- Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
- / ISBN・EAN: 9784877287214
感想・レビュー・書評
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重苦しい運命を背負ってストーリーは動きだし、閉塞感から逃れるようにエジプトへと旅立つ主人公たち。
観光中にはさしたる展開はなく、登場人物たちが旅から戻って、さあここから話が動くかと思ったところで物語はフェイドアウト的に終了します。
(えっ?)と拍子抜けしました。
最終ページの文庫版あとがきに、この本は自他ともに認める失敗作だと書かれており、(おやおや)と思いました。
普段、自分が旅行先で感じる言葉にできない思いをもてあましている私は、著者があふれる思いを丁寧に言葉へと還元していくその鮮やかな手腕に感嘆しながら読んだので、がっかり感は薄く、小説の出来不出来は気になりませんでした。
旅行先での心理描写が事細かに記されているため、旅エッセイのようにも思えます。
旅とは、ある意味死と再生と同義なのだと改めて思います。
旅に出ることで、一旦それまでの自分を殺し、旅に出たことで、新たな自分が生まれ来る不思議。
その、人間の力を越えた大いなる自然と歴史の深さが、伝わってきます。
途方もなく偉大で巨大な聖なるものに触れた時の感動と恐れと戸惑いが、ヴィヴィッドに表現されているのは、さすが。
実際には、現実問題の何の解決にも至っていないものの、とにかく混乱や絶望とうまくつきあって、生きていこうとする気持ちの方向性がついた登場人物たちの心の流れによりそえます。
ただやはり、物語としては、帰国してからのストーリーにつなげてほしかったという物足りなさが残ります。
これは「世界の旅」シリーズに入っているため、まず旅ありきというコンセプトなのかもしれませんが。
アスワン・ハイ・ダムが崩れたら、エジプトは17時間で沈むということを、文中から知りました。
一生に一度のメッカ詣でを目指すイスラム教徒は、昔はラクダに乗っていったため、参拝を果たした人の家壁にはラクダの絵が描かれたが、今では船や飛行機が描かれているということも。
ところで、タイトルの「Sly」とはどんな意味あいだったのか、はっきりわからずじまいでした。
文中で読み落としたのかもしれませんが、単純に「ずるい」という意味にとっていいものか、かなり頭をひねりました。
挿絵がふんだんに掲載されていますが、訪問地を具体的に書き込んでいるわけではない、イメージ絵であるため、あまり本文と合っていないような気がします。
表紙は、エジプトの神殿が描かれていますが、女性の格好はアラビア風。私の偏ったイメージかもしれませんが。
ばななの作品は、総じて「子宮を抱いた作品」と言えるのかもしれないという印象を、この本から受けました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
喬(たかし)と、喬の元カノと、喬の元カレは皆友達同士。
入り口から結構すごいけど、これが案外ナチュロー。
3人のエジプト旅行、約10日間のはなし。
強い日差しの中に浮かび上がる、登場人物の鮮やかなシルエットと生々しさ。(妄想)
短いけど、なかなかスキでした☆
エジプトだしね。 -
ありふれた日常の中に、流れ去ってしまう時の中に、思い出に残る美しい瞬間があることを気づかせてくれます。エジプトの荘厳な遺跡や美しい自然が、人として生まれ生きて死んでいくことの意味を語りかけてくれます。原マスミ氏のイラストも味わい深く物語を引き立てていますし、後半の写真とばななさんの解説もこれまた楽しいです!エジプト、死ぬまでには一度行って見たいですね~。
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10代のときから何となく何回も読み返してる本。
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エジプトの砂漠は永遠のような静寂を持つ。
無意識に飲まれそうな砂の都。
そして旅は道連れ世は情け。恋愛も同じ。
いつか行きたいスフィンクス見たい。 -
旅に出るってほんとこんな感じ。ここには旅が凝縮されているよー。
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すいません、よく覚えてません。
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お話はう〜ん、って感じだったけど、
やっぱり死ぬ前に一度エジプトに行ってみたいと思った -
「人が美しいものにひきつけられるのは、それが死から最も遠く、死を忘れさせてくれるから。」(本文より)
哲学科に進学することにしてよかったです。考えたいことは山ほどある。
エジプト旅行の話なので、単純にエジプトが好きな人も楽しめると思います。