イノベーションのジレンマ 増補改訂版 Harvard business school press [Kindle]

  • 翔泳社
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感想・レビュー・書評

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  • 大手企業の経営者であれば間違いなく読んでいる一冊ではないだろうか。
    少しでも経営者の視点に立って考えるために、ビジネスパーソンならぜひ読んでおきたい本。

  • 買ったはいいものの、カタそうな本だし、絶対読まないだろうなぁなんて思っていた。著者クリステンセン氏の『イノベーション・オブ・ライフ』の方は面白く読んでいたんだけどね。こちらは買ったもののしばらく放置しておいて、ふと読んでみたら予想に反してびっくりするほど面白かったんだよね。よく「破壊と創造」なんていうけどさ。現実に企業でそれをやろうとしたら、お題目で唱えられるほど生易しい者ではない、ということが事例やデータで示される。

     Appleでは最初に出した70年代だかのパソコン、AppleⅠが失敗し、その後AppleⅡ+で成功した。一方でAppleが大きな企業になったあとで大きな力を投入したポータブル端末ニュートンは歴史的な失敗作とされる。しかし、ニュートンは、ほんとうに失敗だったのか?


    ニュートンは失敗だったのだろうか。ニュートンがハンドヘルド市場に参入したタイミングは、アップル Ⅱがデスクトップ市場に参入したタイミングと似ている。新しい市場を開拓する破壊的製品で、どのようなニーズがあるのか、ユーザー自身にもアップルにもわからない、不明確なユーザー層が対象である。それを考えれば、ニュートンの売れ行きは、アップルの経営陣にとっては予想以上だったはずだ。最初の二年間の販売台数は、アップル Ⅱの三倍以上である。しかし、一九七九年当時の小規模なアップルにとって、四万三〇〇〇台の販売台数は、株式公開にふさわしい勝利であったが、一九九四年の大企業アップルにとって、ニュートンの一四万台という売れ行きは失敗であった。


     会社であれ、個人であれ、どのように生き残っていくかは大きな問題だ。
     
     イノベーションなんてことがさかんに言われるけど、実際のところはヒトスジナワではいかない。本書を読んで、俺が成功事例なのかなと思ったのはセブンアンドアイHDだった。イトーヨーカドーという形態が衰退しかけたとき、セブンイレブンというコンビニに活路を見出し、そちらに脱皮した。セブンイレブンというイノベーションは、同時にイトーヨーカドーという形態の破壊もあったのではないか。古き価値観にも思いをはせると、なかなか複雑な気分になるが、そういう感情は起業家には必要ないものなんだろうかね。俺は起業家じゃないけど。

  • 善を重ねる優良企業であっても、新しい革新的な技術を軽視してしまい、その地位を失う危険があることをイノベーションのジレンマという。
    超長期で考えると、破壊的イノベーションと持続的イノベーションのうち、破壊的イノベーションを選ばなければいけない。

    ◯ジレンマの源泉
    原則1:企業は顧客と投資家に資源を依存している
    要するに、お金を出してくれる人に企業の戦略は影響されるということです。なので、実績のある既存事業に偏ってしまうのは当たり前と言えます。お客さんや株主を無視するのは非常に困難です。

    原則2:小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決できない
    まだ可能性も小さく、成長過程にある市場を大企業は軽視します。10億円の市場は中小企業にとっては魅力的に映るかもしれませんが、大企業にとってみれば追求するような市場ではありません。

    原則3:存在しない市場は分析できない
    過去のことしか分析対象になりません。つまり未来の市場は分析できないので、顕在化している市場への投資が優先されます。

    原則4:組織の能力は無能力の決定的要因になる
    大きな組織ほど既存ビジネスに対して最適化されています。異なる事業をはじめようにも、大きな変化が必要になってしまい、新しいことに取り組みにくい体質になります。

    原則5:技術の供給は市場の需要と等しいとは限らない
    製品の性能を高めたり、新しい技術開発ができるからといって、顧客がそれを求めるとは限りません。過剰品質や過剰性能だと顧客が感じれば、破壊的イノベーションを受け入れるかもしれません。

    ◯ジレンマを壊すには
    ・破壊的イノベーションには当期利益に連動しない一定額の投資予算を無条件に配分する
    ・既存事業とは異なる組織・環境で破壊的イノベーションに取り組むと決める
    ・「売上」「市場規模」といった既存事業と同じ指標で評価しない
    ・破壊的技術が一定の市場を獲得するような試行錯誤を容認する。ビジネスモデルの変革は社内の価値観の変革と心得える
    ・イノベーションのDNAモデルなどを踏まえた社内人材育成や社外人材を活用する

  • 破壊的技術によるイノベーションがいかに既存企業を滅ぼすのかを、多くの事例を引きながら理論立てて説明されており、非常に面白く、わかりやすかった。事業を取り巻く環境に対する見方、とらえ方では大いに参考になると思う。だからと言って、必ず勝ち組になれるとのしっかりとした確信を得たわけではないが。

  • 本書は、山口周の『ビジネス書マンダラ』に掲載されている本である。いろんなところでも推奨されている。イノベーションのジレンマというのは、イノベーションをすればするほど労働者がいらなくなるジレンマだと思っていた。ロボット化により労働者を工場から追放し、人工知能化で職がなくなるという感じかな。名著は名著である。本書は、ディスク、ドライブ業界、掘削機械、自動車業界などの徹底した事例分析があり、そして深い考察があり、私にはとても刺激的だった。
    イノベーションを「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」に区別している。
    持続的なイノベーションは、顧客が重視する性能の向上にあり、市場はあり、利益率が高い。破壊的なイノベーションは、それまで解決されていなかった課題を解決するが、市場はなく、利益率が少ない。
    成功している企業が、経営的に失敗をもたらす原因を明らかにする。成功している企業が失敗するのは、これまで言われてきた「官僚主義、慢心、血族経営による疲弊、貧困な事業計画、近視眼的な投資、能力と資源の不足、単なる不運」だけでない、失敗があるとした。
    すぐれた経営が、業界リーダーの座を失う最大の理由は、破壊的イノベーションによって起こる。
    「破壊的イノベーションの法則」を無視し、逆らったからだという。成功した企業は、持続的イノベーションに注目し、それを行うことで、高収益を確保することができる。結局は、機会を逃したというのが、キイワードにもなる。
    それをディスク業界の分析をして、明らかにする。具体的な技術も含めて分析するのがおもしろい。
    なぜ破壊的イノベーションを成功した企業が取り扱えないのは、①企業は顧客と投資家に依存している。②小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決できない。③存在しない市場は分析できない。④組織の能力は、無能力の決定要因になる。⑤技術の供給は、市場の需要と等しいとは限らない。
    現在の時代は、様々なところで、破壊的なイノベーションが起こっている。
    ディスク業界は、技術開発が早く、ショウジョウバエのように寿命が短い。1952年IBMのサンノゼ研究所で最初のディスクドライブが開発され、大型の冷蔵庫の大きさであり5MBの記憶量だった。それが急速に技術的なイノベーションが起こり進んで行くのだ。著者は、「坂の泥流に逆らって坂を登る」という技術泥流説は、間違っていたという。フェライトヘッド、薄膜ヘッド、MRヘッド(磁気抵抗効果のあるMR素子を使用する)など、常に新しい技術に投資して技術革新をした。
    それが、さらにフラッシュメモリに転換して行くのだが、フラッシュメモリを東芝の研究所で開発したことを著者は述べていない。そして、フラッシュメモリがこの頃の時には、どのように発展をするかが、見えていない。その時点ではフラッシュメモリは高すぎたのだ。フラッシュメモリという破壊的イノベーションを開発した東芝がなぜ現在テイタラクになっているのか、著者に分析してほしいものだ。
    成功した企業は、持続的なイノベーションを導入し、破壊的イノベーションの取り扱いに失敗する。
    破壊的イノベーションは、市場規模が小さく、顧客の需要もはっきりしていないので、優先されない。破壊的イノベーションを拒絶するプロセスは、企業の資源配分プロセスが利益率が高く、市場規模の大きいのに向かってしまう。著者の考察が、その技術の開発が部分的であり、その部分を使ったバリューチェーンから考察する。なるほど、この考え方が重要だね。
    企業は、資源、プロセス、価値基準によって常に経営される。その経営方法が、破壊的イノベーションを受け入れず、失敗していくのだ。そのためには、①新しい市場の成長率を押し上げる。②市場がうまみのある規模に拡大するまで待つ。③小規模な組織にチャンスを与え、スピンアウト戦略をとる。イノベーションのジレンマとは、大きな企業の課題なんだね。合併による規模拡大に関しては、的確に問題点を指摘する。銀行のメガバンク化などは明らかに弊害が生まれている。
    電気自動車に関する分析もあり、バッテリー開発がボトルネックになっている。
    日本の企業が、なぜ失速していったのかが、この本から多く学べた。カメラ携帯電話、パソコン、ゲーム、テレビなど破壊的イノベーションで大きな変化をしている。今後どうなって行くのか、著者の視点で見てみると、おもろい社会ができそうだ。名著は名著である。

  • やっと名著を読むことができた。

    なぜ、優良企業が失敗してしまう原因がわかった。

    まず、既存の業界を破壊してしまうイノベーション技術が、そもそも既存の業界とマッチしないため優良企業が採用を見送るということが一つ目。

    二つ目は、優良企業が規模が大きいため収益性を保持する必要があり、イノベーション技術を採用した商品ないしプロダクトは収益性が低いので、売れたとしても、売り上げが低いため、結果的に、株主の期待に答えられないため、同じく採用を見送ってしまうことがある。

    ただ新規企業は収益性が低く既存の業界とマッチしない業界であってもリクープしてしまうため、そのまま技術革新を行い、やがてそれが、優良企業が所属している産業にまで波及してしまい、そのころには、追いつけなくなり破綻に追い込まれるということだ。

    本書は、ホンダのバイクをはじめ、ディスクドライブや掘削機を中心に話が展開されていたため、もう少し最近の業界に絞ってリライトないし改訂版という形で新しく出版してほしかった。

    自分の読解力のなさかもしれないが、同じようなことが永遠とグルグル書かれている印象を受け、最後の、「イノベーションのジレンマの手引き」という項目だけでも、もはやよかったような気がしました。

    反論として、本書でいうところの破壊的技術を採用した商品は、一般的に価格が低いと記載されていたが、最初のスマホやテスラの電気自動車を見る限り、必ずしも、価格は低くなかったと思っているわけだがどうだろうか?

  • クリステンセンの名著。
    いまでも学びがある。
    企業は大きくなると、成長のために多くの利益が必要になる。ただ破壊的技術は最初はサイズに合った利益を生まないため、そして市場がわからないため顧客も求めない。結果、破壊的イノベーションには投資できないというジレンマに陥る。
    ここではそのジレンマのヒントまで書かれている。
    ポイントは独立した組織である。

  • うまくいってる事業から新規事業に移行するための注意

  • 先に両利きの経営を読んでいたので、なるほど、両利きの経営はイノベーションのジレンマにおける「破壊的技術はそれを求める顧客を持つ組織に任せる」と言う側面に対しての、知の深化と知の探索なのかと感じました。

    ①企業は顧客と投資家に資源を依存
    ②小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決不可
    ③存在しない市場は分析不可
    ④組織の能力は無能力の決定要因
    ⑤技術の供給は市場の需要と等しいわけではない

    上記以外にも気付きはたくさん。
    組織は、資源とプロセスと価値基準から構成とは、まさにその通り。同一の資源を異なる組織にアサインすると異なる結果が出るのは、プロセスと価値基準が異なるから。果たして私の組織の価値基準はなんだろうか。それをメンバに言語化できているだろうか。この基準を理解していると、企業の買収も意味を感じる。買収する目的が、資源なのか、それともプロセスなのか。資源であれば、買収元の企業はなくなるが、プロセスや価値基準が目的であれば、子会社化。これは本当に納得。

    組織の規模を市場の規模に合わせる。これも納得。大企業の中の小さな集団で小規模な市場にアプローチすることは、プロセス上の大きなディスアドバンテージがあると感じる。プロセスは大規模市場向けにカスタマイズされているので、小規模市場へ向けては「無駄」が多い。

    バリューネットワークは、まさにどの市場に対してどのような価値を提供し、その価値を構成するために何が必要かと言う点でしょうか。

    イノベーションのジレンマと言う点に関しての私の大枠の理解は、優良企業は既存顧客のための資源を投入し、そして利益を追求するから。この行為自体は決して間違って行為ではなく、持続的イノベーションを引き起こす活動そのもの。ただし、破壊的イノベーションは顧客がいないところで発生したして、最初は気にする必要ないほど小さな市場で利益率が低い中で成長を遂げる。結果として、利益を求める行為が、破壊的イノベーションから遠ざかる一因になるのか。

  • 成功している企業は(短期的な)正しい意志決定をするからこそ(長期的に)失敗する。

    分析気質>学習気質
    人々は分析できるものを優先してしまう。
    本当に大切なのは学習気質。

    数字で語れることばかりに頼りすぎない。
    「よくわからないこと」にも好奇心を持ちチャレンジする。

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