- Amazon.co.jp ・電子書籍 (238ページ)
感想・レビュー・書評
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青い壁、床とイスはふんわりした白。そこに入れば大空を飛んだ気分にさせてくれる美容室。
“あおぞら美容室”と名付けられたそれは罪を犯した受刑者が刑務所内で資格をとり、出所してまた社会に戻るためのプログラムの一つなのであった。
一般の人も格安で利用でき、数は少ないが常連さんもちらほらと。
そんなところへ6人の主人公達が訪れる。それぞれの思いを抱えながらも美容室にいくと何故か気持ちが解れて心が軽くなっていく。
切ってくれる人はそれなりの罪を犯したからこそ、そこにいるわけなのだが…。
刑務所というイメージとの対比がとても面白かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
作者の表現がすごく素敵だった。他の作品も読んでみたい。
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センセーショナルな事件やそれにまつわる本当や嘘の話の裏側に隠されてしまう、1人ひとりの物語の存在に気づかされる。
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コミックを読んでからの原作読みです。こちらの方が話にボリュームがあり楽しめましたし、何よりも姉が塀の中の美容室にいる妹を訪ねていくシーンは、漫画でも読んでいたけど、原作の方がぐぐって来ました。各エピソードもそれぞれ若い人では中学生から70歳くらいまでの女性が髪を切りに来るのですが、それぞれに人生がある(あたりまえだけど(^^;)、髪を切る人生があるって言ったらいいのかな。気がつくと受刑者が社会に出て、美容師の仕事で幸せになってほしいって願いながら読んでいました。
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特別な美容室に関わる女性たちのアレコレ連作。
髪切るって、儀式な時もあるのね。
実際にあるようですよ、美容室。 -
家族であっても、行動を完全に把握できないし、自分の家族が何かの拍子に犯罪を犯してしまう可能性はゼロではない。犯罪は悪だが、誰か寄り添うとしたらそれはやはり家族でしかない。
前科のある人とはなるべく関わりたくないとは思う。ただ、再起を目指す人にチャンスがあってもいいと思うし、それを受け入れられるような人間になれたらな、と思った。 -
金原みわ「さいはて紀行」で女子刑務所に、懲役中の人が切ってくれる一般の人も切ってもらえる美容室に、髪を切りに行く一編があったのを思い起こして、手に取る。取材で、素敵な美容室があると勧められて、友達との話の中から興味本位で、ヘアモデルを辞める最後の一回で、美容技術の指導教官として、そして美容師の姉として。さまざまな立場で訪れ、気づきを得たり、前を向くきっかけを得たりのストーリーが語られていく連作短編。井の中の蛙、されど空の青さを知る、という言葉は初めて聴いた。あおぞら美容室と名付けられ、内装がまるで空の中にいるように塗られたきっかけとして。わかるかもしれないし、わからないかもしれない。この先迷惑をかけるかもしれないし、かけられるかもしれない。それがわかっただけでも収穫だし、止まることにも一歩踏み出すことの理由にもなる。そんなダイアローグがあったシーンがグッとくる。