内澤さんはカヨとは話ができると書いている。そうですか~。見事な開放ぶりで、清々しい気さえする。しかし、愛情の対象が子供や犬猫などではなく「ヤギ」というところが、やはり内澤さんだなあと妙な感心もしたりして。 -
表紙のやさしいヤギのイラストからは、想像できない生々しさだ。
ヤギというか、正しくは、著者が感情移入してしまったヤギだけど、飼うって大変なのがよくわかった。
このヤギ「カヨ」が雌ってとこもポイントかな。たまに、著者が女性の自分と重ねて考えるのが、こちらも考えさせられる。
それにしても、草を集めたり、放し飼い用の柵を作ったり、ほぼ女一人でやってしまう、この人何者?って、巻末の著者紹介を見たら、1667年生まれ、同年代!
これまでの作品タイトルが、『世界屠畜紀行 』『飼い食い』『ストーカーとの七〇〇日戦争』 など、どんな人生だった!?
あとがきで、『プラテーロとわたし』(石井洋子訳、中央法規)でスペイン、モゲールでロバと暮らす詩人ヒメネスの話しが、カヨと暮らすきっかけになったと。こちらも気になる。
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豚を飼っていたと思ったらヤギと一緒に住んでたんですね。さすがは極端女王だわと思いましたが、ヤギファミリーを愛情深く見守る優しい目線は完全に母の目線ですね。
最初の一頭の白ヤギ「カヨ」が出産してどんどん増え、ゴッドマザーカヨになっていく過程がとても面白い。途中には挟まる内澤さんのイラストもさすがです。 -
読み終わって☆4だけど、あとがきまでで本当は☆5!っていう感じ
とにかく生きる力に満ちた本
イラストレーターの著者が描いたヤギの絵はとてもかわいくて、その視線に感じるものがある
ヤギと暮らす生活なんて小動物を短期間飼ったことしかない私にはとても想像できないけれど、とにかくその展開にびっくり
命って生き物って スゴい
そしてそれに真正面から向き合う「私」のバイタリティに圧倒される
ヤギと人って通じることが出来るんだ!と感じたのもそれは「私」だからこそだった
あとがきですべて腑に落ちた