- Amazon.co.jp ・電子書籍 (265ページ)
感想・レビュー・書評
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「認知バイアス」入門書として最適。これまで認知バイアス関連書籍(#0101Aa.メタ認知/謙虚/執着手放/Detachment/System2/脱認知Bias/脱錯覚)を何冊も読んできたが本書がイチオシ!「ファクトフルネス」より「ファスト&スロー」より本書が認知バイアスの世界の案内役にピッタリ。
入門書は単なる用語解説風になりがちだけど、そこは日本認知科学学会会長も務められた権威、鈴木宏昭さんだから一味違う。鈴木さんの知見の深さが、行動心理学やナッジなどカバー範囲を広げつつも深さもあり、わかりやすくまとめられている。各章末に参考書籍リストとひとこと解説付きなのも良い。信頼と安定のブルーバックスだしね。
鈴木宏昭さんは60代半ばの若さで2023年3月に永眠された。鈴木さんを知ったのは亡くなってからだったが、それは近年積極的に出版されていたからだった。これから鈴木さんの本で認知科学の知識を広げたいと思う。人とのコミュニケーションが好きだから。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タイトル通り、認知バイアスについての本。
偏見や先入観というのはどうしてももってしまうけど、だからといってそれが必ずしも愚かというわけではないのだろうなと思った。
「人は賢いからバカであり、バカだから賢い」という言葉は面白い。賢いことは時に、副作用となるということなんだろうなと。
「チェンジ・ブラインドネス」という言葉は初めて知ったけど、いわゆるアハ体験と呼ばれる動画のことらしい。動画は、分かってて見ると、何でこれが気づかないんだと思ってしまう<https://www.youtube.com/watch?v=P-PP35A0vHw>。知らない状態で見たかった。
同じ姓の結婚比率は驚くほど高いと書いてあったけど、これって日本でもなのかな(調査はアメリカの話)。鈴木さんは鈴木さんと、佐藤さんは佐藤さんと結婚する可能性が高いということらしい。同じ苗字だと親近感もわくだろうし、そういう意味では仲良くなりやすいのかもしれない。結婚しても苗字も変わらなくていいし、結婚相手が同じ苗字だとメリット大きいような気もする。
言語隠蔽効果という話は結構ビックリした。言語に置き換えることで、逆にイメージの記憶の精度が悪くなってしまうという現象らしい。そういうものなのか…。
自分も見たことを言葉にしようとすると、なんだか嘘っぽく感じてしまうのは、その現象のせいなのか?(多分、言語化が下手なだけ)
言語化は特に悪手というのは、なんとも悲しいことだよなと思う。
後、言語発達がよくなると、逆に絵が下手になるって、自分は言語化も絵を描くのも苦手な自分はいったい…。
1980年代より前に行われたブレーンストーミングの有効性を検証する実験では、有効であったという研究は一つもないということも驚き。
人は他人の意見に引っ張られるというのは、確かによく聞くけど、人の批判をせずに自由な意見を言うブレインストーミングでもそうなのか。
何でこんなに有益だといわれてるんだ…。
集団の中にいたら、時に犯罪に近いこともやってしまうというのは、人の欠陥だよなと思う。ビッグモーターの件も、個人個人だとそんなことやらないだろと思うし。
なんだかんだいって、人間は集団で行動する生き物なんだなと思う。 -
「認知バイアス見るだけノート」斎藤勇編著 宝島社.2022が検索で出てこないのでこの本で代わりに書いた。
見るだけノートは大判であるので、ビジネスマン向けではなく、中学高校生向けの図書館に置く書籍であろう。イラストがあって見やすいが、大判であるのでかえって携帯できないので、新書版を強く望む。 -
2023年、たまたま「教養としての認知科学」という本に出会い、タイトルに惹かれて読んでみたところ、とても面白かったので、その後に手にとったのが同じ著者(鈴木宏昭氏)によるこの本。
「認知科学」とは何か。
似たような響きの学問領域に「脳科学」というのがありますが、そちらは、脳の仕組みや神経伝達物質等の生理作用に関する内容だそうで、それに対して、「認知科学」は、知識や記憶、判断、といった、脳の働きを通じて、人間が社会をどう見ているかを、科学的に研究する分野とのこと。
つまり、「脳の情報処理」に関する研究といったところでしょうか。
2018年に、世界中で見られる思い込みをテーマにして大ヒットした「ファクトフルネス」という本がありました。
極度の貧困にある人の割合は過去20年でどう変わったかという調査で、多くの人が「貧困は拡大している」と回答したのに対して、事実に基づく調査結果では、貧困層は「半分」になっているとのこと。
物事の一部分だけを捉え、主観的な印象から「世界は悪くなっている」と思い込んでしまう人々は、なぜそのような物の見方をしてしまうのか。
この本では、確証バイアス、リハーサル効果、利用可能性ヒューリスティックスといった、脳の情報処理プロセスで発生する「歪み」の発生原因を、認知、記憶、言語、または、創造といった切り口で解説してくれます。事例として、少年の凶悪犯罪は戦後、大きく減少しているにも関わらず、一部の凶悪な事件だけが繰り返し報道されるプロセスの中で、私達はあたかも「少年犯罪は増えている」→「なので、少年法を厳罰化しなくてはいけない」という、思考パターンに嵌ってしまう様をとりあげています。
人間は高度な情報処理能力を携えているにもかかわらず、時に愚かな判断をするというのは、認知科学を簡潔に言い表した著者、鈴木宏昭氏の表現。
残念ながら、氏は、2023年3月にお亡くなりになられたそうで、残念ではありますが、本書は最近、kindle unlimitedの読み放題サービスに含まれましたので、AMAZONユーザーにはお得な機会となっています。
内容は「教養としての認知科学」と、かなりの部分重複していますが、最終章「認知バイアスというバイアス」(バイアスだろうと思い込むバイアス)では、バイアスをメタ的に取り上げて、バランスをとる配慮もあり内容充実の一冊です。 -
9章が良かった
文脈依存性、限定合理性の問題や実験の設定の仕方により、認知バイアスについての考え方があまり生産的でないというのは新しい知見
章ごとにブックガイドがあって参考になる
著者の政治イデオロギーが文章から滲み出ているところがあって気になった
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人の脳がいかに良い加減か、もしくはうまくやってるかが書かれている。
誤謬、バイアスはどこからくるのかを詳しく教えてくれる。
言語に関する脳領域は本当は違う事に使うためにあったのかもしれない、と言う考えが刺激的だ。 -
最終章の「認知バイアス」のバイアスについての箇所まで読むか読まないかでだいぶこの本の評価(と認知バイアスという言葉への評価も)が変わりそうな気がする。