メルカトルと美袋のための殺人 (集英社文庫) [Kindle]

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  • 集英社
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感想・レビュー・書評

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  • 倫理観が皆無に等しい悪辣探偵、メルカトル鮎と、それに振り回される推理作家、美袋三条の短編集。

    メルと美袋の掛け合いがとにかく面白い、そして毎回酷い目に遭う美袋もかわいそかわいい、そして作者特有の歪みと毒に満ちた構成は好みは分かれるでしょうが、自分は大好物です!

    以下各短編感想。

    「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」
    初っ端から語り手のワトソン役が「夢を見ていて、本人も気づかないまま嘘ついてました」という、アンフェアスレスレな作品。ただ作中でメルが言うように、しっかりとロジックが成り立っており、読者側にも推理しようと思えば可能なのがニクイところ。
    そして最後の残酷な真相も圧巻。

    「化粧した男の冒険」
    先程と違ってこちらはかなり正統派な作品。"化粧を隠すなら化粧の中"というのも比較的分かりやすいと思う。
    ただし、早く帰りたいからという理由で証拠を捏造するメルには苦笑い。

    「小人閑居為不善」
    小さい伏線が張り巡らされていて、それを推理パートで一気に回収していくさまはまさに"名探偵"。
    けれどラストに判明する事件のタネを撒いたのは他ならぬメルカトル本人だったことが発覚して物語に歪みを生じさせているのはまさに“銘探偵”。

    「水難」
    幽霊をガッツリ登場させておきながら、あくまで推理の小道具として使うのが斬新だと思った。
    個人的に事件そのものよりも、井戸からメルを突き落とそうとする美袋、タキシードから赤フードにユニフォームを変えるか悩んでいるメル(そもそもあれユニフォームだったのか...)
    事件を解いたあと、幽霊が鑑賞用にピッタリだからと成仏しないように警察に報告せずに事件を葬り去ろうとするメル、小説のネタに使えるからと、それを了承する美袋と見所満載でした。

    「ノスタルジア」
    メルが書いた小説の真相を当てる言わば作中作もの。
    やたら仰々しい表現を乱発したり、急に作者のとんでもないメタ発言が入ったりと、メルらしさが垣間見えて面白かった。
    「犯人を当てろ」っていう名目なのに「自殺でした」は反則だと思うんですけど...

    「彷徨える美袋」
    ただの比喩表現と思える“部屋の中には人ひとり、いや、虫一匹いない。”が最も重要な手がかりだったのは、秀逸だと思った。
    相変わらず、メルが事件のタネをばら撒いてそれを収穫する系。そして最後の美袋の心情たるや。

    「シベリア急行西へ」
    本作で一番マトモな短編。というのも、作者がデビュー前に書いたものをリメイクした作品だそうで...
    この短編だけを見れば十分面白いんだけど、やはり他と比べると地味な印象。

  • 再読
    メルカトル鮎の短編集

    今となっては麻耶雄嵩が一番すきなミステリ作家だが、
    最初はあわないなあと思って読んでなかった
    ただ、この本を読んでおもしれ~となって
    他の作品も読んでさらにのめり込んでいった

    ロジックで解いていく短編集
    加えて、騙しも盛り込まれているし
    非常に楽しい

    あえて麻耶雄嵩の他作品とも比べて書くなら
    どっかの書評の受け入れだったかもしれないけど、
    メルカトル鮎は事件に介入する探偵

    あと麻耶雄嵩なのかメルカトルなのか
    癖があるので会わない人は受け入れられないかと
    私も最初むりだったので

  • 超上から目線探偵の短編集。
    うーむ、やはり、テンポが合わない。。。

  • 2014/08/01

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著者プロフィール

1969年三重県生まれ。京都大学工学部卒業。大学では推理小説研究会に所属。在学中の91年に『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』でデビューを果たす。2011年『隻眼の少女』で第64回日本推理作家協会賞と第11回本格ミステリ大賞をダブル受賞。15年『さよなら神様』で第15回本格ミステリ大賞を受賞。

「2023年 『化石少女と七つの冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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