公正的戦闘規範 (ハヤカワ文庫JA) [Kindle]

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  • 早川書房
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感想・レビュー・書評

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  • 「公正的戦闘規範」(藤井太洋)を読んだ。
いつものジェントルマンライクなエンジニアではなく荒ぶるソルジャーな藤井太洋さんが阿修羅のごとくその筆を振るう短篇集。
『公正的戦闘規範』が圧倒的な存在感を放つ。
トム・クランシーばりのリアルなポリティカル・ドラマと直球ど真中のSFドラマの合体は、ほんのちょっと先の未来の姿をなんの違和感もなく映し出す。
とはいうものの人類のその先を見つめる藤井太洋さんの視線はやっぱり優しいな。

  • IT技術をテーマにしたSF短編集.藤井氏の作品を読むのは2作目.以前読んだ「ハローワールド」と違い作品相互のつながりは少なくとも私には分からなかった.
    どれも技術進展によるリスクを煽る内容ではなく,想像もしなかった形での効率化や配分の適正化がなされることで,人類の文化や生活が向上するという,現実に即しつつも楽観的な立場が見えるのが,個人的には好き.「コラボレーション」で自律性を得たプログラムに高沢が人格を認める感覚もよく理解できた.「第二内戦」の分断されたアメリカや,「公正的戦闘規範」のウイグルの対立という辺りは,リアルに描かれていて,緊張感もあった.

  • どれも、今後ありえそうな技術で、興味深かった。

    それぞれ面白かったが、その中でも「公正的戦闘規範」では、今後の戦争やドローンについて考えさせられ、「第二内戦」は世界観が面白いなと思った。

    公正的戦闘規範では人道的な無人兵器という言葉があり、人道的になると戦争は非人道的になるという皮肉を感じた。

    第二内戦ではAIに制御された無駄のない最適な世界を感じた。イメージとして、原子や分子の励起していない、安定状態という感じがした。
     自然現象はエネルギーの低い状態を安定といい、その状態が最適である。
     人工的な現象を人工的に最適化に導くのがAIなのかなと思った。

    人にはその最適化の筋道がわからないから、AIに不信感を持ち、あいまいな理解として意思を持っていると感じるのだろうかと思った。

  • 著者の作品はディティールが作り込まれていて、リアリティをアップさせている。今回は、短編集になっていて、タイトルになったエピソードは、言葉遊びにもなっていて小洒落ている。毎回、楽しませて貰えて嬉しい。

  • 第18代日本SF作家クラブ会長 藤井太洋先生の短編集。

    もともとハイレベルなITエンジニアだった人が書いているだけあって、情報技術を作中設定に活かすのが抜群にうまい。ひところよくあった行きすぎた科学技術に警鐘を鳴らす系の話ではなく、現在の情報技術が発展したら社会がどのように進歩するのか、読者にも理解できる形で示したのが好印象。情報技術に対する深い造詣と敬愛がどの話にも通底している。

    特に印象的だったのは「コラボレーション」。
    AIがプログラム修復に試行錯誤するさまをいじましいと表現するのが示唆的で、これは実行しても無駄だろうと思われるパターンまで含めて試行を繰り返すAIの姿と、開発に行き詰まったエンジニアが一縷の望みをかけて期待度の低いパターンを試す姿とにどれほどの違いがあるだろうかと思わされた。
    今まで無機質に感じられていたAIという存在に情が感じられるようになるのは、筆者の力量の確かさを示すものだろう。

  • 情報系のエンジニアが書いたんだなとしみじみ思わせる納得の文章力。
    ドローンから対人兵器に戻る未来って激アツですね

    多分同業だからからなのか、可逆の量子アルゴリズムや三位一体の軍事ユニット、自律学習するアルゴリズムなど話より技術のアイディアの方が印象に残った気がする。

  • 公正的戦闘規範 (ハヤカワ文庫JA)

  • SFではあるが、各話かなり乖離した内容でも引き締まった描写のできる著者の懐の深さ・博識に関心した

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著者プロフィール

藤井大洋:1971年鹿児島県奄美大島生まれ。小説家、SF作家。国際基督教大学中退。第18代日本SF作家クラブ会長。同クラブの社団法人化を牽引、SF振興に役立つ事業の実現に燃える。処女作『Gene Mapper』をセルフパブリッシングし、注目を集める。その後、早川書房より代表作『Gene Mapper -full build-』『オービタル・クラウド』(日本SF大賞受賞)等を出版。

「2019年 『AIが書いた小説は面白い?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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