イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ (光文社古典新訳文庫) [Kindle]
- 光文社 (2006年10月20日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (274ページ)
感想・レビュー・書評
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2作どちらもめちゃくちゃ面白かった。『イワンイリッチの死』もうすごい。壮絶。しかもこれは他人の話や虚構の話ではない。将来必ず誰の身にも起きることなのだ。すごいわ。この洞察力、想像力、表現力。圧巻。感動した。
憎しみを煽られ苛々とする対応に自らの過ちを見つけ、それを肯定できないことによる苦痛っつーのがリアル。
『クロイツェルソナタ』中盤は苦笑せずには読み進められないほど今も根強く続く女性軽視の精神を端的に濃厚凝縮したような観念思想の一人語りが凄まじい。
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死に接することで、人は冷静になれるのかな。
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トルストイは『戦争と平和』を読んでとても良かったので本作も期待して読んだが、全く異なる主題と作風で驚いた。
『戦争と平和』執筆の30代から本作執筆の60歳前後までに、菜食主義者になるなど様々な心境の変化があったとは聞いていたが、その苦悩の過程が垣間見えた。
本書に収録の2作品は、主として共通した主題に基づいている。
それは、家庭特に結婚生活や、作者の属していた貴族社会の、見せかけの幸福と嘘である。
嘘や偽善を嫌悪するのはロシア人的な考えであり、その点のトルストイらしさは健在だと感じる。
また、『クロイツェル・ソナタ』で論じられていた伝統的結婚観と自由恋愛の議論も興味深かった。
西洋的自由主義を「堕落」と見なすところもまた理性を重んじるロシア人らしいのだが、その議論はこの時代からあったものかと思わせられた。
個人的には、『戦争と平和』の瑞々しさや壮大なスケールを思うと、30代で執筆した際の体力に対して、本作は色々な意味で60歳らしいと感じた。
自分にはまだ本作を理解するだけの経験値が足りないのかもしれない。 -
観察眼も表現力も素晴らしいのに、妙に甘ったるいセンチメンタルさがある。
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人間描写が深く面白いのだがテーマが重い。
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自分は死を恐れていない、誰もが必ず死ぬ運命にあって自分もその例外ではない、と考えている人の中で、本当にその危機に瀕したとき死を受け入れられる人はどれほどいるんだろうか
死にゆく人を目の前にして、明日は我が身と思う人はどれほどいるのか
自分がもし今ここでコロナに罹ったらこんな風に死んでいくのかもしれないと思った
面白かった! -
文豪の人間観察力、社会を見る目に圧倒される。
皮肉に、戯画的に書かれる生と死、男女が
現実の一面を鋭く抉っている。
特に「クロイツェル」は、
列車内の会話からラストまで、
引きつけられた。
小説としても、けっして古びていない。 -
後期トルストイっぽい、えぐい感じ