終わった人 (講談社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • オーディブルにて

    あとがきにて、新聞で連載された小説だったと知り、納得。すごく連載らしいなーと思った。ドラマみたいというか。物語の内容とか温度がその時によって全然違うんだもの。

  • 面白いとかではなく、示唆に富んでいるという意味で星5

    「思い出と戦っても勝てない」という言葉が印象的だった。
    過去に縋ってしまうかもしれないけど、過去と今を比較して悲しくなるのは馬鹿馬鹿しい。
    過去は美化されるもの。

    結婚生活は、楽しいばかりでは無い、夫婦も人間だから。悲しいけど。
    夫婦は一切のことで依存するべきでは無いと再認識した。結婚は独立した人間が共同生活を送ることで、助け合いではあっても、頼り合いであってはならない。

    良い時もあれば、悪い時もあるのが人生で、その良し悪しは運で決まることが多い。
    いい方向に進むためにできることは、良い人間関係を作ることなんだろうと思う。
    調子が良くても「今はそういう時」と思って謙虚でいたい。

    人が何かに辛く当たるのは、それとは別のことでうまく行ってない時みたい。
    何かがうまく行ってる時は、他のことに寛容になれる。

    多分、この本が一番伝えたいのは、人の価値を肩書とか収入で測ろうとするのは、そういう社会に毒されているだけで、基準としてどうなの?ってところな気がする。
    その肩書を「定年」という形で失った時に横並びになる基準って何の意味があるんだろう、そんな何も残らない虚像を追った人生にどれだけ価値があるのかとも思うし、それでも当時は満足感を得られたのも事実だろうとも思う。
    価値の基準に答えは無いけど、最後に満足したら正解だろうか?

    他人の基準を盲目的に取り入れるのは止めたい。

    人は60くらいで死んだ方が皆ハッピーなんじゃないか

  • 将来を嘱望されたエリートが、少人数の子会社で定年を迎えた。
    俺はもう終わった人なのか。
    仕事を諦められない、でもプライドや見栄が邪魔をして踏み出せないことが多過ぎる。

    昼間のジムやハローワーク、文学講座、淡い恋や顧問から社長へ、そして最後は故郷へ。
    ずっとどうなるかヒヤヒヤしながら読んだけど、倒産のあたりは辛かった…。
    帰郷後の人生が良いものであればいいのだけど。

    毎日仕事やら育児やらでのんびりした生活に羨ましい気持ちがあったけど、やはり生きがいというものは大切ね。

  • すごくリアルな60代男性といった感じ。
    こういう人いるいるって思いました。
    気弱そうというか普段は別にそんなこと思ってないんだけどねとか予防線を張りながらプライドが高く、こっちもこっちですごく気を遣う感じの男性。職場にいました。
    こういうタイプの男性の心情を知れて、あと先が読めない展開でよかったのですが
    若い女性をベッドに誘い込めなかった時の、あのこっちから願い下げだというダサい感じが生理的に無理でした。
    ただ恋愛なんて二の次とかいいながらすぐそっちに引っ張られ、相談を聞いていても頭は夜のことしか考えてないのをリアルに描き切ってるのがすごくおもしろかったです。
    気色悪いなー、むかつくなーって思いながら、登場人物すべてがリアルで、いい小説でした、作品として大満足です。

  • 出世争いに負けて最後は納得のいかない形で定年を迎えた主人公
    勤め人はいつかは「終わる」事実を受け入れられず
    あがき、もういちど返り咲き、そして完膚なきまでに叩きのめされる

    すべてを失った主人公は故郷へ戻ってゆく。。。

    プライドの高い元エリートほど
    手におえないものはないなぁ。
    でも仕事に打ち込んだ人ほど「終わった」を受け入れられないものなんだろな

  • 自分にも当てはまると思ったのは、自分が仕事に打ち込めるのは、妻が色々と我慢してくれているおかげだということだ。

    夫婦仲がずっと良いところは本当にあるのか?と思いたくなるくらい、千草や壮介の両方の気持ちに共感した。
    そして、壮介は我武者羅に頑張って東大の法科を卒業後、大手銀行で活躍した過去があるからこそ、周りの親戚、友人もある程度の尊敬の念を抱いているのかなとも思った。

    自分が一生懸命頑張ろうとすると、何かを犠牲にしなければならないのかなと考えさせられた。犠牲にするのは夫婦仲なのか、友人関係なのか、それとも出世コース、会社内での利害関係?
    全てを上手くいくように立ち回るのはなかなか難しい気がする。

    この本を読んだ後は、やはり夫婦仲(1番身近にいる人)を大切にした方が良さそうだということ。時間は巻き戻らない。「あの時、こうしておけば良かった…!」と思っても後の祭りで、後からどんだけ妻のことを労っても手遅れだということ。

  • 勤め人には遅かれ早かれ「終わる」時が来る。
    肩書がなくなり、給料ももらえなくなる。
    自分の存在価値が揺らぐのは仕方ないかな。
    人生100年。ある年齢になったら「終わった」あとについて真剣に考えないとね。

  • 定年退職した元銀行エリートマンが、その後の人生を悩みながら進んでいく物語。リアルさが凄くて面白かった。

  • P22
    だが、結局、名なんて刻めないものだ。それはすぐに忘れられる。

    P297
    世の中は、個人の能力だけで芽が出たり、渡って行けたりするところではない。

    P463
    「~すたども、人の行きつくとこは大差ねのす。~」

  • 60代は難しい。お終いにしなければならないけれど、そうもいかない、そうなりたくもない。
    まだまだ気力も体力も十分あるのだ。
    仕事も家庭も自身の生活も変化が求められ、急速に順応しなければならないが、人間そんなに簡単ではない。
    もがきながらだんだんと様々なことに整理をつけて、自分を納得させ終わりに向かっていくことが必要なのだ。
    一人の人間を通して、60代という節目を迎えた人間の、苦悩や葛藤を垣間見させてもらった。

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著者プロフィール

1948年秋田市生まれの東京育ち。武蔵野美術大学卒業。1988年脚本家としてデビュー。テレビドラマの脚本に「ひらり」(1993年第1回橋田壽賀子賞)、「毛利元就」(1997年NHK大河ドラマ)、「塀の中の中学校」(2011年第51回モンテカルロテレビ祭テレビフィルム部門最優秀作品賞およびモナコ赤十字賞)、「小さな神たちの祭り」(2021年アジアテレビジョンアワード最優秀作品賞)など多数。1995年には日本作詩大賞(唄:小林旭/腕に虹だけ)に入賞するなど幅広く活躍し、著書に映画化された小説『終わった人』や『すぐ死ぬんだから』『老害の人』、エッセイ『別れてよかった』など多数がある。元横綱審議委員で、2003年に大相撲研究のため東北大学大学院入学、2006年修了。その後も研究を続けている。2019年、旭日双光章受章。

「2023年 『今度生まれたら』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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