yom yom (ヨムヨム) 2009年 10月号 [雑誌]

  • 新潮社
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感想・レビュー・書評

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  • 落照の獄(Yomyom 12)  小野不由美


    「丕緒の鳥」以来の短編。 舞台は柳の芝草。
    「帰山」(『華胥の夢』収録)で、利広と延王によって語られた国が傾いているという話を裏付けるような、そんな話。
    なんとなく、次作は柳が舞台になる気がしていたので予感的中。
    内容も救いようがなくて、だからこその結末で面白かった。(評判悪いけど)


    主人公は瑛庚。柳国の司刑。(現代でいえば最高裁の裁判長みたいなもの→P.26「司刑、典刑、司刺が合議をもって論断し、最終的に司刑が決を下す」)
    死罪を適用すること=今後の適用に歯止めが効かなくなる。傾国を助長しかねない(しかし、自分たち司法が裁くのだからそこに危険性はないはずだが)
    死罪を避けること=民意に背く(教化することの無力さも感じている)


    十二国記はファンタジーのおはなし。けれど、現実と置き換えられる。
    だから、瑛庚の躊躇が読者のそれになる。
    「人を殺してはならない」のに、殺人者を殺すことのできる刑法がある矛盾。
    沢山の人を理由もなく殺してきた犯罪者に極刑を、と望むのと同じように殺人者を殺せる法制度があることに違和感を覚える。
    どちらも論理ではなく、人としての本能的な反射。
    現代でも、死でその罪を報いるのが凶悪殺人者のセオリーのようになっているけれど、それはある意味、理解しがたいものを排除することで
    世界と折り合いを付けているんじゃないだろうか。根本の解決にはならないのだけれど。

    P.86 「人を殺した者に死をもって報いる、これは多分、理屈ではない。それと同時に、人を殺してはいけない、殺したくないという思いも、やはり理屈ではないのだろう。」
    P.99 「だが、これはおそらく始まりに過ぎない。国は傾いている。傾いた国に湧いて出る妖魔のように、世界の亀裂はさまざまに立ち現れてくるだろう。その綻びを自身の眼から覆い隠すため、人々はこれから様々なものを自ら断ち切っていく。そうやって崩れていく。......国も人も。」

    • going2wait4sunさん
      pcfさん、こんにちは。はじめまして。
      俺も同じ感想です。
      pcfさんが印象的だと掲載してくれた所が、俺も一番印象的でした。
      短編なの...
      pcfさん、こんにちは。はじめまして。
      俺も同じ感想です。
      pcfさんが印象的だと掲載してくれた所が、俺も一番印象的でした。
      短編なのに、これ程の衝撃力…
      これだけ書ける作家の、これだけの作品群の一つでも映画化しないのか。
      或いは賞を授与されないのかが不思議でならない気がします。
      2012/01/15
  •  2014-08-30

  • 十二国記のみ読了

  • 小野不由美著「落照の獄」が秀逸でした。

  • 読みました。もぅ、何だか・・・何だかね?
    そう!そうだよね!そうするしかないよね!
    ↑読み終えた後の第一声(爆)
    今回のお話。難しかった!(><)文章が、という事じゃなくて。
    提示された「問題」に対して「答え」を出す、と言うことが!
    (↑読んでないと・・・意味不明な文章だなーー;)
    でも、難しくて、心浮き足立つ物語ではなかったけれど・・・
    やっぱり、小野先生のお話は凄いっ!
    ありきたりな言葉でごめんなさい!^^;ああっもぅっ!
    「柳」よっ!どうにかならないのかっ!
    このまま、大きな流れに飲み込まれてしまうのですかっ!!??
    ・・・と、まぁ。凄く叫びたい心境なのですが。
    今回のお話「落照の獄」は、YOMYOMのHPでも書かれていましたが
    「華胥の夢」に収録されている「帰山」と同時期の「柳国」の物語です。
    YOMYOMを読む前に、「帰山」を読み返すといいかもしれません^^
    より「柳」国の情勢がわかったり、切なさ倍増すること間違いなし!(爆)
    私は、「落照の獄」を読み終えてから「帰山」を読み返しているのですが・・・
    何だろう?うーん。「柳」が今の日本とかぶって見えるっ(=□=;爆
    ↓「帰山」より抜粋。
    「民はいつも、自国が傾き始めると笑う。どこか不安そうにしていながら、
     話をすれば笑いながら王や施政の悪口を言う。
     傾斜が深刻化してくると、民は不安げになり、憂鬱そうになる。」
    ・・・何か・・・ココ↑今の日本じゃありません????(爆)
    この後、「利広」のセリフで
    「・・・憂鬱そうにしている間は、まだ持ち直すことがあるんだけどな」
    日本よもちなおせ・・・っ!!!(>□<;
    さて。十二国記の話に戻りますが。
    「帰山」で「尚隆」が言ってたセリフ。
    「ただ、何となく柳は、もっと保ちそうな気がしてたんで」
    ↑これを読むと、本当「落照の獄」のお話が切ない!!!
    「え!?本当に柳はもぅ、駄目なんですか!?どうにもならないのですか!?」
    と、無理な我侭を叫びたくなります(><)いいな。十二国記・・・(=▽=)
    本当。素敵な物語。色々考えてしまうけれど・・・それが、また。心打たれる。
    さて、最後に。全くもって「落照の獄」の感想とはかけ離れるのですが
    どうしても書きたかった、この叫び(爆)ああ・・・「利広、素敵っ!!!」
    ↑「帰山」を読み返して思った(爆)以上。
    ネタバレにならぬ程度(?)に感想書いてみました。む、難しい・・・(爆)

  • 小野不由美「落照の獄」についての感想。
    これは、今までの十二国記とはちがって、かなりというか、すごく現代的テーマ、
    それも「死刑制度」を縦軸にもってきています。
    横軸は、国が次第に荒れてきているその原因は何か、
    ズバリ、
    主上が政治に熱意を示さず、放置し出したことです。

    さてさてさて、、、、、
    縦軸の死刑制度。
    重いですね。
    テーマ自身が重いのだが、小野さんの手にかかると、それぞれの立場の人々が、
    それぞれに思い悩む様が手に取るように伝わってきます。
    犯罪人に極刑を言い渡すことも、新しい形の殺人であるとして、主人公に悩まさせます。
    また、被害者でない多くの民衆の心理として、「それは理ではなく反射である」と述べ、
    だがしかし、こうした反射もまた人としての当然の反応であることを認め、
    認めた上で、死刑制度が防壁にならないことを指摘しています。
    私は死刑制度には反対論者です。
    感情としては「許し難い犯罪には、死刑もありか」と思うこともないわけではありません。
    が、
    死刑制度があっても、なくても犯罪はあるだろうし、防御にはならないと思います。
    死刑という制度そのものが、統治権力の「力のさらなる増大」に繋がることを危惧するのです、、、、、、、

  • 連作はあるみたいだけど、小説もエッセイ等もすべて読み切り。
    毎回買わなくてもいいし、気が向いた時に色んな作家さんの短編をパラッと読めます。
    http://matsuri7.blog123.fc2.com/blog-entry-136.html

  • 十二国記シリーズ「楽照の獄」目当て。

    短編ながらすごく考えさせられる内容だった。

  • んっとにかわいいなあこのぱんだは!
    もうぱんだはネタ切れなのだろうか。デザインが好きだったので、リニュアルがちょっと残念。

  • 十二国記[落照の獄]目当てです。

    正解のない選択肢を選ばなければいけない司法の苦悩とでも言うのでしょうか。刑罰や、それがもたらす結果について色々と議論をするのですが...

    被害者・犠牲者・遺族の無念、社会への影響
    犯罪者の人権も守り、教化への可能性と救済
    これらを検討し、双方が納得できる結論など出せるのだろうか?

    自分の中でも消化が難しい内容でした。

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