紛争と人間の安全保障―新しい平和構築のアプローチを求めて

  • 国際書院
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877911461

作品紹介・あらすじ

「人間の安全保障」に纏わる、論点が持つ意味と可能性の探求、紛争下での争点の提示、実践上での限界を超える可能性、外交政策における課題などを示しながら、「人間の安全保障」が「現実」の要請であることを明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • そもそも「国家の安全保障」とは、国民の安全保障のことにほかならず、ある一定の領域内の「人間の安全保障」を意味している。したがって、「人間の安全保障」は「国家の安全保障」を通じて実現を図ることができると考えることも可能だろうし、逆に「国家の安全保障」は、より包括的な「人間の安全保障」の中で検討されるべきだと主張することも可能だろう 。前者の立場は、国家の構成要因である国民(人々)の安全は、国家という悪組(箱)を頑強にすることによって守ることが可能であると考え、国家という「箱」の安全を脅かす脅威は「箱」の外にあるという前提に基づいて安全保障政策を考える。他方、後者のような議論が提示されるようになり、「人間の安全保障」という新しい概念が強調されるようになった背景には、国家という枠組みにとらわれていては、本当の意味での人々の安全を保障する政策を追求することはできないという認識がある。
    「国家の安全保障」であれば、安全が保障される客体は国民であり、保障する主体はその国家の政府であるということになるだろう。「人間の安全保障」の場合、保障される客体は地球上の全ての人間となり、保障する主体としては各国政府だけでなく、国際機関や非政府組織(NGO)など様々なアクターが想定される。

  • 紛争の最中に置ける人々が被る被害をどのように軽減するのかという介入の問題とそもそもどのようにして平和構築をするのかという問題のディレンマなど、あるいは論争多き人間の安全保障の果たす役割などを現場レベルで見ている非常に実践的な本です。平和構築の現場で働きたい人は必読でしょう。内容的には一部、理論分析もありますが全体として政策論的なものとなっています。

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著者プロフィール

上杉 勇司(うえすぎ・ゆうじ):1970年生まれ。国際基督教大学教養学部を卒業後、米国ジョージメイソン大学・紛争分析解決研究所で紛争解決学の修士号を取得、英国ケント大学で国際紛争分析学の博士号を取得。NPO法人沖縄平和協力センターを設立し、平和構築の現場で活動。カンボジア、東ティモール、インドネシア、アフガニスタン、スリランカ、シリア、ボスニアなど世界各地の紛争地で、現地の平和に貢献する活動や研究を行ってきた。現在、早稲田大学国際学術院教授。著書『どうすれば争いを止められるのか』(WAVE出版、2023年)、『変わりゆく国連PKOと紛争解決』(明石書店、2004年)、『国際平和協力入門』(共編著、ミネルヴァ書房、2018年)、『ハイブリッドな国家建設』(共編著、ナカニシヤ出版、2019年)など。

「2023年 『紛争地の歩き方 現場で考える和解への道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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