「鍵のかかった部屋」をいかに解体するか

著者 :
  • バジリコ
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本棚登録 : 141
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862380425

感想・レビュー・書評

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  • 『僕のお腹の中からはたぶん「金閣寺」が出てくる。』
    じゃあ私のお腹の中からはなにが出てくるんだろうと考えた。
    何か繋がりをもって出てきて欲しいと願ってしまう。
    木村ライ麦畑でつかまえて。
    『いーから皆密室本とかJDCとか書いてみろって。』
    文学という学問の体系の全体を読み解くことでわかるような小説に対する挑戦。
    どんな言葉でも小説は書ける。言葉への不信は、逆に言葉への過信でもある。それでも言葉を信じるしかない。
    『私たちは素晴らしい愛の愛の愛の愛の愛の愛の愛の中にいる。』
    作者は読者であり登場人物でもある。
    それは読者は作者であり登場人物でもあるし、
    登場人物は作者でもあり読者でもあるのと同じだ。
    メタフィクションの極致の中で、
    小説の持つ力や切実さを感じた。

  • 舞城王太郎「僕のお腹の中からはたぶん「金閣寺」が出てくる。」★★★
    愛媛川十三「いーから皆密室本とかJDCとか書いてみろって。」
    舞城王太郎「私たちは素晴らしい愛の愛の愛の愛の愛の愛の愛の中にいる。」

  • 舞城のために買いましたが、
    他の部分は結局何が言いたいのかさっぱりわかりませんでした…

  • ちょっとよくわかんなかった。評論?

    舞城王太郎ファンなら楽しめる部分もあり、よかった。


    「文楽」やらせろ。っていう舞城氏の主張は納得。

    「音楽」はなんだか日常の生活に根付いている気はするが、「文学」は乖離してるような気が僕もするな。

    「学」が「楽」に(表記上のいみだけでなく)変わるためにはなにが必要なんだろう?

    もっと小説とかそれらに関わるものすべて、もっとごちゃごちゃになるべきで、整然としたジャンル分けとか意味ないよーってことかな。

  • 本棚を見て「評論がないぞこりゃ」というわけで、『「鍵のかかった部屋」をいかに解体するか』です。…といっても本書は、純粋なミステリの評論ではありません。すみません。だからといって、そんな目で本書を見ないでください。





    この本は「ポップ文学」に関する評論集です。著者の評論(というよりエッセイ)「すべてのポップ文学を対象とする「羊男賞」の創設を提案する」の中の「ポップカルチャー」の定義をそのまま当て嵌めて「ポップ文学」を定義すると、
    ①専門的知識が無くとも表現者となることが可能であり、
    ②表現者と受けての間に同質性があるような、
    ③一般大衆を基盤とした文学、
    といったところでしょうか。他の言葉で表現するなら、「ポップ文学」とは、メインストリーム(主流文学、純文学など)とそうでないもの(SFやミステリーといったジャンル小説)という類型化された表現形式を乗り越えた、スリップストリームとしての文学(伴流文学、境界解体文学)のことです。



    「ポップ文学」の解説はこれに留め、ミステリ研究会として本書を紹介すれば、表題でもある評論「「鍵のかかった部屋」をいかに解体するか For How Much Longer Do We Tolerate Murder Cases?」と、本書に収録されている舞城王太郎の小説「僕のお腹の中からはたぶん「金閣寺」が出てくる。」に、自然と焦点が当てられます。



    この2篇は、2003年に文芸雑誌「群像」で1年間連載されていた企画「現代小説・演習」の第三回にあたるものです。「現代小説・演習」とは「評論家が、小説家に対して、新しい小説の書き方を示す手がかりとなる『評論』を書き、その『評論』が指し示す方法論に従って、小説家が実際に小説を書く」というコンセプトの企画です。





    【「鍵のかかった部屋」をいかに解体するか For How Much Longer Do We Tolerate Murder Cases?】

     この評論の論旨を大雑把に言えば、それは「『青春小説』の殺害」です。著者は近代、「成熟」が当然のものとして捉えられていた時代のもの(教養小説など)=「青春」が亡霊となって、今も私たちを混乱させている。だから「青春」を成仏させなければならない、と最初述べています。そして、新本格やアンチミステリが帯びている「アンチ青春小説」性から、「探偵小説」にその仕事を「依頼」します。

     しかし、ここから本論は、(支離滅裂と紙一重な)アクロバティックな論理の飛躍を見せます。
     まず、「青春」との区別をされる対象であった「青春小説」(第二次世界大戦以後「大人になりたくない」という若さの全肯定によって生まれた文学)がある限り「青春」は復活し続けるので、「青春小説」もSATSUGAIせよ!となり、論旨である「『青春小説』の殺害」に帰結します。
     また、「青春」の成仏に際し「探偵小説」にその仕事を依頼しますが(そして、この「探偵小説」に「青春小説」の殺害も依頼します)、本論では同時に「探偵小説」に登場するガジェットとしての「密室」を批判し、それらを「子供部屋」と称します。
     これらはおそらく、作家への方法論の提示だったのでしょうが、それらのスムーズな連繋が成されておらず、多少歪に見えないこともありません。しかし、主題(と論理の飛躍)も含め、中々面白い評論ではあります。

     最後、この評論は作家に対して、以下のような「依頼状」を送って締め括ります。

    作家への依頼状
    ・「青春小説」を完全に殺害してください。
    ・そのとき、探偵小説の手法をもちいてください。



    【僕のお腹の中からはたぶん「金閣寺」が出てくる。(舞城王太郎)】

     前の仲俣暁生の評論に対応して書かれたのが、この舞城王太郎の小説です。主人公が子どもの頃に自宅の玄関で切腹した叔父のお腹の中から出てきた石原慎太郎『青春とはなんだ』の謎と、「切腹」という行為の目的の解釈を中心に、主人公の成長が描かれています。舞城王太郎好きとしては『ディスコ探偵水曜日』にも出てくる名探偵・八極幸有が登場しているので、ちょっと嬉しいです。評論家の評論に作家がどのように応えているかは、読んで確かめてください。

     この小説にキャッチコピーをつけるなら、「あなたのお腹の中からは『何』が出てきますか?」といった感じでしょうか? 何か、自己啓発ものみたいですね。





    評論集としては他にも、古川日出男、阿部和重、吉田修一、綿矢りさ、角田光代、西尾維新、吉本隆明、小林秀雄、内田百閒、寺山修司、宮沢賢治らに関して論じられています。

    また、「現代小説・演習」最終回にあたる、愛媛川十三の評論(「いーから皆密室本とかJDCとか書いてみろって。」)+舞城王太郎の小説(「私たちは素晴らしい愛の愛の愛の愛の愛の愛の愛の中にいる。」)も、ボーナストラックとして収録されています。それだけでも、一読の価値はあるでしょう。

    (ウィークリィ洋子)

  • 冒頭の現代の小説は豊穣であるという出だしから、近代文学=青春文学をどうやって解体して行くかにまで論をぐいぐい進めて行く流れは大胆に見えながら文学の時流(あるいはその上にある文学史)をしっかり把握した上で書かれていていちいち首肯した。
    そして、その手法を用いて舞城王太郎が小説を書き、それを再び仲俣氏が評論すると言う構成は非常に面白く、それが一冊の本に収録されていることが実に興味深い。
    正直、吉本隆明については基礎知識が不足していたためにその時代性とかはよく分からなかったけど、現代の小説評論は(特に古川日出男については)かなり押さえやすかった。
    こうした本がもっと読みたい。

  • 舞城王太郎と愛媛川十三の作品のみよんだ。
    愛媛川十三と名乗っていても、舞城王太郎節さくれつで面白かった。
    「音楽」と比べて「文楽」の門の狭きことが分かった。

  • 群像での企画が別の出版社から単行本化!舞城王太郎と愛媛川十三(まあ同一人物なのはおわかりでしょうが)の特別寄稿あり。

  •  舞城目当てで。仲俣暁生のは最初の方のだけ読んだ。
    いーから皆密室本とかJDCとか書いてみろって。が非常に面白かった。舞城好きならオススメ

  • 舞城王太郎の単行本未収録作品が掲載されている本作は、評論部分も含めて面白く、もし書店に並んでいるのであれば購入しておいて損はないと思われます。

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著者プロフィール

評論家・編集者。1964年、東京生まれ。「シティロード」「ワイアード日本版」「季刊・本とコンピュータ」などの編集部を経て、現在はフリーランス。著書に『ポスト・ムラカミの日本文学』(朝日出版社)、『極西文学論―Westway to the world』(晶文社)、『〈ことば〉の仕事』(原書房)、『再起動(リブート)せよと雑誌はいう』(京阪神エルマガジン社)、『失われた娯楽を求めて―極西マンガ論』(駒草出版)など、共編著に『「鍵のかかった部屋」をいかに解体するか』(バジリコ)、『グラビア美少女の時代』(集英社新書)、『ブックビジネス2.0―ウェブ時代の新しい本の生態系』(実業之日本社)、『編集進化論―editするのは誰か?』(フィルムアート社)など。

「2020年 『失われた「文学」を求めて【文芸時評編】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

仲俣暁生の作品

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