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感想・レビュー・書評
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「それは悲しみも知らないと同時に、喜びも知らない生涯だつた。」
平安後期に成立した今昔物語から題をとった作品。けれど現代に置き換えたら、親に先立たれてしまった引きこもりニートの悲惨な成れの果てを描いたような作品で、しかもかなりリアルで、かなりツラい気持ちになる。
たった十分ほどで読めてしまう物語でこれほど胸痛く、感傷的にさせる短編小説の名手・芥川龍之介の構成スキルはやはり恐るべし。
でも正直、二度は読みたくないかな。
身分はいいけれど時流に取り残されている昔気質な両親に育てられた、美しいけれど、これまた昔気質な姫君。
彼女は両親の庇護の下、悲しみも喜びもない人生をのんびり送ってきたけれど、経済的な拠り所であった両親が他界してしまい…。
刊行当時から、意思も行動力も感じられず流されて流されて悲劇を迎えるしかできなかった弱い姫君を非難する向きの感想が多い作品だそう。
単純に世の儚さを描いた結果だと思いたいのに、ラストシーンで法師が短く語る台詞にも、惰弱な姫に対する作者の皮肉かつ非難めいた視点が少なからず見え隠れしている気がする。
あまりにも厳しいので、「舞台設定当時の貴族の姫君が世間の荒波を乗り越えられなかったのはしょうがないよ」と多少は擁護してみたくなる。まあ、芥川はそれは当然知ってたはずなので無意味感がすごいけれど。
もはや今より100年以上は遡る明治期の夏目漱石作「それから」なんかでもそうなのだけど、いつの時代も、経済的自立基盤を持たないニートって、いざという時本当に弱いのね…とすごくシブい気持ちになってしまった作品。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
これは「今昔物語」由来の短編ですが、芥川の意図はというと軽々な判断を許さない気がします。はじめ、「源氏物語」に想を得た一編かと思いましたが、さにあらず。末摘花の境遇に似た逼塞ぶりではありますが、狙いが違いすぎます。そして、ラストのあまりな突き放しぶりに衝撃を受けます。ラストは芥川オリジナルのプロットです。「あれは極楽も地獄も知らぬ、腑甲斐ない女の魂でござる」なぜ、慶滋胤保にこのような言葉を言わせたのか、現代の読者には受け入れ難い男目線の宗教観を吐露させています。
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平安時代の京の都、昔気質の父母の寵愛を受けて育った、喜びも悲しみも知らない「六の宮の姫君」のうら悲しい生涯の物語・・・あの世に逝った姫君は、極楽も地獄も知らないまま浮ばれぬ魂となって、朱雀門の影ですすり泣いているという『今昔物語集』を下敷きにした芥川竜之介の短編です。
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最近平安への関心が強い
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この時代のかわいそうな女の話し・・・・とか言う読み方で終わらなければ、本当にいろいろと深く考えることの出来る小説である。
個人的に、クリスチャンとして考えるに
罪こそ犯さずとも、生きる努力をしなかった彼女は地獄にも極楽にもいけなかったのではないかと・・・・
1ミリくらい芥川龍之介の人生と似通っている部分ないかい? -
念仏は自分のために唱えるもよし、人のためにもよし。
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意思のない、あるいは極度に弱い女の話。