- Amazon.co.jp ・電子書籍 (288ページ)
感想・レビュー・書評
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「公正的戦闘規範」(藤井太洋)を読んだ。 いつものジェントルマンライクなエンジニアではなく荒ぶるソルジャーな藤井太洋さんが阿修羅のごとくその筆を振るう短篇集。 『公正的戦闘規範』が圧倒的な存在感を放つ。 トム・クランシーばりのリアルなポリティカル・ドラマと直球ど真中のSFドラマの合体は、ほんのちょっと先の未来の姿をなんの違和感もなく映し出す。 とはいうものの人類のその先を見つめる藤井太洋さんの視線はやっぱり優しいな。
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著者の作品はディティールが作り込まれていて、リアリティをアップさせている。今回は、短編集になっていて、タイトルになったエピソードは、言葉遊びにもなっていて小洒落ている。毎回、楽しませて貰えて嬉しい。
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第18代日本SF作家クラブ会長 藤井太洋先生の短編集。
もともとハイレベルなITエンジニアだった人が書いているだけあって、情報技術を作中設定に活かすのが抜群にうまい。ひところよくあった行きすぎた科学技術に警鐘を鳴らす系の話ではなく、現在の情報技術が発展したら社会がどのように進歩するのか、読者にも理解できる形で示したのが好印象。情報技術に対する深い造詣と敬愛がどの話にも通底している。
特に印象的だったのは「コラボレーション」。
AIがプログラム修復に試行錯誤するさまをいじましいと表現するのが示唆的で、これは実行しても無駄だろうと思われるパターンまで含めて試行を繰り返すAIの姿と、開発に行き詰まったエンジニアが一縷の望みをかけて期待度の低いパターンを試す姿とにどれほどの違いがあるだろうかと思わされた。
今まで無機質に感じられていたAIという存在に情が感じられるようになるのは、筆者の力量の確かさを示すものだろう。 -
公正的戦闘規範 (ハヤカワ文庫JA)
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SFではあるが、各話かなり乖離した内容でも引き締まった描写のできる著者の懐の深さ・博識に関心した