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感想・レビュー・書評
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これは、長崎の原爆資料そのもの。
原子力爆弾が投下されたあとの惨たらしさ。
よくもこんな化学兵器を、おんなじ人間の住む街へと投げ込むことが出来ようかと、怒りが込み上げてきた。
しかし、永井博士は自分の息子・誠一と娘・茅乃に、これからは『原子時代』だと原子力の凄さを教えている。
『今年から原子時代に入ったんだ。誠一も茅乃も原子時代の人間だ。人類は原子時代に入って幸福になるであろうか?』
永井博士の未来へと投げかけた疑問は、時代を経てもまだまだ続きそうですね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
終戦記念日を前に20年弱ぶりに再読。小6のときに平和学習で「この子を残して」と共に読み、如己堂や浦上天主堂を巡った。病理学の知識がある今改めて読むと、余計にリアル。戦争の記録。
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朝ドラ『エール』で、吉岡秀隆さんが物凄い気迫で演じておられたから。古関裕而氏の『長崎の鐘』が時代に染み入るとても素敵な曲だったから。映画の原作となった永井隆博士のこの本を突然読んでみたくなって、そして、予想以上に素晴らしい内容だった。文章は読みやすく、美しく、描かれる情景はまるで漢詩のようだった。
永井博士は被爆者でありながら、ずっと医師であり、科学者だった。"ぴかどん"の体験、見たこと、感じたこと、考えたこと。その中に原子爆弾と放射能による身体への影響の観察、分析、考察がある。被爆者の救護に当たりながら常に研究者としての視点があり、「今私たちが診察している患者こそは、医学史におけるまったく新しい資料なのである」という一文が非常に印象的だった。浦上に原爆が落とされた意味について語る部分はカトリック信者ならでは。二度と戦争を起こさないように、原子の力が殺人の道具として使われることのないように、わたしたち未来の人のために、今日の平和のために、使命感を持って書き残したのだと強く感じた。
同じ医療に携わる者として博士の精神は手本となる。この記録に"赤十字"という言葉が出てきたことは個人的に誇りに思う。出会えて良かった一冊。
201107読了。 -
自ら原子爆弾の放射線を浴び、爆風で吹き飛ばされ、血まみれになっているにも関わらず、自分より弱っている人を助け続ける医師のお話。著者は、医師として、苦しむ人を助け、死にゆく人の痛みを和らげ、医療機器や薬もなにもない状況で奮闘したり、医学研究者として放射線が人体にどのような影響を与えるのか、人は放射線にどのように向かい合っていくべきなのか、を研究する。
医師としての本分を貫こうとするその姿はとても素晴らしいが、同時に多くの仲間を失ったことの辛さ、戦争の理不尽さ、無力さを細かに描写しているシーンでは、読むのはとても辛かった。電車の中で読んでいて涙が出てくるくらいだ。
原子爆弾の残酷さ、戦争の残酷さと無意味さを僕の心にしっかりと思い出させてくれた。