審判 [Kindle]

  • 2012年9月14日発売
3.16
  • (3)
  • (3)
  • (8)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 129
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (334ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • [第八章以降]

     読了。最後に《付録》として「断章六編」が掲載されている。遺稿のなかにあったのだろうと思うのだけれども、こういうときに巻末解説が欲しいなと思ってしまう。そこがないのが青空文庫。底本は新潮文庫のようなので、そちらにはあるのかな。そうでなくてもカフカの本は他にもあるので、そちらを繙けばいいだけのことでした。最後まではっきりしたことはわからないまま、ぼんやりといろいろな物事が進んでいく様は、人生そのもののようにも思えて、ちょっとイヤになる。それすべて含めて「審判」なのだろうなと思った。

    --

    [第六章-第七章]

     相変わらず、K のおかした犯罪がどういったものだったかという具体的な説明は一切なく、裁判にかかる準備だけが進んでいく。それも勿論真っ当に進むわけではなく、裁判のための手続きではなく、弁護士や裁判所の事務局員やひとりひとりの裁判官にどうやって取り入るかに近い話が、しかもその行為にどういう意味があるのかの説明はなく、そうすれば大丈夫だろうという曖昧な説明と、けれどもいつまで経っても訴訟自体が終わりそうにない予感だけが膨らんでいく。コメディとして読めるものでもあるのだろうけど、実際に、公的な手続きには意味がわからないまま実行させられていることも少なくはない感じがあるため、現実をぺろりと一枚めくったところにそこがあるような不安感が生じる。そして実際、どうすれば無罪になれるかという説明を延々と聞かせられていた画家の家をぺろりとめくると、そこは裁判所の事務局なのだ。なんという不条理。

    --

    [第二章-第五章]

     K は大真面目に物事にあたろうとしているのだと思われるのだけど、四角四面なかれの判断と、そのなかでも自分をなんとかして正当化しようとする思考が、もの悲しくもあり、まるで自分のようですらあって恥ずかしくもある。こんな対応の仕方で、物事がいい方向に進むわけはないのだけど。ということが、読んでいる側にはなんとなくわかるのだけど、K にはまったくわからないのだよな。本当に、もの悲しい。

    --

    [第一章]

     有名なカフカ作品のなかでは、『審判』を読んだ回数は少ないと思う。そんなわけで、細々としたエピソードは忘れてしまっていたのだけど。K のビュルストナー嬢に対する対応の酷さにくらくらしてしまった。もうこの件だけで K は有罪ってことでもいいと思ったよ。

     それにしても。こんなことは起こるわけがないと信じていられる世のなかであれば、この話はコメディとして読めるのだろうけど、仮にこういうことが起こったとしてもおかしくない現実があるのではないかと思ってしまうので、やはり読んでいてぞっとする。

  • 何の罪かわからないが、ある日Kは突然逮捕される。
    その後も幾人かの人たちとやりとりがあるが、誰もがはっきりと何の罪かは言わない。

    何の罪かはわからない。
    身に覚えのない罪、冤罪よりこの状況はひどい。
    何の罪かわからないから、対策が無理ではないか。

    しかし、Kはできる限り対策を取ろうとする。

    設定もおかしな場面も普通に出てきて(審理の場所、職場のガラクタ置きで鞭打ち、処刑場所も)変な人々も出てきて、悪夢みたい。

    誰かの夢を書き起こしたのではないか?ってぐらいおかしい。
    夢分析でもするつもりで読んだ。

    ぼやかされているから、より想像力が広がり、罪が何なのかを気にするよりも、それによって引き起こされる対応、裁判のあり方、理不尽さそのものに焦点が当たる。

    とにかく、これは悪夢を書き起こしたものだと思うことにする。

    『変身』も悪夢みたいなもんだけど、感想文を書けと言われたら自分なりの分析も感想も書けるけど、『審判』は無理。

    無理矢理言うなら、社会にはこのような気持ちになる理不尽な体制などがあるんですよー、罪に問われたらどうにかして無罪になりたいから頑張る、でもどうしてもダメな時はこうなるしかないのだーと。

    もう一度、言う。
    とにかくこれは悪夢を書き起こしたんだと思うな。

  • 身に覚えもないのにいきなり逮捕通告を受ける唐突さは『変身』を思い出した。社会的な地位もあった有能な人物が不条理によって心身ともに追い詰められていき、わけもわからぬまま処刑されるまでを描く。カフカ自身も会社勤めしてた頃は有能だったようだし、不条理=病身だったりするのかな。荒唐無稽で唐突にも感じられるけど、超真面目で融通きかない人の頭ってたいていにして極端に振れがちで、物事を誇大に捉えてしまったりする癖があるので、こんなもんかなとも思う。弁護士は父親のメタファーだろうなぁ。眩暈を覚える読書でした。

  • 解説から、結末とはじまりが同時に書かれたということがわかり、「なるほどな」と思ったのである。
    本作も未完。
    始まりと終わりの間を作る過程では、もしかしたら別の方向へと結末が向いていたのではないか、そんな気がする。

    主人公と画家との会話で画家は、審判の結末として三つの可能性があるという。
    「ほんとうの自由」「見せかけの自由」「ひきずっていく場合」
    カフカはどの自由を選ばせたかったのだろうか。
    選んだ結果があの結末だったのだろうか。

  • カフカの作品についてつらつら考えてみるが、
    まとまることはないので以下省略。

  • わけがわからん。
    結末も最高に意味がわからない(ある意味面白くはあるが)。

    法律社会がはらむ矛盾や闇を強烈に皮肉ってるのはまあ分かるんだけど、プロットが冗長だし、未完だし・・・。

    いままで読んだ本の中でトップクラスに意味がわからない。

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

1883年プラハ生まれのユダヤ人。カフカとはチェコ語でカラスの意味。生涯を一役人としてすごし、一部を除きその作品は死後発表された。1924年没。

「2022年 『変身』 で使われていた紹介文から引用しています。」

フランツ・カフカの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×