火垂るの墓 [DVD]

監督 : 高畑勲 
  • ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4959241756848

感想・レビュー・書評

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  • 無垢で健気な幼い女の子 節子。
    なぜこの子が命を失わねばならなかったのか。

    空襲で親を失い頼った遠い親戚に疎まれた清太は
    親の貯金を頼りに、幼い妹 節子を連れ
    使われない防空壕に兄妹2人で暮らし始めます。

    清太14歳、節子4歳。
    清太は節子の世話をしながら食糧を必死で集め、
    節子は母の見様見真似をして
    甲斐甲斐しく清太の面倒を見ようとします。
    所詮おままごとなんだけどそこには確かに
    兄妹2人の家族の暮らしがありました。

    しかし社会から離脱し思うように食糧を得られず
    やがて栄養失調で短い生涯を終えるのでした。

    空襲で親を失わなかったら...
    親戚の叔母が兄妹に慈悲を持って接してたら...
    兄 清太が親戚に頭下げてたら...

    学生時代にこの作品を初めて観た時は
    なんで大人なのに兄妹に優しくしないんだ!
    かわいい節子可哀想。清太も悔しかろうに。
    辛い。辛すぎる。もう2度と観たくない。
    と思いました。

    あれから多分30年。
    最近ジブリ作品を全部見直すことを始めました。
    ところがこの作品は辛かったので
    やはりなかなか手が延びなかったのですが、
    他の作品をほとんど見てしまい、
    ついに観念して観ることにしました。

    あれ?思ってたほど憤らないぞ。辛くない?
    少しは作品に向き合えるようにはなったかな?

    結末を知ってる節子の健気さに心は痛むけど。
    清太や親戚の叔母さん、街の大人たちの心情を
    少し客観的に観れるようになってました。

    清太!節子が衰弱してるのに何意地張ってんだ!
    何なら親戚の叔母さんの気持ちも判らんくはない
    嫌味な性格だけど叔母さんも粥で我慢してたし。
    庶民と軍人家庭の格差にやっかんでたのかなとか
    でも相手は子供なんだから、
    子供を責めるなよとは思いましたけど。
    この叔母さんが特別意地悪かと言えば、
    そうとも言い切れない気がします。
    一方、清太も海軍大尉の息子として父に恥じぬ様
    一生懸命に意地を張ってた部分もあるのかな。

    なんだかんだ色々考察はしてみますが、やはり
    清太が節子との2人暮らしを決心した理由は、
    たとえ生きていけなかったとしても、
    両親がいた頃の様に思いやり支え合う家族だけで
    暮らしたかったからなのだと思います。

    やっぱり我が家はえぇなぁ。
    懐かしい景色やわぁ。

    挿入歌の「埴生の宿」はそういう歌ですね。

    ♪Home, Sweet Home(「埴生の宿」原曲意訳)
    粗末なれど 我が家にまさる所なし
    世界中探せど他に変わる所なし
    愛すべき我が家よ 我が家が一番
    我が家にまさる所なし

    この作品は親戚の叔母さんの我が身大事な態度や
    握り飯頬張りながら清太に米を売らない農家、
    得意になって火事場泥棒を繰り返す清太など
    綺麗事ではない人間の業を容赦なく描きます。

    清太が野菜泥棒をして農夫にボコボコにされて
    交番に突きだされた時の警官の粋な対応は、
    この作品の数少ない良心のひとつでした。

    事情は判った。善処するから引き取って宜しい。
    そ、そやけど...
    こんだけ殴りゃ気が済んだやろ?
    未成年に対する暴行!傷害!
    (剣を握り農夫を脅す)
    ほ、ほな、よろしゅたのんまっさ...。
    (慌てて走り去る農夫)
    今夜の空襲 福井やったらしいな。
    まあ奥で水でも一杯飲んだらどうや?

    清太はその後も空襲で空き巣の家の火事場泥棒
    を得意として食べ物を得続けます。
    親を失くしこうして生き延びた子供達が
    戦中戦後はたくさんいたのでしょうね。

    蚊帳の中に入れ兄妹で見た蛍は光を放ち終えると
    みなポトポトと落ちました。
    翌朝、節子は大量の蛍の遺骸を集め埋葬します。
    うち、おばちゃんにきいてん。
    おかあちゃんも しにはって
    おはかのなかにいてるねんて。

    なんでホタルすぐしんでしまうん?

    兄妹の母は空襲で被害にあった人達と、
    清太は駅で行き倒れた人達と、
    ひとまとめに火葬されました。
    虫も人間も、生と死が目の前にあったんですね。

    なかなかシビアな作品でしたが、
    やはり最大の魅力は節子のかわいさでしょう。
    かわいくてリアルな節子の声にやられました。
    あの絵柄、たどたどしい声、幼児の関西弁。
    純真無垢な4歳児 節子の声を担当した
    白石綾乃さん(制作当時5歳11カ月)、
    ブラボー!

    余談ですが、人形を抱える節子の姿から、
    「禁じられた遊び」の幼女ポーレットを
    連想しました。

    清太と節子は今も兄妹仲良く山の上から
    三宮の街を見ているのでした。


    ♪Home, Sweet Home(「埴生の宿」原曲意訳)
    宮殿での享楽もあろうが
    粗末なれど 我が家にまさる所なし

    そこでは天からの魅惑漂う
    世界中探せど他に変わる所なし

    愛すべき我が家よ 我が家が一番
    我が家にまさる所なし

    ♪埴生の宿(作詞:里見義)
    埴生の宿も わが宿
    玉のよそい うらやまじ
    のどかなりや 春のそら
    花はあるじ 鳥は友
    おお わが宿よ たのしとも たのもしや

    ふみよむ窓も わが窓
    瑠璃の床も うらやまじ
    きよらなりや 秋の夜半(よわ)
    月はあるじ むしは友
    おお わが窓よ
    たのしとも たのもしや

  • 終戦近い神戸は連日、B29の空襲に見舞われていた。幼い兄妹・清太と節子は混乱のさなか、母と別れ別れになった。
    清太が非常時の集合場所である国民学校へ駆けつけると、母はすでに危篤状態で間もなく息絶えてしまった。
    家を焼け出された兄妹は遠縁に当たる未亡人宅に身を寄せた。
    しかし、うまくいっていた共同生活も、生活が苦しくなるとしこりが出てきた。未亡人は学校へ行かず、防火訓練にも参加しないでぶらぶら遊んでいる二人に対して不満をぶつけるようになった。
    清太は息苦しい毎日の生活が嫌になり、ある日節子を連れて未亡人の家を出た。そして、二人はわずかの家財道具をリヤカーに積み、川辺の横穴豪へ住みついた。兄妹は水入らずで、貧しくとも楽しい生活を送ることになった。食糧は川で取れるタニシやフナ。電気もないので明りには、蛍を集めて瓶に入れていた。節子は幼心に母の死を知っており、蛍の墓を見ながら偲ぶのだった。
    しかし、楽しい生活も束の間、やがて食糧も尽き、清太は畑泥棒までやるようになった。
    ある晩、清太は畑に忍び込んだところを見つかり、農夫にさんざん殴られたあげく、警察につき出されてしまった。すぐに釈放されたものの、幼い節子の体は栄養失調のため日に日に弱っていった。
    清太は空襲に紛れて盗んだ野菜でスープを作り、節子に飲ませたが、あまり効果はなかった。
    ある日、川辺でぐったりしていた節子を清太は医者に診せたが、「薬では治らない。滋養をつけなさい」と言われただけだった。
    昭和20年の夏、日本はようやく終戦を迎えた。
    清太らの父は海軍にいたが、生還する望みは薄かった。
    清太は銀行からおろした金で食糧を買い、節子におかゆとスイカを食べさせるが、もはや口にする力も失くしていた。
    節子は静かに息をひき取り、清太は一人になったが、彼もまた駅で浮浪者とともにやがてくる死を待つだけだった。
    直木賞を受賞した野坂昭如の同名小説を高畑勲が映画化した戦争アニメ。
    戦時中の日本を舞台に、両親を亡くした幼いふたりの兄妹が懸命に生きる姿を描く。 空襲や物心両面で貧しくなり、主人公二人が追い詰められ、畑からだけでなく空襲の際に空き家になる所から泥棒するまで堕ちる展開が、リアリスティックで戦争の恐ろしさを伝えてくれる傑作アニメ映画です。

  • 2007年07月21日 15:47
    とにかく観てほしい。

    老若男女、職業問わず、政治家も教師も弁護士もコンビニ店員も……。

    これを観たら、改めて戦争について考えさせられるのではないだろうか。

    反戦アニメと言ってしまえばそれまでだが、実際にこういうこと、似たようなことは、たくさんあったのだと思う。

    あの兄妹は、どうして自らおばさんのところから離れたのか、疑問に残る部分もあるが、戦時下という状況に置かれたことがないものには、分からないことがあるのかもしれない。

    憲法9条のことや軍隊のことやら、いろいろ言われているが、

    実際、戦争になったらこういうことになるんだ。と、この「火垂るの墓」を観て肝に銘じてほしいほどである。

    あと、平和な未来のためにもぜひ学校の教材の一部として、使っていただきたい。

  • 感情移入することを許してくれない映画。

    前見た時はおばさんからもっとひどい仕打ちを受けて、清太たちは家を飛び出した記憶があった。
    しかし、今回見直して、意地悪なおばさんだけど、そこまででもないなぁと思った。
    おばさんの娘さんも「またお母さんがきつい言い方したんじゃないの?」と言っていたし、根が腐ってるわけではないんだろう。

    ただ、あそこで清太たちが感情を殺して、おばさんの家で生き延びたら、死に際の節子の
    「おから炊いたんもあるよ。おあがり。」
    と言える優しさは消えてしまう気がする。

    最後の、疎開から帰ってきてレコードを流す洋装の婦人たちの館と池を狭んである横穴の対比のシーンはもの悲しく、悔しく観た。
    以前見た時も印象に残ったシーンだ。

    空襲時の火事場泥棒で喜ぶ清太はとても汚らわしかった。
    その点、官憲の前でイモを落としておびえる節子はきれいだった。

    この映画に悪人は出てこない。
    駅の掃除をする人の「目がとろんとしてきたらもうあかん」という言葉も、自分は握り飯を食いながら「着物や金で分けてやれる食べ物はない」と言ってのける農家の人も、清太の畑泥棒を見つけてタコ殴りにして、小さい妹がいるのを知りながら警察に突き出すおじさんも、あの時代を生き抜くために懸命だっただけだろう。
    ただ、それが現代の私から見ると非情に見える。

    あの映画の中で唯一温かかったのは、泥棒として突き出された警察のおじさんの温情。
    だけど、それも清太たちのお腹を満たすことはない。

    清太は節子のためにおばさんに謝るべきだったんだろう。
    (実際の原作者は生き延びてこの話を小説のネタにまでしているのだから、多分、妹の死後、おばさんに頭を下げたのだろう。)
    自分の恥を優先させた清太は悪いのかもしれない。
    でも、そうしてしまう清太が自分の中に全くいないかと問われたら私はいないと言い切れない。
    だから、清太を責め切れない。
    これは私の弱点だと思う。

    結局、私はこの映画から何を拾うのが正しいのだろう。
    私の中に課題が多く残る映画。

    映画のラスト、現代の街を見下ろす清太たちの背中から「戦争」の問題から目を背け続けている戦後の人々への疑問を感じた。
    友人はラストのラスト、清太が街を見ていた目をふと正面に戻し、こちらを見つめてくるのがドキッとしたと言っていたので、多分、そういうメッセージ性も含まれているのだろうと思う。

    清太のドン引きポイント
    ・包帯だらけのお母さんと対面した時、体に触れないところ
    ・ドロップスはポケットに入れて持って帰るところ
    ・おばさんの家でおかわりを遠慮なく言えるところ
    ・銀行の帰り、節子に「貯金が7000円もあったぞ」と自慢していたところ
    ・おばさんにごはん別々にしようと嫌味を言われた次の日に七輪など一式揃えたところ
    ・火事場泥棒している時におひつの中のお米を自分だけガツガツ食べていたところ(お鍋と同じようにおひつごと持って帰るのかと思った)
    ・節子が死んだ後、節子のために用意した卵がゆを食べたと思われるところ(貝の箸置きに揃えられていたお箸がお鍋の中にあったので)

  • こんなに辛い話は滅多にない。しかも、こんなことが現実に起きていたわけで。これから生まれる子供達が、こんな目に遭わないようにと切に願う。

  •  観るたびに「たら・れば」を考えてしまいます。お父さんがそばにいたら、お母さんが亡くならなかったら、おばさんがふたりの面倒を見続けてくれていたら、誰かに頼れたら、そもそも戦争がなければ……。登場人物の誰もが生きるのに精一杯なだけで、誰も悪くないはずなのに、やるせない。

  • 見終わったら

  • 子供の頃は絵がただひたすら怖くて気持ち悪くて見られなかった。つい目を逸らしてしまう。それなのに、テレビでやってるとつい観てしまう魔力があった。

    私はガキのくせに、みんなが大嫌いな悪名高い西宮のおばさんに一番共感して観ていた。だけど、頭をさげることができないのではなく単に知らないだけの清太くんのこともわかったし、お母さんの着物が売られるので泣いて暴れた節子のこともわかった。こういう人は、戦時中じゃなくても、いまも街中で生きている。

    どうしようもなく落ち込むと高畑監督の映画を観る。特にやりきれない時は火垂るの墓に来る。最近はすごく優しい気持ちで見ていられる。ラストシーンで清太と節子がが寄り添って街を眺めていて、ホッとする。

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著者プロフィール

アニメーション映画監督。1935年、三重県生まれ。作品にTVシリーズ「アルプスの少女ハイジ」「赤毛のアン」など、劇場用長編「火垂るの墓」「おもひでぽろぽろ」「平成狸合戦ぽんぽこ」「ホーホケキョとなりの山田くん」「かぐや姫の物語」など。

「2014年 『かぐや姫の物語 徳間アニメ絵本34』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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