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感想・レビュー・書評
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日系人のノーベル文学賞受賞者というだけで、ずっと気になっていた本。「提供」という奇妙な言葉から物語が始まり、徐々にその謎が溶けていく。人間、環境に慣れると周囲のことや常識に何も疑わず、みすみす時を過ごしてしまう。外の世界を知って、後の祭りとならないように、行動していきたい
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先に映画を見ているので大筋は知ってた。映画はなかなか原作に忠実。映画のイイところのほとんどが原作そのまま。長編小説を100分でまとめたことによる映像での表現を文章で味わうのはやはり段違いにいい。読んでいてアトウッド「侍女の物語」を思い出した。どちらもSFディストピアのドラマなのに、現実世界を表現しているように感じられる。元首相が義務教育は小学生までで十分とか発言していたけど、一般市民は上を支えるために生きていればいいと、同じ人間とは思わない富裕層はリアルにあるわけで、ここまでわかりやすくはなくても弱肉強食の世界はリアルに存在しているから、ヘイルシャムの運動もしかり、様々な面がフィクションに思えない。 自分の運命を受け入れることや、運命を見ずに希望にすがることなど、人物たちの細かい行動や思考も身近に迫る生生しさがある。オチは知っているのに切なかった。淡々と冷静な語り口がゆえにむちゃくちゃ響いた。 序盤は冗長的だなと感じる部分はあったけど後半くらいからはノンストップで読み終えた。 知っててなお響くし面白い小説だった。
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淡々と、モノクロの施設生活を振り返っていくと、徐々に色を宿しながら時間が現在へと近づいていき、最後に大きな嵐がキャシーとトミー、読者を襲うような小説。
「Never let me go」を聞いていると、母親の腕に抱かれているような温もりを感じて切なくなる。
結果的にキャシーは提供者で終わるのだけど、彼女が辛い現実に向き合っていくだけの希望という名の思い出を持てたのかなと思う。
ヘームシャルは彼女にとっての希望であると同時に、クローンを育てるという非人道的な行いの中での道徳的なものという一縷の希望であって、その儚さに悲しみを感じると共に美しささえ感じる。 -
主人公のキャシーが語り手のような書き方をしていて、外界と隔てられた施設で育った少年と少女の生活を振り返る形で淡々と語られていた。
この話で強く印象に残ったのは、出てくる登場人物たちが暮らしていた施設での残酷な真実を知り抵抗をしようとするが、それはわずかな猶予を得るという根本的な解決にはならないことであり、無意識のうちに抗えなくなっているという恐ろしさが存在していた。
読んだ後に単純な満足感だけでなく何か心にのしかかるようなものを感じる作品だった。 -
冒頭から女性の語りで展開されるのだけれど、どういう話か? ってのがなかなかつかめない。読み手にずっと不安感を抱かせるような書きぶりがうまいとは思う。ただ秘密の部分がわかってもすっきりした気分にはなれなかった。
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や〜、名作だと思う。解説にあった「細部まで抑制が効いた(表現曖昧)」と言うのが言い得て妙。激しく残酷な運命なのに淡々と「使命を全うする」まで生きる彼らの描写が秀逸。静かに描かれているからこそ、際立つものがあった。この原作(翻訳版だけど)がもつ空気感や雰囲気は映像化は難しいと思う。ぜひ原作を!