フライデー・ブラック

  • 駒草出版
4.15
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本棚登録 : 535
感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909646279

作品紹介・あらすじ

「シャープでダークでユーモラス。唸るほどポリティカル。恐れ知らずのアナキーな展開に笑いながらゾッとした」
―――ブレイディみかこ(英国在住保育士、ライター)

「毎日の生活に侵食する、暴力と格差と不条理。ケンドリック・ラマーの『To Pimp a Butterfly』を最初に聴いた時のように、ドナルド・グローヴァーの『Atlanta』を最初に見た時のように、すべてのエピソード(短編)を夢中になって読み進めた」
―――宇野維正(映画・音楽ジャーナリスト)


 『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラー・リストに初登場13位でランクインし、同紙のレビューでも激賞。『Vogue』『Elle』といったファッション誌や「ハフィントン・ポスト」「バズフィード」などのネットメディアでも取り上げられ、人気テレビショー「Late Night with Seth Meyers」に著者本人が出演するなど、新人としては異例の注目を集めた新進作家、ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー。そのデビュー短編集『フライデー・ブラック』の初の邦訳版(訳者はブラックカルチャーに縁の深い米国在住の翻訳者/ライターの押野素子氏)。

 現代に生きるアフリカ系アメリカ人につきまとう暴力と理不尽さを描いて鮮烈な印象を残す「フィンケルスティーン5」、大量消費社会のグロテスクな姿をホラー的感覚でブラックユーモアたっぷりに描いた表題作 「フライデー・ブラック」などの短編、全12編を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 秋の夜長、ダイバーシティの非対称な現実を知るために『フライデー・ブラック』を読む。【VOGUE BOOK CLUB|池田純一】 | Vogue Japan
    https://www.vogue.co.jp/change/article/vogue-book-club-friday-black

    犠牲となった黒人少年少女の名を叫びながら白人に制裁を……アメリカの近未来を描いた短編集 | 文春オンライン
    https://bunshun.jp/articles/-/36603

    アメリカの人種問題を描いたベストセラー『フライデー・ブラック』著者インタビュー 〜ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー - wezzy|ウェジー
    https://wezz-y.com/archives/72624

    FridayBlack | komakusa-pub
    https://fb-koma.wixsite.com/komamura-pub/fridayblack

    フライデー・ブラック 駒草出版
    https://komakusa-pub.shop-pro.jp/?pid=147605558

  • 「ブラック・ユーモア」
    この言葉がうってつけの快作であった。


    後世に残るほどの優れた作品は、虚構と現実を上手く融け合わせ、尾を引くようなざわめきを読者に残してくれる作品なのだと私は考えている。
    この短編小説集は、見事にそれをやってのけたのではないだろうか。

    本書はSF小説であるが、黒人差別、相互監視社会、優性学、貧困格差、核戦争など、現実の世界が抱えている問題と各短編のテーマが密接に結びついている。

    社会風刺作品は、メッセージ性を追求しすぎるあまり、ともすれば娯楽作品としての魅力が半減することがある。ノンフィクション性に比重を置きすぎてフィクション特有の「飛んだ面白さ」が損なわれるパターンだ。

    しかし、この短編集にはそれがない。黒人へのステレオタイプを娯楽化する「ジマー・ランド」、貧困層の間での商品の奪い合いが死者を生み出す「フライデー・ブラック」など、現実を反映するような舞台の中にしっかり面白いSFが構成されており、そこかしこにピリッと辛いアイロニーが眠っている。フィクションが現実の社会の架け橋となり、読んだ人の心に引っかかるようなトゲを作っている。
    まさに「ブラック・ユーモア」の極致であると言えるだろう。

    余談だが、私が好きなのは冒頭の「フィンケルスティーン5」である。ブラックネス(黒人らしさ)を抑えて暮らすことに嫌気がさした主人公が、白人に殺された黒人の子どもたちの名前を叫びながら、白人たちに復讐していく。あまりにリアリティがありすぎて、「本当にあった話なのか?」と勘違いしてしまった。

  • リズムと暴力。渇いた文体。
    SFを読み慣れていないので、突然非現実的展開に飛ぶのに慣れるまで時間がかかったが、ひとたび話に入り込むと、終始漂う絶望感と暴力と痛みの中に引きずり込まれた。やっと乗ってきたところで唐突に迎える結末は予想できないもので、救いもなく、これがこの作者周囲の抱いている世界観に近いものだとすれば悲しすぎる気がした。

    感情を煽る文体ではないので読み口は重くないし、ユーモアもある。
    ただそもそもの設定からして満たされたものではないし、そこここに散らばる哀しみに痛みを感じながら読むのは、心に暗い影のようなものが広がっていくような感じ、或いは少しずつ心の一部が削られていく感じだった。

    どの話も独特で、表題作から連なる数話はちょっとした状況や視点の変化で異なる読後感になるのが面白かったし、架空のテーマパークの話はVRゲームが普通になったらありそうだなと思いながら読んだ。

    個人的に一番考えさせられたのは最終話『閃光を越えて』で、設定も、繰り返される暴力も、ラストも、本当に何もかもが衝撃的で、未だにどう受け止めて気持ちを落ち着かせたら良いのかわからない。
    最後「寂しさ」という単語が唐突に出てくるが、そういえばどの話も孤独感が裏テーマのように漂うなと思ったりはする。そう考えるとこれはSFとか黒人社会とかといった狭い範囲の話ではなく、多くの現代人が抱えている問題の話なのかも知れないとも思う。

    日々至る所で耳にする「多様性」という言葉。
    その意味するところを自分は本当にわかっているのか、わかったとして受け止める覚悟はあるのか。

  • こ、これは。。。すごい作家が出てきたな。暴力的で辛い作品もあるけれど、現実に起きた事件からの構築だ、これも現実の側面ではあるな。ブラックフライデーをおちょくった表題作が滅茶苦茶面白い。『旧時代』『ラーク・ストリート』の発想に唸り、『ライト・スピッター』は残酷ながらも後味が不思議と悪くない。
    若干、ここまで訳注やらなくても読者はわかってんじゃないの、というところもあるが、そこはまあ念のためだったのかなと。

  • 刺激的かつ驚異に満ちたディストピア短篇集。人種差別がテーマの話が続いたら苦しくて読み続けられないかもしれない、と緊張していたら別の方向からも殴ってきて、男性版ミランダ・ジュライのおもむきがある(ジュライはおしゃれガールズ小説のカテゴリに入れられている気がするけれども、わたしにとっては痛みと驚きの小説を作る人なのである)。

    著者が経験してきた社会の過酷な状況が作品には反映されているのだけれど、その真実味を届ける手段として使われている想像力が今まで知らなかった種類のもので、とても引きこまれた。まさに新しい才能。

  • 人種差別に関わる話ばかりではなく、マジックリアリズムばりの斬新な切り口や設定の話が満載。だけど読後が殺伐として、「読んで良かった」って気分にはあんまりならない。今時の小説って、こういうのか癒し系かの両極端…(-_-;)

  • 楽しい、でも苦しい。のループを何度も繰り返し、もはや早く閃光きてくれないかな、と願うような読書体験。これを喜ぶべきなのか悲しむべきなのか…
    素晴らしい発想力と筆力、そして毒っ気溢れる皮肉に興奮しながら血の気が引く思いをさせられた。これだけの作品が生まれる理由がいつまでもなくならない人種差別であることが一番の皮肉かもしれない。

  • BLMのことをきちんと理解するために読んだ方が良いという、現地を知る方からの推薦で読んだ一冊。

    元ネタとして実際の事件があり、差別が起こる考え方の根底や闇を学ぶ一助になった。
    本当に知らない事ばかり。

  • 救いはなさそうだな…と思わせる冒頭。
    救いはないな…と確信させる展開。
    やっぱり救いはなかったな…と納得させるラスト。
    落ち込みたい時に最適な、社会派地獄短編集です。
    是非。

  • 短編集12編
    どの短編も読み始めると突然訳の分からない世界に放り込まれ、分からないままに物語は進む。人種や格差や思いつく限りの不条理で閉ざされた社会が、近未来的な切り口でクールに描かれている。その救いのなさ、ありのままの現実感が非常に興味深かった。

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