木曜日だった男 一つの悪夢 (光文社古典新訳文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 題名に惹かれ、よく内容を確認することもせず読みだした一冊だが、予想外に混沌とした話だった。無政府主義者たちの秘密結社に入り込み、彼らの幹部の一人「木曜日」となった刑事。なるほど、そういう話なのかと思えば次から次へとひっくり返され、これはひょっとして〇〇なのでは? と思っていたら物語はさらに奇想天外な方向へ。しかしすべては……という定まるところのない感覚は悪くないものだった。曜日のコードネームを冠した幹部たちが皆、個性的で、彼らの時に哲学的で時に馬鹿馬鹿しいやり取りはとても楽しかった。物語の背景にある思想は自分にはよく理解できなかったが、純粋に彼らの冒険をもっと見ていたかったと思った。

  • 人って無い物ねだりと言うか、天の邪鬼と言うか。幸せになろうとしない生き物ですよね。19世紀ロンドンの一画で、サイムは詩人仲間のグレゴリーと議論するうちに無政府主義の秘密結社に連れ込まれ7人の幹部のひとり「木曜日」に選ばれた。本業は警官のサイムは署内の暗い部屋の中で無政府主義の組織監視を任じられる。マークすべきはリーダーを務める巨体の老紳士「日曜日」。そこから始まる陰謀と活劇!そしてラストで全てが明らかになる。日曜日とは誰か?この話は何だ?結社の目的は、いや監視業務の目的は何だったのか?この話はよく言われるが推理小説ではないし冒険小説でもない。人間社会が悪夢にすぎないことを逆説的に語っている。新訳文庫で随分と読みやすくなりました。「地上にある物はなぜお互い同士戦うのか?」「政府の唯一の犯罪は統治してることだ」人間というものは最高権力には歯向かいたくなる、安全ならば呪いたくなる。統治された平和な社会に必ず無政府主義者はいる。そしてこの苦しみはお前らにはわからない!とただ叫ぶのだ。

  • 途中かなり怖くなったけど
    読むと、えーそうなの?
    日曜日の描き方が奇怪で奇怪で。

  • 読後時の困惑はなかなか。
    ブラウン神父もの作者として意識して読んだせいもあって、序盤はミステリ感を感じるのだが、中盤の同じ展開の繰り返しでテンションが下がり、終盤の予想外の展開(良し悪しとは関係なく)で、投げっぱなしのラスト。ある意味すごい小説。

  • 創元推理文庫で出ていた「木曜日の男」の新訳。年末に光文社古典文庫Kindleのセールが催されていて安価で入手出来た。いい世の中である。

    本書は「ブラウン神父シリーズ」で有名なチェスタソンが20世紀初頭に出した小説。
    反政府主義組織のテロ活動を未然に防ごうとする刑事の冒険譚が中心だが、各所に作家の仕掛けが施されていて、単なる冒険ミステリーではない。特に後半以降は思想小説の雰囲気であり、事前にイントロダクションが必要。
    訳者の解説が格好のガイダンスとなっている。

    「『木曜日だった男 』は 、一面に於いて 、かかる過去を見つめなおし 、昇華した作品といってもよろしいのです 。そこには青年の見たさまざまな心象風景が 、彼の脳裏を通過したさまざまな思想や懐疑や偏見が 、切実な希求が 、霊感や啓示がちりばめられています 。その物語は 、筋書たるや奇想天外 ─ ─探偵小説にして黙示録 、副題のごとく一つの悪夢である ─ ─さあ 、訳者はこれ以上のことは申しません 。解説から先に読んでしまうみなさん 、どうぞ物語をお読みください !」

    昔、「まぼろしの市街戦」という大好きな映画があったが、印象としては、その雰囲気に近い。単純な冒険ミステリーではなく、スッキリできる小説ではなく、難解な部類に入るだろう。それでも、★4つ。一読の価値はあると思う。ただし、まずは解説から読んだ方が絶対に楽しめる。

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