英語独習法 (岩波新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 認知心理学の知見を基礎にした、日本人が英語を習得する際に躓くスキーマの説明(可算/不可算、動作動詞と前置詞の組み合わせや意味の広がり)と、単語を理解し、覚えるために必要な意味ネットワークの構築や文脈・共起語・頻度の調べ方の具体的な紹介(コーパスの利用)が連関し、認知的負荷をかけながら、英語という言語の習得について理解することが出来る良書。認知心理学の言語習得の研究結果などを例に挙げながら、人がどのように言語を理解し、習得していくかを知ることもできる。
    言語習得において子供(1歳まで)が有利なのは、音素(ex.rとl)の区別であるが、子供の頃に習得した言語は、その後磨き続けなければあくまでその当時の言語能力という限界があるため、むしろ、様々な知識を関連付けて推測を行う能力が高い大人になってから英語の習得に励むことは(リスニングやスピーキングはネイティブレベルになれないとしても)深い考えを適切な内容で伝えるというプロフェッショナルに必要な能力を身につけることにつながる、という内容に、励まされる。仮説を持ち、予測をして、それが裏切られたとき人は最もよく学ぶという。筆者が指摘する通り認知心理学の知見は、言語習得に限らず、あらゆる物事を身につける時に、選択と集中を行う認知プロセスを踏まえた適切なトレーニングを行うことを可能にする。英語のスキーマをざっくりと知ることができ、注意を向けられるようになったため、コーパスを利用しつつ、自らスキーマを発見する勉強をしたい。

    これは余談だが、子どもが(子どもには難しい内容でも)大人の事情や心情に敏感なのは、言葉を理解できないことも多いからこそ、文脈、表情や他の言葉から推測をするという能力を、めいいっぱい使いながら生きているからだと感じる。

  • これで英語が簡単にマスターできると思って読むと、ひどい目に遭う本。本書では認知言語学の立場から、英語におけるスキーマの習得を説く。たとえば英語を学ぶ子どもはその名詞が可算か不可算名詞をまず判断する。どこでaが入り、どこでtheが入るかが即座にわかる、あるいはいれられるかがわかるのだ。冠詞と不定冠詞でも、同じことだ。そういう練習をしろという。だから、簡単にはできない。英語母語話者のようなスキーマを頭の中に築くことが必要なのだ。行為の描写では、人がふらつきながら部屋に入ったというのをwobbled into the roomという表現をする。これはむしろ世界の言語の趨勢からは外れた例である。どちらにせよ、その言語のスキーマにあった表現をもとめられるのである。結局、英語の力をつけるには単語力をつけることであるが、これにはコーパスを使うといいという。これだけで素人は引き下がってしまう。そうして語の意味の幅、他の語との結びつき、文体力をつけるのである。だから、大事なことは多読ではなく、熟読、さらにはテレビや映画の熟見がいいという。映画のセリフを同じように言えるまでくりかえすのである。

  • ガッツを感じた

  • 【動機】
    ・ChatGPTを用いた効果的な英語学習法を構築するため

    【感想】
    ・仮説と検証が学びに有効
    ・比較と類推が学びに有効
    ・語彙を増やせ
     - 構文
     - 共起語
     - 頻度
     - 文脈(フォーマリティ)
     - 多義の構造
     - 意味のネットワーク
    ・作文

  • 9/13

  • 貸出状況はこちらから確認してください(電子書籍ではありません)↓
    https://libopac.kamakura-u.ac.jp/webopac/BB00299165

  • 印象的だったポイント:
    ①英語は言語なので、高度に使いこなせるようになるためには、文法や表面的な語彙の学習だけでなく、相性の良い単語の組み合わせや、日本語との言葉の微妙な定義の違い等、膨大な背景知識が必要。

    ②ただそれは大変なので、どの程度の英語力をつけたいのか、目標を明確化するのも大切。

    ③できそうな人、興味のある人は、SkELLやCOV CA, WordNetなどを使って、例文や類語, 上位語や下位語などを見て、ぜひ背景知識を増やしていこう!

  • 今井むつみさん好きなので読んだ。面白かった。

    認知科学から勉強の仕方を書いている。

    コーパスを用いた英語勉強法、SKELLやWordNetの使い方も書いてあってとても有用だった。
    日本語話者の推察(スキーマ)がむしろ不自然な英語を産むという点、とても興味深かったし、だから海外の人が作った日本語の歌は不自然だったりするんだろうなと思ったりした。(mytimeの歌詞、このワードできないとか)

    やはり洋画を字幕付きでじっくり何度も理解できるまで読むのが良いらしい。
    多読はむしろ語彙が分からない時は無駄な点が多いというのは目からウロコだった。

  • 「ゆる言語学ラジオ」にゲスト出演なされた言語学者。
    巷にあふれる英語の勉強本とは一味違う。でも自分でやってみるには難易度高そう。

  • 認知科学的によい英語の学習法はなにか、という話。暗黙的な知識=スキーマが重要で、スキーマ≒語彙だ、というところまではまあ納得もできるけど、語彙を増やし広げる方法が単にコーパスで調べるだけというのはどうなんだろう。その他興味深いんだけど、もやもやするところも多かった。特にインターネット上で使えるコーパスの詳しい使い方の説明はいらなかったかな。認知科学的な話までは面白かったし、著者のほかの本読む方がよさそう。

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著者プロフィール

今井 むつみ(いまい・むつみ):1989年慶應義塾大学社会学研究科後期博士課程修了。1994年ノースウエスタン大学心理学博士。慶應義塾大学環境情報学部教授。専門は認知科学、言語心理学、発達心理学。著書に、『親子で育てる ことば力と思考力』(筑摩書房)、『言葉をおぼえるしくみ』(共著、ちくま学芸文庫)、『ことばと思考』『英語独習法』(ともに岩波新書)、『言語の本質』(共著、中公新書)などがある。

「2024年 『ことばの学習のパラドックス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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