- Amazon.co.jp ・電子書籍 (233ページ)
感想・レビュー・書評
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かなりぶりに再読。
文章が段々としていて
読み始めは入りにくい感じもある。
自殺する始まりは覚えていたけれど
どう終わるのか忘れていたので読み直した。
死を際立たせて、生きることを
強く動機づけたイゴール医師。
条件的に幸せなベロニカは
自分のピアニストになりたいという
夢をおし殺していた。
過去の失恋にとらわらていたゼドカ。
弁護士という仕事をこなしつつも
他のやりたいことを見つけつつあるマリー。
親の期待にそぐわない
絵描きになる夢をおし殺したエドアード。
ベロニカの生きようとする若いパワーに
影響され変化していく
ヴィレット(精神病院)の狂人たち。
生きていくことは、
折り合いをつけていくことだけど
その過程は重要なのかもしれない。
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何度読み返したかわからない。一年に一度は読む。折ったページ、宝物。
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人生に絶望するほどの、神様を恨むほどの悲劇に直面しなくても、人はふと自分のこの先のただ死に向かって行く人生を見てしまうとものすごく命を絶ってしまいたくなるもので。
同じ井戸の水を飲んで狂った国民たちと、最終的にその井戸の水を飲み共に狂うことで国を収めた王の話がすごく好きだった。
私たちが当たり前に暮らしている世界は井戸の国の向こう側の世界かもしれないし、もしかすると井戸の水を飲んだ側の狂った世界なのかもしれないし、そんなことは皆が揃って狂っていれば大きな問題ではないのかもしれない。
作者も鬱の経験があったと知って、まさに精神病棟の世界とは冷たく無機質で、狂気の中にあると言うより虚無の中に時折狂気が顔を出すといったもので、再現度がやはり鬱を経験した人が書ける世界なのだと。
自分も時々何もこの世に自分の生きた跡を残せずに灰となって忘れ去られることが怖くて怖くて発狂しそうになることがある。
そういう状態が常に脳内を支配していたベロニカにとって死が救済であったことはとてもよく共感できる。ようやく救済されるはずだったのに中途半端に生きる希望を与えられることがどんなに残酷な生き地獄であるかも。
ヴィトリオルを抜け出した彼女を輝かせていたのは死の救済なのに、それが彼女を欺いていたことをいつか彼女は知ることになるのだろう。
生きる希望を一瞬でも感じた彼女はまた自殺の選択をするのだろうか。 -
パウロ・コエーリョの代表作。
死を考える多感な時期に読みたい本。
物語で触れられるこじんまりとしたリュブリャーナの景色が美しい。 -
衝撃的な題だが、おどろどろしい内容ではなく、精神病の苦しみをとてもリアルに描いたものだ。筆者も鬱の経験があるそうだが、心が引き裂かれるというんおはこのような状況なのだろうか。ユーゴスラビアという国家の崩壊になんらかの影響を受けて心を引き裂かれた人々が描かれている。社会の仕組みの変化が心へ及ぼす影響はとても大きいということのようだ。日本においては余り身につまされない内容なので、想像するほかないのだが。