- Amazon.co.jp ・電子書籍 (315ページ)
感想・レビュー・書評
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なんか凄い小説読んじゃった……(๑º ロ º๑)
私の推し小説10選に余裕で入りました…。
あぁぁぁ……(余韻の溜息)
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21世紀後半、「大災禍」と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。
医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア”。
そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した―
それから13年。死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰にただひとり死んだはずの少女の影を見る―『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。
(Amazon 作品紹介より)
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先に『虐殺器官』を読んだ方がいいです。
またほんの少し雰囲気の違う作品ですが、関連があります。
文中にHTMLタグが表記されていて、最後に理由が分かります。
世の中に「大災禍」と呼ばれる混乱が巻き起こった半世紀後、世界中で「メディケア」と呼ばれる個人用医療薬精製システムが人間の健康管理をする世の中になる。
このシステムを否定する少女、御冷ミァハの存在が主人公の心を強く揺さぶります。
主人公は霧慧トァン。
彼女はメディケアにより争いの抑えられたこの世の中に居心地の悪さを感じている。
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リソース意識。
人はその社会的感覚というか義務をそう呼ぶ。または公共的身体。
あなたはこの世界にとって欠くべからざるリソースであることを常に意識しなさい、って。「命を大切に」や「人命は地球より重い」の一族に連なるスローガン。(本文より)
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そして彼女達は自殺を決意する。
争いのない世界、病気のない世界は理想郷。
長生きが普通で、平和。
このユートピアは実現可能に思える。
ただ、国民ひとりひとりが医療生命システムによって管理されるのと引き換えに。
これって、メディケアさえあれば、独裁を緩やかにした共産主義…社会主義の理想が現実にできるのでは?と思ってしまった。
独裁で従わせる必要がない。
表向き国民一人一人の為に、個人は自分や家族のの為に、とwin-winに捉えているから成り立つシステムだ。
国家の権限で国民を従わせるので、共に富むことも滅ぶ事も可能。
ただ、皆正義の為に働いている。
愛する人を守る為に全てを善に置き換える。
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善、っていうのは、突き詰めれば「ある何かの価値観を持続させる」ための意志なんだよ。
(本文より)
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『虐殺器官』でも『ハーモニー』でも、同じ
「愛する人を守るための正義」の話だ。
そんな理想郷でも、子供たちの自殺が増える。
子供達を「重要なリソース」として扱う反面、意思を抑え込む世界。
『ハーモニー』の世界は、はたしてユートピアなのか。
アニメも連続2回観ちゃいました。
断然小説の方が良いですが視聴後は『虐殺器官』同様、とても考えてしまいます。
何か感想思ったように書けないよ〜
すごく良かったよ〜( ᵒ̴̶̷̥́ωᵒ̴̶̷̣̥̀ )
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2060年、破滅的な核戦争を経て、全人類が体内にWatchMeと呼ばれる健康維持管理システムを導入することで、プライバシーのない原理主義ともいえる医療福祉社会へと移行した人類社会を描いたSF小説。約350ページ、四部構成。巻末には早世した著者への最後のインタビューも収める。
主人公は霧彗トァン、世界保健機構の螺旋監察官としてニジェールでの勤務にあたる28歳の女性である。螺旋監察官の「螺旋」はDNAを意味し、もとは遺伝子改変といった犯罪を取り締まる組織だが、守備範囲を大幅に拡張して世界各地の紛争解決に乗り出している。
作品の時間軸はトァン28歳の時点のほか、15歳の高校時代が交互して描かれる。トァンと並び、本作でも重要な人物として登場するのは御冷ミァハ。若き日のトァンの人格形成に決定的な影響を与えたトァンの同級生で、成績優秀な問題児で、エキセントリックなキャラクターとして描写される。ミァハは徹底して健全に漂白されていく社会に絶望しており、高校時代はミァハの独白を中心に展開する。
螺旋監察官として海外に勤務していたトァンだったが、本作の未来社会ならではの違法行為が上司にバレたことで、トァンが嫌っている日本に帰国させられてしまう。ちょうどそのタイミングで世界各地で同時多発的なある重大な事件が発生し、世界は核戦争以来の混乱に陥る。謹慎を命じられていたトァンだったが、この事態を受けて螺旋監察官として捜査に乗り出すことを志願する。
本作で描かれている社会背景や、事件の顛末にはSF的な好奇心をくすぐる興味深さが十分にあって結末までを楽しみながら読めた。他方、装飾が多く背伸びにも見えるもったいつけた、ラノベ的な文体や会話、固有名詞など、作品の「中二病」的な特徴に違和感があり、この点は最後まで馴染めなかった。作品の重要な鍵を握るミァハの過去についても、現実感に乏しく感じてかえって白けてしまった。SFとしての設定やプロットへの関心は持てる一方で、味付けが全く好みに合わない作品だった。完全に仮定の話だが、同じストーリーを違う作者が書いていれば、もっと好きな作品になったかもしれない。 -
高校生のころ読んで久しぶりに再読。ずっと過去に囚われてる系の話が大好きなので、これもお気に入りの一冊。ハッピーエンドなのかそうじゃないのか、人によって変わりそう…私はハピエン派。
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「魂を擁護する言葉は、どこにあるのだろう」
<question>
<q: あなたは、だれ…>
<a: わたしは、わたし>
</question>
「きみはわたしと同じ素材からできているんだよ」
<panic>
<shout>
わたしは、わたし
</shout>
</panic>
「一緒に示そうよ」
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ずっと気になってた伊藤計劃本。遂に読めて感激!緻密なロジックで繊細に編まれたディストピア×ユートピア的世界観。3人の少女。脳、心理、平和、人間、未来、生と死…絡み合う文学に終始陶酔しました。
こりゃ再読しちゃうのも無理はない! -
「うん、ごめんね、ミァハ」
この一言が印象的な物語だった。キアンもトァンもずっとミァハをひとりにしてしまったことを心の奥底に隠して成長した。そしてミァハもきっと、12歳の時から罪悪感を抱えて生きていたのだろう。
世界観は非常にキリスト的だと思う。人間は自然の支配者であり、それを抑えつけ管理する義務がある。そしてその人間は原罪を背負った存在という前提。
だからこそ人間は自らを管理しなければならないし、悪に染まりやすい意思を必要としない行動決定プログラムがあればなお良い。祝福の言葉もそりゃ「祝詞」ではなく「ハレルヤ」になる。そんな流れになるのは必至だったのかもしれない。
トァンはそれを「外注化」と呼んでいた。
そんな空気に反して、トァンは自己意識を行動決定の最優先としている。「わたし」をどこまでも大事にし、最後まで優先したからこそ、トァンは敗残者になったのだと思う。
個人的に、ディストピア小説を書く作家は、誰よりも人類の可能性を信じているのだと思っている。
トァンが苦痛に感じる世界の「空気」に近いものは現代にもあるし、ハーモニーも決してあり得ない未来ではない。しかし管理社会にもはみ出し者がいるという描写によって、残る希望を描くことを忘れない。
想像の世界を書いて現代に警鐘を鳴らすことができる文学はすごいなあと語彙力がないながらに思う。
きっとハーモニーという作品は永遠に近いところまで残るのだろう。 -
人は、魂がないと意志がないと、人ではないのかな?!
面白く読了しました。脳内で葛藤し選択することが意志とする部分は良くできてるなぁっと。 -
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いろいろ廻って読み直してみたら、これ読んどきゃよくね? 感がすごい。SFには特に、各年代にそういう作品があるような気がする。或いはそれぞれのサブジャンルにある核のひとつ、かな? それを読んでれば、ある程度の会話についていけてしまうような。要するに何かについて、「それってハーモニーのあれに似てるよね」って話が出来ちゃうような(そういう牽強付会的な会話が面白いのかどうかは別論)。
それだけ多くの要素を、それはこの作品以前のものも勿論含めて備えた、ひとつの極致なんだろうと思う。SFに限らず、これが書かれるに至った沢山の文化を我々は誇るべきだし、ここから走り出したいろいろな作品を積極的に楽しむべきだし、そして同時に、その恐ろしさも刻んでおくべきなんだろうと思います。
真っ白な表紙に文字を落とすにはやはり黒だし、真っ黒な表紙に文字を落とすにはやはり白だというただそれだけのことが、それだけのことでなくなる。
10年かそれくらい前、はじめて手に取ったときと比べて、より深刻に読めてしまったのが怖い。現実的に、というか。
一線を超えた想像力。これぞSFである。
アニメ…見るか…?
なんか本棚登録してなかったからお詫びも兼ねて☆5