音楽嗜好症(ミュージコフィリア) (ハヤカワ文庫NF) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • そういえば、最近、ちゃんと音楽を聴いていない。

  •  ※とにかく、どんどん書く。アウトプットして行く。
     ※個人の感想です。


     人と音楽との関連は「業が深い」というか、人の偏桃体、情動的な部分に深く楔のように刺さり込んでいるのだと思った。
     面白いのは、音楽にのめり込んだ人ばかりでなく、音楽に悩まされる人々も登場するということだ。だかそれを踏まえても、最初の事例に登場する患者、落雷の衝撃から蘇生し、音楽を文字通り「渇望」するようになった医師などはなんだか好ましく思える。
     何かに夢中になる人物というのはこのしらけた空気が蔓延している世の中において羨望の的なのである。事例は少々度を逸してはいるけども。
     もちろん、ただ「夢中」になっている人々は世の中にたくさん存在する。だがそれらは大概、お手軽にドーパミンを放出させてくれる行動や物質に「嗜癖」しているだけである。タバコ、アルコール、ギャンブル、スマホ、セックス……そういったお手軽な物事、「嗜癖ビジネス」は現代に横溢している。どれもある程度まとまったお金が動き、それなりの経済圏を成立させている。
     
     音楽だって嗜癖ビジネスではないか、と思われるかもしれないが、音楽は意外と「コスパが悪い」のである。私は作詞をしたことがあるのでわかるが、日ごろから作詞の構想を手帳に書き留めておき、作詞し、作曲家とメールでやり取りし、一曲仕上げるという工程はなかなかに「手間がかかる」。加えて他者の著作権を侵害していないか、といった権利関係にも気を配らなくてはならない。ヒヤヒヤものなのである。
    単純にタバコを大々的に売り出してコンスタントに一定の収益を上げる、といった安定した嗜癖ビジネスとはわけが違うのである。

     話が逸れた。

     音楽の歴史は古く、脳の奥深い部分にトリガーをかける物事であるのには変わりないのだが、一つ誇れる部分がある。「健康を害さない」ということである。言うまでもなく、大音量で音楽を聴き続けていれば耳は傷むであろうが、そういったこととは別の話である。

     グダグダ書いたけども、『音楽嗜好症』。オススメです。

  •  脳神経外科医でエッセイストのオリヴァー・サックスが、人間が音や音楽を聴くことについて様々な事例をもとに考察を深めるエッセイ集。以前読んだ『見てしまう人々』が視覚を扱っていたので、その聴覚版という所だ。

     聴覚も視覚と同様に、正常に機能している時はその仕組みが意識されることはない。だが脳に何らかの損傷を受けるなどしてその機能が損なわれた人や、逆に異常亢進した人の事例を分析することで、その本質が見えてくる。

     視覚と同様に聴覚の場合も、耳から入ってきた音がそのまま意識に上ってくるわけではない。目に映る物の解釈が意識以前に行われているように、音の解釈もまた意識以前に解析されている。だから、同じ音でも脳の状態が変わると異なって聞こえるようになる。

     音楽がずっと頭の中で鳴り続けるようになった人、歌いながらでないと行動できない人、音楽を演奏する時だけ尊厳を取り戻す人など、音楽に影響を受けた様々な患者が登場する。どうやら音楽は言語以前に生まれた感覚で、言語を失っても残る原始的な機能らしい。だから動物でも音楽に反応する場合がある。

     著者自身の経験も数多く紹介されているが、羨ましくなるほど多くの経験をされているようだ。書籍全体を通じて何かを明らかにしているわけではないので、あくまでエッセイ集として面白い本だが、読む価値はあった。

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