地震以前の私たち、地震以後の私たち――それぞれの記憶よ、語れ

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861824500

作品紹介・あらすじ

ハイチに生を享け、アメリカに暮らす気鋭の女性作家が語る、母国への思い、芸術家の仕事の意義、ディアスポラとして生きる人々、そして、ハイチ大地震のこと-。生命と魂と創造についての根源的な省察。カリブ文学OCMボーカス賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • エドウィージ・ダンティカ『地震以前の私たち、地震以後の私たち それぞれの記憶よ、語れ』作品社、読了。本書はハイチ出身の在米女流作家の現代批評風エッセイ。原題は Creare Dangerously ハイチ公用語はフランス文学だが異邦の作家カミュの著作に由来する。 http://www.sakuhinsha.com/oversea/24500.html 

    ハイチの独立は1804年。合衆国独立に次ぐものでラテンアメリカでは初めてで「世界初の黒人による共和制国家」とは知っていた。しかし中身を何も知らなかった。著者の“危険を承知で書き続ける”ことの意義に圧倒されてしまう。

    独立から二百年、ハイチ人はハイチ人の文学を読むことができないままでった。著者は12歳でアメリカに渡るが、それまだ読んだのはフランス文学ばかり(しかしそれが反権力への烽火ともなる)。ハイチ人の言葉に触れたのはNYCだ。

    「危険を冒して創作する、危険を冒して読む人びとのために。これが作家であることの意味だと私が常々思ってきたことだ。……いつか、どこかで、誰かが命をかけて読んでくれるかもしれないと頭のどこかで信じて書くこと」。

    ハイチは史上最初の黒人共和制国家でありながら、それは干渉と独裁、それにともなう貧困の歴史であった。著者は何の為に書くのか。それは人間を無効化するマモンとそれが救う自身に抗うためにクリエイトするのだ。

    トントンマクートが如き嵐は過ぎ去ったかかも知れない。しかし「とても悲惨な時代」は今も続いている。印象的なのは、彼女の位置の不在だ。「あなたの祖国は?」と聞かれるとアメリカでは「ハイチ」であり、ハイチでは「アメリカ」だ。

    政治とは何なのだろうか。飴と鞭といってしまえば簡単すぎるが、これほど人間を馬鹿にした所作はない。しかし人間はその中で生きざるを得ない。そしてそれに対する気づきを文学が豊穣に持つ。その可能性を啓くおそるべき一冊、瞠目せよ。

    たまたま図書館の新書コーナーで何気なく手に取った一冊だったけど、ぶったまげた。特定のイデオロギーに対するイエスかノーで何かが決することは否定しないけれども、それからもれるもの、そしてそれを代弁することで構造を温存させること。それこそ人間を無効化させてしまう。本源的反抗は文学からだ!

  • エドウィージ・ダンティカって全然読んだコトがない。「骨狩りのとき」「愛するものたちへ、別れのとき」(共に作品社)どちらも面白そうだな、、、

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著者プロフィール

1969年ハイチ生まれ。12歳のときニューヨークへ移住、ブルックリンのハイチ系アメリカ人コミュニティに暮らす。バーナード女子大学卒業、ブラウン大学大学院修了。94年、修士論文として書いた小説『息吹、まなざし、記憶』でデビュー。少女時代の記憶に光を当てながら、歴史に翻弄されるハイチの人びとの暮らしや、苛酷な条件のもとで生き抜く女たちの心理を、リリカルで静謐な文体で描き出し、デビュー当時から大きな注目を集める。95年、短篇集『クリック? クラック!』で全米図書賞最終候補、98年、『骨狩りのとき』で米国図書賞受賞、2007年、『愛するものたちへ、別れのとき』で全米批評家協会賞自伝部門受賞、2020年、『すべて内なるものは』で全米批評家協会賞小説部門と最もすぐれた短篇集に与えられるThe Story Prizeを受賞。邦訳に、『ほどける』、『海の光のクレア』、『地震以前の私たち、地震以後の私たち』、『骨狩りのとき』、『愛するものたちへ、別れのとき』(以上佐川愛子訳、作品社)など。

「2020年 『すべて内なるものは』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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