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感想・レビュー・書評
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西暦922年にアラブ人ヤクート・イブン・ファドランが古代北欧人について記した手記をベースにベストセラー作家マイケル・クライトンがイマジネーションを膨らませ、一級の伝奇ロマン冒険譚にしたもの。
物語は、イブン・ファドランの手記という体裁をとっており、まえがきには手記やヴァイキングについての学術的見解が述べられており、この作品のリアリティーを高めるのに一役買っている。
物語は、バグダットの使者ヤクート・イブン・ファドランが旅の途上、ヴァイキング達と遭遇し、危機に瀕した北の王国を救うという彼らの冒険に巻き込まれるといったストーリーである。
前半は、紀行文の様な感じで展開し、イブン・ファドランが訪れた土地や民族の生活習慣が克明に描写されている。
旅が進むにつれ、彼とヴァイキング達とのやり取りを通して、ヴァイキング達の習慣・風俗・哲学・行動原理・信仰等が鮮明に描写されていく。そこで描写されているヴァイキング達は、まぎれもなく過去のある時代を生きた人間たちで、資料を読んでいるだけでは味わうことのできない小説にしかなしえない醍醐味が感じられた。
専門家ではないので、どこまでがイブン・ファドランの筆によるものでどこからがマイケル・クライトンのイマジネーションによるものかは判らないが、ヴァイキングに関する現存の資料から生きた人間としてのヴァイキング達を緻密に真に迫った形で描き出す彼の能力には、脱帽するしかない。
言いすぎかもしれないが、ヴァイキングに関する入門書を読むならこの本を読んだ方が、彼らがどんな民族であったかをリアルに知ることができるんじゃないかとも思ったりもした。
後半は、王国を危機に陥れている謎の敵”霧の怪物”達とヴァイキング達の手に汗握る戦いがメインとなる。
この謎めいた敵の設定も人類学上の興味深いifの上に成り立っており、すごく面白かった。
この小説は、まさに大人の為の一級のエンターテイメントであると言えるでしょう。
また、西洋史やヴァイキングに興味のある方にもお勧めの一冊です。詳細をみるコメント0件をすべて表示