認知バイアス 心に潜むふしぎな働き (ブルーバックス) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 「認知バイアス」入門書として最適。これまで認知バイアス関連書籍(#0101Aa.メタ認知/謙虚/執着手放/Detachment/System2/脱認知Bias/脱錯覚)を何冊も読んできたが本書がイチオシ!「ファクトフルネス」より「ファスト&スロー」より本書が認知バイアスの世界の案内役にピッタリ。

    入門書は単なる用語解説風になりがちだけど、そこは日本認知科学学会会長も務められた権威、鈴木宏昭さんだから一味違う。鈴木さんの知見の深さが、行動心理学やナッジなどカバー範囲を広げつつも深さもあり、わかりやすくまとめられている。各章末に参考書籍リストとひとこと解説付きなのも良い。信頼と安定のブルーバックスだしね。

    鈴木宏昭さんは60代半ばの若さで2023年3月に永眠された。鈴木さんを知ったのは亡くなってからだったが、それは近年積極的に出版されていたからだった。これから鈴木さんの本で認知科学の知識を広げたいと思う。人とのコミュニケーションが好きだから。

  • タイトル通り、認知バイアスについての本。
    偏見や先入観というのはどうしてももってしまうけど、だからといってそれが必ずしも愚かというわけではないのだろうなと思った。

    「人は賢いからバカであり、バカだから賢い」という言葉は面白い。賢いことは時に、副作用となるということなんだろうなと。

    「チェンジ・ブラインドネス」という言葉は初めて知ったけど、いわゆるアハ体験と呼ばれる動画のことらしい。動画は、分かってて見ると、何でこれが気づかないんだと思ってしまう<https://www.youtube.com/watch?v=P-PP35A0vHw>。知らない状態で見たかった。

    同じ姓の結婚比率は驚くほど高いと書いてあったけど、これって日本でもなのかな(調査はアメリカの話)。鈴木さんは鈴木さんと、佐藤さんは佐藤さんと結婚する可能性が高いということらしい。同じ苗字だと親近感もわくだろうし、そういう意味では仲良くなりやすいのかもしれない。結婚しても苗字も変わらなくていいし、結婚相手が同じ苗字だとメリット大きいような気もする。

    言語隠蔽効果という話は結構ビックリした。言語に置き換えることで、逆にイメージの記憶の精度が悪くなってしまうという現象らしい。そういうものなのか…。
    自分も見たことを言葉にしようとすると、なんだか嘘っぽく感じてしまうのは、その現象のせいなのか?(多分、言語化が下手なだけ)
    言語化は特に悪手というのは、なんとも悲しいことだよなと思う。
    後、言語発達がよくなると、逆に絵が下手になるって、自分は言語化も絵を描くのも苦手な自分はいったい…。

    1980年代より前に行われたブレーンストーミングの有効性を検証する実験では、有効であったという研究は一つもないということも驚き。
    人は他人の意見に引っ張られるというのは、確かによく聞くけど、人の批判をせずに自由な意見を言うブレインストーミングでもそうなのか。
    何でこんなに有益だといわれてるんだ…。

    集団の中にいたら、時に犯罪に近いこともやってしまうというのは、人の欠陥だよなと思う。ビッグモーターの件も、個人個人だとそんなことやらないだろと思うし。
    なんだかんだいって、人間は集団で行動する生き物なんだなと思う。

  • 「何を見たかは覚えているが,どこで見たかは意外に覚えていない」「日常的に知っている鳥とか椅子などは豊富な事例から適切なプロトタイプを生み出すが,そうでないものについては目立ちやすく平均的ではない代表例を用いて予測や判断を行ってしまう」「自分の行動の原因はその時の状況に求めるのに,他人の行動の原因はその人の性格や意志などに求めることが多い」「私たちは同じタイプのことが100回起きることと一つの事例を100回聞くことを区別していない」「何度も見れば飽きるので好感度は下がるようにも思えるが,実は回数が増えれば私たちはそれを好きになってしまう」等々,日常生活に身に覚えがあることが実験例を用いて解説されており興味深かった。

  • 「認知バイアス見るだけノート」斎藤勇編著 宝島社.2022が検索で出てこないのでこの本で代わりに書いた。
     見るだけノートは大判であるので、ビジネスマン向けではなく、中学高校生向けの図書館に置く書籍であろう。イラストがあって見やすいが、大判であるのでかえって携帯できないので、新書版を強く望む。

  • 人間が何を認知して、もしくは認知したと意識しないまま影響されていて、それによってどのような間違いを起こすか。またなぜそのように人間がデザインされることになったのかという点も議論されていてとても面白かった。
    availability heuristicとは思いつきやすさで発生頻度を判断してしまうこと。アメリカ人の死因の頻度推定が面白く、少ないことは多めに、多いことは少なめに見積もる。またメディアの報道もバイアスに加担する。
    representative heuristicとは得られた情報を含むプロトタイプの代表例によって推測を行うこと。人種や国籍についてはsocial stereotypeとも呼ばれる。
    自分の行動や思考でさえも必ずしも自分でコントロールできない。人間は無意識下で環境の影響を受け、本人も近くしないうちに決断や好き嫌いの判断を下すことがある。(例えば単純接触効果)
    制約は通常は認知を効率化するために働くが、創造性という意味では制約は障碍となり得る。そのような制約を取り除くのは難しいが、多様性を持つことで制約が緩和される。
    共感という感情は人間の社会で重要な役割を果たしているが、情動的共感は近視眼的であり、それによる判断のバイアスや不合理性は大きい。例えば知人が餓死したのと知らない人が餓死したのでは社会的意味合いは似ていても共感の度合いは大きく違う。
    「人の知覚は限定的で、記憶は儚く脆い。知性の根幹をなす概念も僅かなサンプルから作られ偏見や差別を生み出す。推論や意思決定も表面的な特徴に惑わされ本質を見損なう。言語も現実を酷く歪んだ姿で捉え、記憶や思考を阻害する。他者は人をおかしな方向に導き、不合理、非道徳的な集団意思決定を生み出す。」

  • この本は、私たちの心の働きに潜むさまざまな認知バイアスについて、具体的な事例や実験を紹介しながら、その原因や意味を説明してくれる本です。認知バイアスという言葉は、最近よく聞くようになりましたが、その内容や種類を詳しく知ることができます。また、認知バイアスがどのように私たちの判断や行動に影響を与えるか、そしてそれが良いことなのか悪いことなのか、という問いにも答えてくれます。

    私はこの本を読んで、自分の心の働きについて深く考える機会を得ました。私も日常生活で、認知バイアスによって間違った認識や判断をしてしまうことがあると思います。例えば、自分の行動の原因は状況に求めるが、他人の行動の原因は性格に求めるという対応バイアスに陥ってしまうことがあります。これは不公平であり、他人への理解や寛容さを欠くことにもつながります。この本を読んで、自分の心の働きに気づき、改善することができれば、より良い人間関係を築くことができると思います。

    また、この本では認知バイアスが必ずしも悪いものではないということも教えてくれます。認知バイアスは、私たちの心の働きが賢く効率的になろうとする結果であり、ある状況では有利に働くこともあるからです。例えば、利用可能性ヒューリスティックというバイアスは、思いつきやすさや思い出しやすさで物事の発生頻度を判断する傾向です。これはメディアなどによって歪められることもありますが、一方で記憶や思考を効率化する役割も果たしています。この本を読んで、認知バイアスが人間の心の働きの一部であり、そのメリットやデメリットを理解することが大切だと思いました。

    この本は認知科学の専門家である著者が書いていますが、一般向けにわかりやすく書かれています。図表やグラフも多く使われており、視覚的にも理解しやすいです。

  • 2023年、たまたま「教養としての認知科学」という本に出会い、タイトルに惹かれて読んでみたところ、とても面白かったので、その後に手にとったのが同じ著者(鈴木宏昭氏)によるこの本。

    「認知科学」とは何か。
    似たような響きの学問領域に「脳科学」というのがありますが、そちらは、脳の仕組みや神経伝達物質等の生理作用に関する内容だそうで、それに対して、「認知科学」は、知識や記憶、判断、といった、脳の働きを通じて、人間が社会をどう見ているかを、科学的に研究する分野とのこと。
    つまり、「脳の情報処理」に関する研究といったところでしょうか。

    2018年に、世界中で見られる思い込みをテーマにして大ヒットした「ファクトフルネス」という本がありました。
    極度の貧困にある人の割合は過去20年でどう変わったかという調査で、多くの人が「貧困は拡大している」と回答したのに対して、事実に基づく調査結果では、貧困層は「半分」になっているとのこと。
    物事の一部分だけを捉え、主観的な印象から「世界は悪くなっている」と思い込んでしまう人々は、なぜそのような物の見方をしてしまうのか。

    この本では、確証バイアス、リハーサル効果、利用可能性ヒューリスティックスといった、脳の情報処理プロセスで発生する「歪み」の発生原因を、認知、記憶、言語、または、創造といった切り口で解説してくれます。事例として、少年の凶悪犯罪は戦後、大きく減少しているにも関わらず、一部の凶悪な事件だけが繰り返し報道されるプロセスの中で、私達はあたかも「少年犯罪は増えている」→「なので、少年法を厳罰化しなくてはいけない」という、思考パターンに嵌ってしまう様をとりあげています。

    人間は高度な情報処理能力を携えているにもかかわらず、時に愚かな判断をするというのは、認知科学を簡潔に言い表した著者、鈴木宏昭氏の表現。
    残念ながら、氏は、2023年3月にお亡くなりになられたそうで、残念ではありますが、本書は最近、kindle unlimitedの読み放題サービスに含まれましたので、AMAZONユーザーにはお得な機会となっています。
    内容は「教養としての認知科学」と、かなりの部分重複していますが、最終章「認知バイアスというバイアス」(バイアスだろうと思い込むバイアス)では、バイアスをメタ的に取り上げて、バランスをとる配慮もあり内容充実の一冊です。

  • 9章が良かった
    文脈依存性、限定合理性の問題や実験の設定の仕方により、認知バイアスについての考え方があまり生産的でないというのは新しい知見

    章ごとにブックガイドがあって参考になる

    著者の政治イデオロギーが文章から滲み出ているところがあって気になった



  • 人の脳がいかに良い加減か、もしくはうまくやってるかが書かれている。
    誤謬、バイアスはどこからくるのかを詳しく教えてくれる。

    言語に関する脳領域は本当は違う事に使うためにあったのかもしれない、と言う考えが刺激的だ。

  • 最終章の「認知バイアス」のバイアスについての箇所まで読むか読まないかでだいぶこの本の評価(と認知バイアスという言葉への評価も)が変わりそうな気がする。

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著者プロフィール

青山学院大学教育人間科学部教授

「2022年 『認知科学講座3 心と社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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