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感想・レビュー・書評
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トルストイが描いた壮大な叙事詩。
エピローグが二編に分かれていて、
一編が長く人生を旅した登場人物たちのその後、
もう一編が社会背景の考察に費やされています。
小説でもあり、教養書でもある、そんな一冊。
全編通して
過去のフランスとロシアの戦争の行方に
それほどの興味は持てなかったので
戦闘部分はほぼ読み飛ばしてしまった。
約3ヶ月かけて
時代を生きる人物たちの感情の移ろいに
注力して読み進める。
個人的な感想を言えば
精神的、物質的嗜好に重きが置かれて
主人公たちにおいて肉体的な欲求が描かれていない気がする。
食欲も、睡眠欲も、性欲も、自然な欲望を避けては
人の生き様は語れないと思うのですが。
誰も彼もが我々より遙かに崇高すぎる。
これはトルストイが理想主義者だからなのか、
物に溢れたいまの世があまりに惰弱なのか。
恋に恋するナターシャの結婚後の豹変ぷりもびっくり。
(エレンみたいになるかと思っていたのに)
そんなものなのかなぁ。
現在の時代では得がたいこの幸福は、
形を変えてどこかに存在しているのだろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
フランス軍の自発的崩壊と撤退、ロシア軍の無意味な追撃とモスクワの復興。主人公達は戦争から様々な事を学び人生観を変える。
トルストイの祖国戦争に対する認識は当時のロシアに漂う異様な雰囲気を反映しており、ナポレオンの行動が当時の雰囲気に一致していなかったことやクトゥーゾフのみが異様さを理解していたことなど、通常の歴史家のものと大きく異なっている。
アンドレイ公爵やピエール・ベズーホフが戦争で死に瀕することによって人生観を大きく変えた一方でベーチャ・ロストフの死はあまりに呆気なく、戦争のもつリアルな残酷さが現れていた。 -
吉な彗星の年。軍務に戻ったアンドレイは父と妹に敵接近を急報するが、退避目前に老公爵は死去、マリアは領地農民の反抗に遭う。戦争の本質を探ろうとピエールはボロジノへ発つ。いまや貴族も農民もなく、全ロシアの危機が始まろうとしていた。