ガセネッタ&シモネッタ (文春文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • ロシア語通訳の目から見た通訳、翻訳の世界。言葉の普遍性と、違うからこその苦労と面白さ。

  • ロシア語の同時通訳者の経験で文化、言語、国際関係、などなどのエッセイ。表題は某同時通訳者のあだ名。エッセイは面白かったなあ。

  • 同時通訳者の苦労がわかると同時に、相対的なものの見方を知ることができるグローバルな良書。途中から読むのが止まらなかった。

  • ロシア語同時通訳者である著者の同時通訳者としての矜持を感じることができる。
    当たり前かもしれないが、通訳するテーマの知識を仕入れるために多くの専門書を読み、後半ではその作業も楽しいと言わしめる著者の知識欲には感服させられる。
    また、冷戦時代のロシアの書店事情だったり、最近のロシア人の読書の風潮であったりも分かるが、最近の日本書店の零落振りを嘆いていたりと忙しい限りだ。
    英語通訳者ではわからない、ロシア語通訳だからこその苦労や楽しさも教えてくれる。
    意訳こそが通訳の実力だ的なことを言っていて、なんとなく納得させられる。
    また、他の通訳者の人となりやどのように苦労を乗り切ってきたかが分かって興味深い。
    幼少時の経験なども交えて、面白おかしく、時には考えさせられる内容もあって楽しく読むことができた。

  •  著者の米原万里はロシア語通訳兼エッセイスト。食べ物の話と下ネタが得意。以前読んだ『旅行者の朝食』は世界各国の食をテーマにしていたが、本作はかなり本業に近く、通訳という仕事のなんたるかや、文化の違いをどう捉えるかといった割と真面目な内容になっている。真面目な内容とはいえ語り口はとても軽妙で読みやすい。

     もとは雑誌に連載されたエッセイの書籍化だが、本書の目次はレストランのメニュー風の構成になっている。食いしん坊の著者らしいが、内容とは余り関係がない。取り上げられたテーマは通訳としての体験談や通訳業の歴史、幼少期の思い出や映画や小説など多岐にわたるが、言葉や文化に対する著者の強い思い入れが随所に感じられる。また英文学者の柳瀬尚紀氏および劇作家の永井愛氏との対談が含まれており、言葉を扱うプロの会話が興味深い。

     実は私が学生時代に選択した第二外国語はロシア語だったので、一応キリル文字の発音はわかるのと、挨拶程度の単語はいくつか覚えているが、あとはほぼ全て忘れたと言っても過言ではない。もう少し真面目に勉強すれば面白かったかもしれない。現在は中国に住んでいて、通訳の世話にならないと仕事はまったくできない環境にいる。本書に中国語通訳者は出てこないが、きっとまた別の世界があるのだろう。

  • ロシア文化でも面白いことわざってあるんですね

  • ロシア語通訳の方のエッセイ。面白かったー。

  • 米原万里さんのエッセイ集。

    同時通訳にまつわる「あれこれ」の話が、非常に興味深く面白い。

    慣用句・ことわざは。その国の文化・風土に根ざしたものであり、一対一で訳せるようなものではない。
    しかし、話者は、そういうことを気にせずに、どんどん使う。同時通訳者の苦労も知らずに、である。

    しかし、やはり自然に出てくる言葉は、慣用句などが多い。それをいかに工夫して訳すかなど。

    また。黒田龍之助氏と同じく、「外国語=英語」という日本の固定観念について指摘しており、また、英語話者は、英語のみしか話せないの対し、他の言語を話せる通訳者には、英語も話せる人が多いという指摘もあり、面白い。
    (両氏ともロシア語が専門)

  • ロシア語の同時通訳者、米原万里さん、珠玉のエッセイ集。

    通訳者が一番苦労するのは、ユーモアの翻訳。場合によっては、日本人が笑っているのに、ロシア人が笑わないという事態が発生する。特に、同音異義語が多い日本語では、駄洒落に由来した笑いが多い。
    冒頭は、遊園地の豊島園を年増に絡めたスピーチでの通訳の話。なるほど、これは難しい。

    本書は1995年から2000年にかけて、新聞、雑誌に掲載されたエッセイ集。通訳でのエピソード、言語に関する著者の考えが中心だが、私のような語学マニアには、たいへん楽しい読み物。1本、数分で読めるので、スキマ時間の読書に良い。

    同時通訳者にとって必要なものは何か?これは、恥じる自尊心と同時に落ち込まず、すぐに立ち直る神経の図太さらしい。米原さん自身、神経が図太いのだろう。歯に衣着せぬコメントが心地よい。

    日本語の乱れを嘆く風潮に対しては、「どんなに時の為政者が 、強大な権力にものを言わせて強要しようと 、正義をふりかざす団体が当然とばかりに圧力をかけようと 、どんなに権威ある学者や専門家が高邁な学識を動員して啓蒙しようと 、圧倒的多数の人々が 、その言葉を使うようにならない限り 、その言葉は言葉になれないのである 。このあたりは 、小気味良いほど単純民主主義なのだ 」とし、「だからこそ 、己の美意識を露ほども疑うことなく 、 『日本語はこうあるべきだ 』と悲憤慷慨する人の姿は 、何だかひどく哀れでおかしい 」と手厳しい。

    また、外国語を学習することについては、「前々からぜひとも使ってみたかった言葉や言い回しを駆使するときの胸のときめきは 、自転車に初めて乗れるようになった遠い昔の日に味わった 、乗ること自体が嬉しくて楽しくてたまらなかった気分にソックリだ 」。これこそ、語学の醍醐味と思う。

    他にも、英語の通訳者とロシア語の通訳者との違い、グローバル化への意見、猫語を話す女性の話などなど、興味深いエピソードが満載。とくに、プラハのソビエト学校時代のチボーという名前の悪ガキが、なぜ突然、マトモになったのかの分析は、自分の経験とシンクロして、胸が熱くなった。

    お手本のようなエッセイ集。おすすめの★4つ。

  • 外国語=英語、そんな感覚では国際人にはなれない!!
    言葉には文化が現れる、私の考えていたことそのもの!!

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。作家。在プラハ・ソビエト学校で学ぶ。東京外国語大学卒、東京大学大学院露語露文学専攻修士課程修了。ロシア語会議通訳、ロシア語通訳協会会長として活躍。『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(角川文庫)ほか著書多数。2006年5月、逝去。

「2016年 『米原万里ベストエッセイII』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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