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感想・レビュー・書評
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そういえば、最近、ちゃんと音楽を聴いていない。
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脳神経外科医でエッセイストのオリヴァー・サックスが、人間が音や音楽を聴くことについて様々な事例をもとに考察を深めるエッセイ集。以前読んだ『見てしまう人々』が視覚を扱っていたので、その聴覚版という所だ。
聴覚も視覚と同様に、正常に機能している時はその仕組みが意識されることはない。だが脳に何らかの損傷を受けるなどしてその機能が損なわれた人や、逆に異常亢進した人の事例を分析することで、その本質が見えてくる。
視覚と同様に聴覚の場合も、耳から入ってきた音がそのまま意識に上ってくるわけではない。目に映る物の解釈が意識以前に行われているように、音の解釈もまた意識以前に解析されている。だから、同じ音でも脳の状態が変わると異なって聞こえるようになる。
音楽がずっと頭の中で鳴り続けるようになった人、歌いながらでないと行動できない人、音楽を演奏する時だけ尊厳を取り戻す人など、音楽に影響を受けた様々な患者が登場する。どうやら音楽は言語以前に生まれた感覚で、言語を失っても残る原始的な機能らしい。だから動物でも音楽に反応する場合がある。
著者自身の経験も数多く紹介されているが、羨ましくなるほど多くの経験をされているようだ。書籍全体を通じて何かを明らかにしているわけではないので、あくまでエッセイ集として面白い本だが、読む価値はあった。
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