ケーキの切れない非行少年たち(新潮新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 流行にやや遅れながら、なかなか面白そうだと手に取った一冊。

    医療少年院で働かれている著者がみた、非行少年たちは、「反省以前の子供たち」だったそう。

    全ての少年院にいる子供たちに当てはまるわけでない。しかし、タイトルにもあるような、「ケーキの切れない少年たち」には、認知能力が、他の子とは違い、歪んで見えたり、聞こえたりするのではないか。

    そうした可能性を探るべく、まずは能力に問題がないかを確認するべきであり、現代の更生施設のあり方は、対処方法が必ずしも正しくはない、という点を指摘している。

    形式的に「反省させる」というやり方では、結局再び繰り返すこととなる。ではどうすればいいか。

    その点もしっかりと書かれている点で、この本は優れていると思う。

    褒めることや、話を聞けばわかる、なんていうのは、実際にしたことのない人間の、想像上の解決策でしかなくて、だから現場とズレるのだろう、ということを、文面から感じることができた。

  • 「境界知能」という言葉をよく聞くので一度読んでおきたいと思っていた

    著者が病院だけでなく少年院など深い現場で感じた経験したことなので説得力がある 病院にかかるレベルの子は保護者がいるということだからまだ救いがあるが、病院にも来れない見つからない人がいる
    見たこと聞いたことをとらえる理解する力が全然違う 文章も読めないし図形も理解できない 見てる世界が違う 人の気持ちも想像することができないので反省することもできない 形だけ反省させても意味がない
    下に書いたような学びがあった。必要なのは認知力の向上と自己への気づきと肯定感 小学校で見つけられると良い 犯罪を犯してしまう人を減らすことは次の被害者も減らすし経済効果も大きい
    画一的な学校教育から進んでAIを使った個人教育が増えればすくえる人も増えるかもしれないと思った

    認知機能の弱さ
    感情統制の弱さ
    融通のきかなさ
    不適切な自己評価
    対人スキルの乏しさ
    +1 身体的不器用さ 発達性協調運動症5-11歳で6%

    いじめ被害がストレスの原因→性非行に
    IQ70-84以下の子どもたちは16% (範囲内は14%)以前は知的障害の枠に入っていたが多過ぎて70未満になった 健常者と見分けがつかない 困った時や新しいことに対応できない 虐待してる人も多い 刑務所にも多い

    褒める教育、話を聞いてあげる、だけでは限界

    自己への気づき 

    コグトレでゲーム感覚でトレーニング

    刑務所1人に300万円/年 

  • 医療少年院での勤務経験豊富な小児精神科医・大学教授の著者が、非行に走る少年少女たちと発達障害の密接な関係(及びその治療法)を解説した書。

    「医療少年院は、特に手がかかると言われている発達障害・知的障害をもった非行少年が収容される、、いわば少年院版特別支援学校」。医療少年院には、「
    ・簡単な足し算や引き算ができない
    ・漢字が読めない
    ・簡単な図形を写せない
    ・短い文章すら復唱できない
    」少年少女、「高校生なのに九九を知らない、不器用で力加減ができない、日本地図を出して「自分の住んでいたところはどこ?」と聞いても分からない」者が大勢いるという。

    「軽度知的障害や境界知能(明らかな知的障害ではないが状況によっては支援が必要)」の子供は、周りから障害を認知されないまま「小学校2年生くらいから勉強についていけなくなり、友だちから馬鹿にされたり、イジメに遭ったり、先生からは不真面目だと思われたり、家庭内で虐待を受けていたりします。そして学校に行かなくなったり、暴力や万引きなど様々な問題行動を起こしたりし始め」、非行に走るようになる。そしてこのパターンが犯罪者に占める割合はかなり高いという。この問題を根本から解決するには、軽度知的障害者・境界知能者を教育現場で早期発見・早期対処することが必要不可欠、ということだな(まあ、言うは易し行うは難しだろうが)。

    「文化がヒトを進化させた」にも書いてあったが、他人の顔色を読み、信頼できる他人を見分けて様々なことを学習して内面化し、社会規範に従って普通に生活を営むことが出来るのは、生物の中で人間だけ。この社会的能力が長年の進化を経て人類が獲得したとても高度な能力であることに鑑みると、この能力を十分に発揮できない発達障害者や知能障害者が一定の割合で存在すること自体はごく当たり前のことなんだな、と改めて思った(本書によると、軽度知的障害者は14%位いるとのこと)。

  • 装丁の「非行少年が"三等分"したケーキの図」と、2020年の新書販売における三冠達成の文字が躍る帯が目を引くベストセラー。児童精神科医として精神科病院に勤務していた著者は、非行少年少女に対する支援の道を探るために病院を辞めて医療少年院に赴任した。本書はそこで得られた知見を踏まえ、非行に手を染めてしまう子どもたちの特徴と更生への道を提示する。

    帯文にある「「認知の歪み」がいじめ、性犯罪、殺人、虐待の原因だ!」という言葉の通り、著者は認知機能の問題こそが非行の主な原因であることを第一章において早々に提示する。20ページに掲載される、ある非行少年が模写した複雑図形は、表紙の「ケーキ三等分」画像よりもさらにインパクトがあり、「認知の歪み」のすさまじさを端的に伝える。そして、非行少年たちは認知そのものにハンディを抱えるがゆえに、多くの場合において自身の行動の何が問題とされているかすら理解していない事実、「反省以前の問題」であることが明らかとなる。

    「認知の歪み」は具体的に言えば「見る力」や「聞く力」といった人間にとって根本的な機能であり、これらの機能はIQとして数値化される。人口の2%といわれるIQ70未満の人々が知的障害と診断されるのに対し、人口の14%存在するとされるIQ70~84の人々は境界知能と呼ばれる。これらの人々は、見た目のうえでは普通の人と変わらため、IQ100が要求されるとされる世の中でサポートも受けられずに、生きづらさから非行に走る。このような傾向は子どもに限らず、刑務所に収監されている大人たちについても、かなりの割合で(本書の一節によると、多ければ半数近く)非行少年たちと同様に知的なハンディを抱えているという。

    終盤の6章では、「褒める教育」「話を聞いてあげる」といった手法は根本的な解決策にならないと指摘したうえで、続く終章にあたる7章で「コグトレ」と呼ばれるゲーム感覚でできる、認知機能を向上させる具体的な学習方法の提案なども行われている。そのほか、知的ハンディを負う親が虐待に走ってしまう負の連鎖や、少年の非行のなかで高い割合を占める強制わいせつが必ずしも強い性欲によって起こされるわけではない事実なども示唆に富む。

    少年少女による非行にとどまらず、犯罪が引き起こされる一因として知的ハンディを導き出した本書を有意義に感じた。第3章の「非行少年の特徴5点セット+1」については、認知機能以外にも社会的な能力をはじめ、人が世の中で生きるために求められる能力について教えられるところも大きい。この6項目については、知的ハンディの有無に限らず常日頃から「生きづらさ」を感じている方がチェックしておくにも悪くないとも思える。

  • 最初の方は、これまで出会ってきた彼、彼女たちのことを思い浮かべながら読んでいましたが、途中から、反省をしながら読んでいました。どうすれば良かったのか、これからどうしていくべきか。
    確かに、「なぜやったのか?」「どのくらい責任が取れるのか?」ばかりが注目されるけれど、「どうしたら事件を防げたか?」「また事件を起こさないためにはどう支援したらいいか?」「同じようなリスクをもった子どもや少年はいないか?」については、何故か堂々巡りになって、支援というところが、うやむやになりがちである。
    コグトレを勉強してみたい。

  • 衝撃的なタイトル
    話題になっていた本
    やっと図書館から。
    コミックにもなっているんですね

    「非行少年」のイメージが崩れる
    元のところ「反省以前の子ども」「境界知能」の人々

    うなずかされる点が多々あった。
    ではどうすれば?

    著者は「コグトレ」というトレーニングを勧める。

    小学校教育の大切さを痛感した。

    問題が山積

    うーん

    ≪ その前に 差し出すその手  救うもの ≫

  • 「ケーキの切れない非行少年たち」読了。

    以前から気になっていた本。コミカライズされたものがKindleUnlimitedに上がっていたので4巻まで読み、本家本元も読んでみなければなるまい!と読みました。

    非常に得るところの多い本でした。

    幸にして、自分の周りには犯罪を犯してしまった知り合いはいないので、ニュースを見ては「なんでそんなリスクのある行動をしちゃうんだろう?」と理解できないことが多くありました。事情を知らずに非難する大人の1人だったわけです…。

    まず驚いたのは、「境界知能」と呼ばれる IQ 70〜84の子供達が、知能分布から算定すると14%もいるということ。つまり、クラスが35人ならば、その中には5人もいるということ。

    IQ 70以下であれば、「知的障害」として特別な支援が得られるけれど、 IQ 70〜84の「境界知能」の子供たちは、普通の子どもたちと同等に扱われている。

    歴史的に見れば、1950年代までは、IQ85以下は「知的障害」とされていたとのこと。1970年に、その閾値が下げられ、「IQ70以下」と定義され直したらしいのだけれど、だからと言って、IQ70〜84の子どもたちが生きづらさを感じなくなったわけではない、と(むしろ支援が得られなくなり生きづらさは増した?)


    境界知能の少年・少女たちは、認知機能、感情統制、融通の利かなさ、不適切な自己評価、対人スキルの乏しさ、身体的な不器用さ、という問題を抱えていることが多い。

    認知機能が発達していなければ、想像力を持つことができない。例えば被害者の立場を考えることができない、とか、因果関係を想像することができない、とか、感情をコントロールできない、とか、他人の立場に立つことができないことから対人関係がうまくいかない、とか。

    健常者(という言い方でいいのかわからないけれど)から見たら、「なぜそんなこともわからないの?」ということが理解できない。健常者から見たら「怠けている」とか「悪だくみをしている」とか「真面目にやってない」とか「勉強してない」と思えるけれど、彼らには、小さな世界しか見えていないから大きな視点に立つことができないだけで、怠けようと思って生活しているわけではなかったりする。

    私の時代は1クラスが40人いたんですが、5〜6人の「境界知能」のクラスメイトがいたのかもしれない。

    それだけの人たちが途方に暮れていたのかもしれないのに、「あいつはバカだから」とか「すぐキレて怖い」とか、「あいつはそんなやつ」=「人格」として扱ってきてしまっていたのだろうと思うと辛い。


    本書を書かれた宮口さんは、元衆議院議員で詐欺事件で服役した山本譲司さんが書かれた「獄窓記」を読んだことで、この本を書こうと思ったとのこと。

    犯罪を犯した大人たちが入る刑務所。そこにも「境界知能」という障害を抱え、本来なら福祉によって救われるべき人々が、生きづらさの中で犯罪を犯してしまっているという状況があるのだという。宮口さんが勤務していた医療少年院の少年たちに救いの手を差し伸べなければ、彼らも大人になって、刑務所に入ることになるのだろう、と、そして、救われるべき人が犯罪を犯し被害者を作ってしまうのだということに危機感を覚えたとのこと。


    本当に知らない世界でした。

    犯罪を犯す人たちは、そもそも「悪い人格」を持っていて、それに従って犯罪を犯すのだと、なんとなく思っていました。
    けれど、善悪や、因果関係や、人間関係を「認知できない」というだけだったために犯罪を犯してしまった人もいるのかもしれないということを知ることができました。

    だからといって、私が何かをできるわけではないのですが、そういう事実があること、手を差し伸べないとならない子どもたちが思った以上の人数で存在することを知ることができてよかった。

  • 話題の本なので読んでみたいと手に取りました。

    著者の宮口先生はもともと精神科医で少年院や精神科病院、医療少年院で勤務されました。

    その経験から、非行少年は狂暴な性格ではなく、低い認知力が原因であることが多いことに気づかれます。

    「第3章 非行少年に共通する特徴」「第7章 ではどうすれば?1日5分で日本を変える」が特に印象的でした。

  • 非行少年の特徴

    *認知機能の弱さ 想像力欠如

    *感情統制の弱さ コントロール苦手

    *融通利かなさ 思いつき、予想外の対応苦手

    *不適切な自己評価 自信ありすぎなさすぎや、自己問題点分からない

    *対人スキル乏しさ コミュニケーション苦手

    補足*身体的不器用さ 力加減 身体の使い方

    BADS 遂行機能障害症候群の行動評価
    高次脳機能障害などの脳損傷患者のためのもの。計画立てて遂行する能力
    融通きかない子どもたち。

    対人スキルが弱いと、悪い誘い断れない。助けを求められない。
    認知機能 見る聞く想像する 力が弱いと、対人トラブルに。

    身体の不器用さにより、力加減分からず怪我させる、壊してしまう。

    身体的ユ不器用さは、発達性協調運動症という疾患概念がある。相手のボディイメージを置き換えられない。姿勢悪さから、じっと座れないことも。
    不器用さは消滅せず持続のケースも。

    コグトレ

  • 単にケーキをどう切るか、というお話に、なぜか思い込んでいたけれど、読後の印象はまったく違った。
    いろいろな人の多様な問題を、認知のゆがみでまとめてしまうことは、とても危険だとは思うものの、一定の割合で実際に認知に起因する問題も確かにある。世界の見え方が、まったく違うのかもしれない。そして、その割合は、どうも、思ったよりも多いようである。情緒的でなく、科学的な対策が必要なのかもしれない。

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著者プロフィール

立命館大学教授、児童精神科医。一社)日本COG-TR学会代表理事、一社)日本授業UD学会理事。医学博士、日本精神神経学会専門医、子どものこころ専門医、臨床心理士、公認心理師。京都大学工学部卒業、建設コンサルタント会社勤務の後、神戸大学医学部医学科卒業。大阪府立精神医療センターなどに勤務の後、法務省宮川医療少年院、交野女子学院医務課長を経て、2016年より現職。児童精神科医として、困っている子どもたちの支援を教育・医療・心理・福祉の観点で行う「日本COG-TR学会」を主宰し、全国で教員向けに研修を行っている。著書に『教室の困っている発達障害をもつ子どもの理解と認知的アプローチ』『性の問題行動をもつ子どものためのワークブック』『教室の「困っている子ども」を支える7つの手がかり』『NGから学ぶ 本気の伝え方』(以上、明石書店)、『身体面のコグトレ 不器用な子どもたちへの認知作業トレーニング【増補改訂版】』『コグトレ みる・きく・想像するための認知機能強化トレーニング』(以上、三輪書店)、『1日5分! 教室で使えるコグトレ』(東洋館出版社)、『ケーキの切れない非行少年たち』『どうしても頑張れない人たち』(以上、新潮社)、『境界知能とグレーゾーンの子どもたち』(扶桑社)、『境界知能の子どもたち』(SB新書)などがある。

「2024年 『身体をうまく使えるためのワークブック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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