「承認欲求」の呪縛(新潮新書) [Kindle]

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  • 承認欲求は誰しもが呪縛されやすく、それに陥らないように事例をもとにして解説していて、なるほどなと感じました。自分が抱いていた承認欲求が、言語化されていて良かったです。
    最後は呪縛されないよう制御する方法も解説してあり、納得できるものでした。
    個人的には中盤、引用が多く少し退屈な箇所もありました。

  • 承認欲求の呪縛は、「認知された期待」、「自己効力感」、「問題の重要性」という3つの要素からかかってしまう。期待と自己効力感の差が大きくなればなるほど、呪縛にかかる可能性が高くなる。

    この本には組織として承認欲求の呪縛にかからないようにすることについても書いていたが、個人として対処するには、自己効力感を高めるため、目標やキャリアを同僚と競合しないようにし、オンリーワンを目指すことが大切だと学んだ。また、挫折から立ち直りやすくするために、失敗の経験を積むことを大切であり、「問題の重要性」を小さくするためには、失敗を恐れずに挑戦しながら楽しんで取り組むことや、目の前の目標より先の目標を設定することが重要であるとわかった。

    よって、この本を読んで、目の前の仕事の達成は困難に現状感じているが、やれるところまでは取り組んで、できなかったらそのときはそのときなのかなと思った。たとえうまく行かなくても、平社員でも生きていけるし、会社への依存度を下げる、自己効力感を高めるために、副業をやって収入を増やして行けばいいかなとも感じた。

  • 「承認欲求」と「ほめる」と言えばよく聞く話だし、特にほめる事、認めることは万能薬の如き力を持つと思われている。

    実際、ほめたり期待されることで、頑張ることが出来たり、パフォーマンスが上がることは大きい。

    そしてなにより「承認欲求」というのは成熟した文明社会では何よりも人々が欲しているモノになる。

    だが、それは本当に良い事ばかりか?

    という疑問を持ち出しているのが本書。

    承認欲求という切り口で、ほめることから対極のパワハラや支配的マネジメントにも焦点を当てているのは見事。


    分かりやすく、ほめるばかりによる弊害は、いわゆるバーンアウト、不正や行き過ぎた行動などにつながることがある。

    これを成立たらしめるのは
    ・認知された期待によるプレッシャー
    ・低い自己効力感(自分は出来るという自信)
    ・承認の重要性

    特に面白いのが承認の重要性。
    簡潔に言うと、その場で承認が得られなくても別にどうでもいい。他に居場所がある感。

    こういうふうにある集団に依存しすぎないことは大事だと思う。

    いいなと思った考え

    ・成長途上の子供は周りからの反応を得なければ自分自身を知ることはできない

    ・期待にこたえなければいけない というプレッシャーが追い込んでくる

    ・承認によって得たものは承認を失ったら失う

    ・ストックホルム症候群は、クズな人間相手でも承認を失いたくない現れ

    ・引きこもりも過労死者も同じく至極真面目な人たち

    ・もっと認められたいという積極的意欲より評価を落としたくないという消極的意欲が勝つ

    ・ほめるときは具体的に、潜在能力もほめる

    ・プレッシャーを感じた時は「ほかに大事なものがある」「逃げ場がある」と思う事

    ・SNSに依存するひとこそ現実世界に逃げ道を

  • 承認欲求の良さは他の本で書かれていたので、もっと多角的に見たいと思い、ネガティブな分析もある この本を選んでみました。
    すると、とても深く、また、現在の社会問題にも触れ、面白い本でした。

    第一章では、「承認欲求」が人間にとって どのくらい強い力で人を動かすかを説明しています。
    ・内発的モチベーションのアップ
    モチベーションには、「外発的モチベーション(お金、もの、役職ポスト」と「内発的モチベーション(そのものが楽しい、挑戦心をかき立てるなど))があり、上司に認められたり、褒められたり、肯定されると、内発的モチベーションが高まるという研究結果が紹介されています。
    ・自己効力感のアップ
    「やればできる」という自信(自己効力感)を高めるには周囲からの承認が有効との調査結果が紹介されています。
    ・ES(Employee Satisfaction)とCS(Customer Satisfaction)
    働く人の満足度(ES)は、顧客の満足度(CS)に影響する

    第二章では、
    ・「認められない」が「認められねば」に変わり、期待の重責により退職したり、”ホメホメ詐欺”で高価なものを買ってしまったり、SNSにみんなから認められるような書き込みのプレッシャーを感じたりする 本の題名になっている「承認欲求の呪縛」について書かれています。
    子育てに関連する部分としては、子供は大人との間にはっきりとした上下関係が存在するため、より一層、とらわれてしまうことがある話があります。
    期待に応えなければと精神的に負担になったり、ほめられる事を意識しすぎて「指示待ち」になったりします。承認を得たい欲求よりも、失うことへの怖さへの言及もありました。「明るい元気な子」「頼りになる姉」といった評価をもらうキャラになると、助けを求めにくい状況になる背景です。

    一文、ぞっとしたのが、ここ。
    「一般にほめるのはよくて叱るのは危険だといわれるが、受け止め方によっては叱るより、むしろほめるほうが危険な場合もある。叱られたら反発する子も、ほめられたら否定することが難しいからだ。」
    褒め方をいろいろ聞いて、子供と話す時に対応している際に、モヤモヤしていたところを、ずばっと書かれた感じです。子供を追い詰めないようにしないと・・・

    私は、承認欲求が低いと書きましたが、そんな私にも、当てはまる部分がありました。
    「セルフハンディキャッピング」という 過大な評価を受けないように、わざと自己評価を下げようとする行為です。例えば、試合前に体調が悪いふりをしたり、思春期のころに「ワル」ぶったりして、わざと大人に反抗しているような行動です。この行動は他社に期待を抱かせない結果となります
    大学時代も、社会人時代も「ドジなキャラ」でいました。実際に、おっちょこちょいなのは確かなのですが、それを隠す事なく、どちらかというと そのまま出して、「だめだねぇ、私」というままで生きています。
    サークルの部長をしたり、プロジェクトリーダーをしたり、リーダーの役割をした事もありますが、この「ドジなキャラ」のままでした。すると、周りからのプレッシャーは低くなるし、また、周囲からの助けも多く、メンバーが自立して動いてくれるという事も経験していたからです。
    私は、「承認される」環境を 自分を下げて、避けていたんだなぁと、この本を読んでわかりました。

    また、鬱やひきこもりになる人は、メランコリー親和型という 几帳面で秩序を重んじる人が多く、「期待に応えなければ」というプレッシャーを感じやすいようです。
    この性格は、変わった人ではなく、「ごく平凡な普通の日本人」に多くみられる性格であり、よく日本人として高い評価を受けている という指摘もあります。

    第三章では、 電通の話や、企業の不祥事、スポーツ界のパワハラなど、社会の様々なケースで分析をしています。

    第四章では、どう承認欲求の呪縛から逃れるかという事が書かれています。
    適度にプレッシャーから逃れ指すためのリーダーの配慮や、希望降格制度を設ける事、
    また、「もう一つの世界」を持つ事などでした。

    まだ、消化しきれていませんが、「自己効力感」を高める事ともありました。そのためには、「やればできるという気持ちにさせること」・・・って、親からすると、それを褒めて伸ばそうとすると、承認欲求が強くなりすぎるし・・・
    ここは、もう少し、考えていきたいところです。

    そして、帝京大ラクブー部、岩出監督の チームの目標は大学選手権の連覇ではなく「楽しむ 」を追求しているというインタビューの紹介
    これは、最近、私も知った「フロー状態」です。
    何かを達成しようとするとプレッシャーになりますが、「楽しもう」としていると、その手前で 達成できているって、いいですね。

    承認欲求ばかりの本でしたが、これを読んで、理解が深まりました。
    子供への対応にすぐ適応しようとする時、たいてい、うまく できないので、しばらくは、心の中で反芻しようと思います。

  • 気軽に読める分量ながら中身は濃い。承認欲求の呪縛に気をつけようと思った。
     まずは自分の失敗をおおらかに受け入れオープンにし、周囲からの期待による圧力を少しでも和らげること。
     専門性を高めることで自分への信頼感を培うこと。
     外に世界を持つことで、閉ざされた社会の価値観に囚われにくくすること。
     どうやらゴールは無さそうなので、気楽に始めていこうと思った。


  • 「「自己効力感」とは環境を効果的に支配できているという感覚であり(A. Bandura 1997)、わかりやすくいえば、「やればできる」という自信を意味する。」

    「人は認められれば認められるほど、それにとらわれるようになる。世間から認められたい、評価されたいと思い続けてきた人が念願叶って認められたとたん、一転して承認の重圧に苦しむ。」

    「自己効力感、すなわち「やればできる」という自信をもたらす最大の要因は成功体験である。実際にやってみて、成功したら自信がつく。」

    「たとえ承認されることをそれほど求めていなくても、いったん承認されたらそれを手放すことは難しいのである。ちなみに、それは承認にかぎったことではなく、多くの事柄に当てはまる一種の法則というか、原理である。」

    「したがって「認知された期待」「自己効力感」「問題の重要性」を呪縛の三要素と呼ぶことができる。定式化すると、(認知された期待-自己効力感)×問題の重要性=プレッシャーの大きさ、すなわち「承認欲求の呪縛」の強さである。」

    「もっと認められたい、注目されたいという積極的な承認欲求よりも、いったん獲得した評価や評判を失いたくないという消極的な承認欲求のほうが強い執着をもたらすこと。とりわけ苦労して獲得した評価や評判ほど、執着も強く、ときには正義感や倫理感さえ抑圧してしまうことを物語っている。」

    「結論として、どこを、どのようにほめたらよいのか?  その答えは、具体的な根拠を示しながら潜在能力をほめることである。潜在能力をほめることは、「やればできる」という自信をつける。すなわち自己効力感に直接働きかけることを意味する。すでに述べたように自己効力感が高まれば挑戦意欲がわく。かりに成果があがらなくても、潜在能力に自信があれば、成果があがらないのは努力の質か量に問題があるからだと受け止められる。そして、改善への努力を促すことができる。」

  • 承認欲求の原因は、「認知された期待」「自己効力感」「問題の重要性」の三つの要素の絡み合いとのことである。

  • 論点として大変興味深く参考になるところが多かった。
    研究調査結果による考察なのか、個人的な所感なのかが判然としないところが多い点は気になった。

  • 目的 承認欲求の仕組みについて理解を深める

    メモ 成功するとみんな承認欲求の罠にはまる、ぐれたりするのも承認欲求

    行動 まずは家庭を心理的安全な場所であることを継続する、周りに期待しない


    承知欲求の罠にハマっている若い人を支援したい。

  • 他人は鏡

  • 好奇心は猫をも殺す、と聞いたことがあるが、承認欲求はいとも容易く人命を奪うようだ。多様な事案の原因が承認欲求にあることを説得力ある展開で教えてくれた。
    そして、不幸な事案の発生を少しでも少なくさせるための貴重な提案もしている。しかし、日本では難しいだろうと思う。共同体型組織には大きなメリットもあるだろう。本書での提案がそのメリットを大きく越えない限り、採用されるのは難しいと思う。
    この本を手に取ったのは、周りに承認欲求の強い人たちがいて、対応にほとほと疲れていたため、この本の表紙が光って見えたからだった。よく考えれば、他人の承認欲求から解放されるより、自分が承認欲求からいかにして解放されるかが書いてあることが明らかだ。他人の承認欲求に付き合うことの辛さ煩わしさにうんざりしていて、表題を読み誤った。筆者が悪いのではなく、私が悪いのだ。
    簡単に言えば、世の中、かまってちゃんが激増しているのだ。

  • 承認欲求のメリット、デメリットについて様々な事例を交えつつ紹介している本。
    世間で話題となったスキャンダルなどの問題がなぜ起こったが、承認欲求という目線から読み解いていくのが面白い。
    ただ、それに対する解決策、が自分にはあまりしっくりこなかった。
    承認欲求とはどういうものなのか、ということを知る目的ではおすすめ。

  • 承認欲求という誰にでもある欲求を良い面・悪い面で詳細に解説した良書。現在、様々な組織の歪みの一原因に「承認欲求」なっていると説明している。褒める・賞讃することの難しさ、組織に属しているがゆえに起こる不祥事のメカニズムなど、諸刃の剣である承認欲求の素晴らしさと怖さを教えてくれる作品。

  • 『「承認欲求」の呪縛』(太田肇著/新潮社)vol.491
    https://shirayu.com/blog/topstory/idea/7780.html

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著者プロフィール

同志社大学政策学部教授

「2022年 『何もしないほうが得な日本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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