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- / ISBN・EAN: 4988104065643
感想・レビュー・書評
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李相日監督、吉田修一原作•脚本、2010年作。妻夫木聡、深津絵里、樹木希林、柄本明、満島ひかり、岡田将生、余貴美子、井川比佐志、宮崎美子出演。
<コメント>
•見終わった直後は、救われない気分になる映画。誰も幸せにならない。しかし、李監督の作品だけあって作りは緻密だし、後からよく整理すると、メッセージないし視点はハッキリした佳作。
•祐一の逃亡中、随所でテレビのワイドショーが流れる。出会い系で知り合った佳乃さんが清水容疑者(祐一)に殺害されたという内容。被害者の佳乃、「悪人」の祐一という図式。
この映画はそういう紋切り型の正義に問題提起することがテーマであるように感じた。世間で単純にいうほど純然たる「悪人」などいるのか?ということ。
•たしかに、祐一は人を殺した点では「悪人」だが、祖父母の勝治(井川)•房枝(樹木)ら家族や光代には善人だったし、幼少期の育てられ方や殺人の経緯にも情誼宥恕すべきものがあった。
光代も罪(刑法上は「逃亡の幇助」ではなく犯人隠避罪の正犯)を犯しているが、心から祐一を愛していた点では善である。愛とは、受け容れて与えること。
房枝も、孫の祐一には、指名手配になっても優しいが、祐一を捨てた実の母の依子(余)には冷たい。被害者の父、佳男(柄本)は佳乃を可愛がり、悪くないといい、現場に何度も献花に来るが、葬儀参列者や圭吾に暴力を振るい、何の科もない妻、里子(宮崎)を責めて罵倒する。
家族は、マスコミや社会から批判されても最後まで守ってやるべき立場にあるから、房枝も佳男も親としての使命は果たしていた。
こうしてみると、「理念型としての悪人」などというものは現実の世には存在せず、人はそれぞれ悪と善を併せ持つのである。
わざわざ峠まで乗せて来て車から蹴り出した圭吾も、友達を集めて佳男を笑い者にする悪人であるが、佳乃に付き合ってドライブしてやったのは善だといってもいいかもしれない。
これらの中で唯一の「悪人」がいるとすれば、それは殺された佳乃ではないか?
遊び半分で祐一をその気にさせ、気に入らない友達のことは陰口を言い、惚れた祐一の前で他の男とバックれ、ギョーザをガッツリ食べたのにブレスケアもせずにドライブの車内でベラベラ喋り、放り出された自分に手を貸す祐一を蔑んで貶めようとする。つぶさにみる限り、善の要素がないのは、この佳乃くらいだったかもしれない。
その意味で、殺される人にはそれなりの因果がある。
事件は、テレビのワイドショーのように単純ではないことを忘れてはならないのだろう。
<あらすじ(ネタバレ)>
筋だけ抜き出すとこんな感じ。
保険外交員の佳乃(満島)は、出会い系で知り合った祐一(妻夫木)に金を払わせて寝るが、すぐに圭吾(岡田)に夢中になり、約束して車で迎えに来た祐一にこれ見よがしに、たまたま会った圭吾の車でドライブに出る。圭吾はしぶしぶ付き合うが、ひと気のない峠で佳乃の図々しさに我慢できず車から蹴り出す。追って来た祐一は佳乃を助けようとするが邪険にされ、「祐一に拉致された、訴える」と吐かれ、首を絞めて殺してしまう。
警察の捜査線上に圭吾が浮かび逃走中の身柄を確保するも、殺害していないことが判明、祐一が指名手配される。祐一は、出会い系で知り合った光代(深津)に誘われて逃亡し灯台に潜んでいたが発見、逮捕される。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
※ネタバレ有りです
この作品は「誰が本当の悪人なのか?」ということがテーマなのだと思う。ただ、私は光代に感情移入して、彼女の在り方について考えてしまった。
光代の存在は「お母さん」的なもの、母性なんだと思った。目の前の相手の気持ち、やるせなさとか悲しさとか、何と言ったらいいか分からない気持ちが、きっと流れ込んできている。損得ではなく、ただ今目の前にいる相手を気にかけずにはいられない。
そして同時に「女」でもある。人の温かさを探して強く求めている。いや、人に温かさを与えることを求めているのかも。
受け入れる女性性、与える女性性を感じた。
また、人との関わりの中で「自分を(我儘を)受け入れてほしい、幸せにしてほしい」と「あなたを受け入れたい、あなたの幸せを叶えてあげたい」という気持ちのどちらを持っているか。それが、一つの境界線のように思う。 -
大学生も被害者のOLも嫌なやつだけど、それを知っても親にとっては大事な子どもなんだというのを、一緒に観てた母の反応で感じた。親になったらまた観てみようか、でも息苦しい…と悩む作品。
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深津絵里が大好きで見た
ほんとう、最高に綺麗
こういう映画がもっと増えて欲しいなあ
二人が主役というより、殺人という行為を題材に
人間の弱さ、醜さ、愚かさをすごく広い視点から描いてると思う
当事者以外からしたら「出会い系で出会った」「殺人犯」でしかなくて
妻夫木の空っぽの人生とか、深津絵里の平凡な人生とか、どうしてもっと早く出会えなかったんだろうとか
すごくすごくもどかしい気持ちでいっぱいになる
「生きてるのか、死んでるのかもわからなかった」っていう妻夫木の台詞とかものすごく切ない
あと満島ひかりのお父さんが本当に本当に素敵です
何気に岡田将生のクズ加減が見所 -
深津絵里が妻夫木に惚れて「何年でも待つ」果ては「一緒に逃げて」に至る過程がほとんど描かれていないので殺人犯相手になんでそこまでと感情移入が難しかったです。結果、メインの二人より柄本明演じる被害者父親や樹木希林演じる加害者祖母(育ての親)の姿の方が印象に残りました。
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映画鑑賞の後に小説を読んだ
読後に感じたのは、誰しもがはまり役だということ。
長い小説では何かのシーンが削られることが多い中、この映画では削られるのではなく役者が演技で原作の世界観を見事に表現していた。
被害者の女や容疑をかけられていた大学生なんかは原作よりも「悪人」に見えたほどだ。 -
とにかく、深津絵里と妻夫木聡のセックスシーンが頭からはなれない。。
深津絵里大好きだけど、こんなに脱いだのは初めて観たし、声と動きが生々しくてうまいなぁと思った。
樹木希林、榎本明。本よりも説得力のある演技と雰囲気ですごい。
「人間は大切な人のためなら立ち上がれる」
というのが原作のテーマらしい。
映画からも本からも、もっとどろどろした暗い感じと、愛と悪って何だ?という疑問が残る作品。 -
原作が好きすぎて、
コレジャナイ感が半端ない。
ラストもちょっと意味合いが違う。
妻夫木じゃないし、深津じゃない。
どっちも、こんな綺麗じゃない。
にしても、綺麗じゃなく見えるから役者はすごい。 -
タイトルは「悪人」だけど、
ワタシは、誰も悪くないって思ってしまったなあ・・・
切なすぎる。