Blue(ブルー) [Kindle]

著者 :
  • 光文社
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感想・レビュー・書評

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  • ブルーは たった14歳で殺人を犯してしまうのですが
    周りの無責任な大人に反して
    とても純な心を持つ 健気さがあります
    ですから 罪を憎んでも
    ブルーを憎めない
    それは ブルーを追うことになる
    2代の刑事にも伝わっています
    戸籍がなければ 存在しない・・・
    紙切れ一枚が大事なのか
    目の前の人間は一体何なのか
    考えさせられる 小説でした

  • すらすら読め、面白い。ただ話の結論が先に分かってしまう作品作りになっている点、少し気になる。主人公の最後があまりにあっけなく物足りさを感じてしまう。

  • 平成30年間の文化・風俗を俯瞰しながら、児童虐待、子供の貧困、無戸籍児、モンスターペアレント、外国人の低賃金労働など、格差社会の生んだ闇をテーマとした作品。それだけに基調が重く、前半部分は結構読み進めるのがしんどかったけど、後半加速してくる。無戸籍児であるブルーへ語りかける文の語り手がずっと分からなかったけれど、最後に繋がった時に視点の在り処が分かって霧が晴れる。平成を生きたブルーが残したものが、令和の先にも生きづいていることで、その生に意味を与えている点が救い。

  • 固有名詞付きで平成を書き上げているのが何よりの特徴と言える。貧困等のテーマと共に時代が自分の記憶として紡がれる感覚は新しいものだった。

  • もっと長編で読みたかった。
    登場人物一人一人で一冊になるのでは?

  • 無戸籍児として生まれた少年・青(ブルー)の平成元年から終わりまでの半生を、複数の視点人物から語り起こすクライムノベル。
    援助交際や貧困ビジネス、不法就労者など、平成のトピックになった社会問題を交えて綴られるが、特にSNSを介した児童ポルノの描写がキツかった。ネット隠語やオプションなど、実際そうやって出回ってるんだろうなと思わせるリアルさがある。
    青は殺人者だが、彼がいたこと救われた人間も少なからず存在する。そして彼の人生は悲惨だが、ただ悲惨なだけの物語で終わらせたくない。英語のブルーは憂鬱も表すが、青の人生には確かに美しい瞬間も存在したのだから。
    たとえばどこまでも青く透き通る運命の湖の写真、たとえばベランダから見上げた花火。
    後にそれが本人を苦しめる罰となっても、彼が愛し、彼を愛する人間との安らぎの時間があったなら、私はそれを否定したくない。彼の物語を「ひどい」の一言で片付けてしまうのは哀しすぎるから。
    ブルーは確かに人殺しだが、終盤ある人物へあてた魂の謝罪には涙がこみ上げてきた。
    母親でも誰でもなく、あの人物へ真っ先に詫びたことこそ、彼が本来は純粋な人物であり、真から贖罪の気持ちを持っていた事実を示してやるせない。
    親と子。斥力と引力。ちゃんと手放すということ。
    成人した子供の無心を拒みきれず金を渡し続ける老親もいれば、故郷の子供を想い虐待を見過ごすのを是としなかったベトナム人女性もいる。
    親子のかたちは様々だが、子どもを束縛し利用する親の醜悪さや矮小さが描かれる中、ちゃんと手放す勇気を持てたことはもっと評価されていいはずだ。

    作中たびたび流行歌の歌詞が挿入されるのだが、白けるか否かは好みによるところ。

  • 幼児を含む一家4人が惨殺された青梅事件。その現場となった家の風呂場で心臓麻痺で死んでいた引きこもりの次女が犯人とされ事件は解決した。
    しかし、次女は実は15年前に家出をしており、子を産んでいた。
    その子の名は、ブルー。
    ブルーはそれっきり姿を消した。
    そして15年後、平成が終わるころ。
    男女の死体が空室のアパートで発見された。
    その二人は子どもたちをネットカフェに置き去りにしていた。
    保護された幼い兄妹のうち兄は体中に虐待された痕があった。
    青梅事件の捜査員の一人であり、結婚退職・出産・離婚を経て現場に復帰していた刑事・綾乃は、二つの事件の相似に気がつく。
    綾乃にもまた、自分の産んだ子を愛せず親権を手放した過去があり、自責の念に悩まされていた。

    児童虐待、そして暴力の連鎖。
    子を愛せない親、親を憎む子。
    ブラジルやベトナムから日本に出稼ぎに来て搾取されている人々。
    性的に消費されていく未成年者たち。
    政治家への忖度が捻じ曲げる真実。

    そんな重い問題を主軸に据えた、王道の社会派サスペンス。

  • 平成が始まった日に生まれ平成が終わる日に逝った、ブルーと呼ばれた男をめぐる物語。平成という時代の様々な事象を織り込みながら、息も吐かせぬ速度で紡がれる物語は、果てしなく哀しい。ジャンルの壁を軽々と飛び越え、平和でありながら実はとてつもなく歪んでいた社会の実像を読者に突きつける。描かれる社会風俗は下手をすれば単なる懐古趣味で終わってしまいそうだが、この作者の力量は巧みに物語と融合させ空気感すら思い出させる。すごい小説だ。

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著者プロフィール

葉真中顕

1976年東京都生まれ。2013年『ロスト・ケア』で第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞しデビュー。2019年『凍てつく太陽』で第21回大藪春彦賞、第72回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。

「2022年 『ロング・アフタヌーン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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