人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する (NewsPicksパブリッシング) [Kindle]
- ニューズピックス (2021年3月3日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (480ページ)
感想・レビュー・書評
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前半は、さまざまなイノベーションの歴史について具体的に紹介してある。蒸気機関、電球、ワクチン、電子タバコ、コンテナ、飛行機、ヨーロッパ社会へのじゃがいもの導入、などなど、どれもわくわくしながら読んだ。
後半はイノベーション概論的な内容。どうも筆者はイノベーション万歳という考えらしく、いまいちついていけないところもあった。イノベーションが、特許を取った個人や、既得権益者のロビー活動や政府の抵抗にあいながら社会を刷新していく良き物語として語られ(すぎて)ている。
たしかに分かるけど、でも、それは、その当のものが「革新」だと私たちが知っているがゆえの結果論であって、新しいものを警戒するというのも生物学的な生存戦略としては正しい選択のひとつでもあるはず。だって、著者が書いているように、たとえグーグルの創始者が車に轢かれたって「遅かれ早かれ」検索エンジンのイノベーションは生じたはず。だからこう言いたければ人間の愚かさも込みでイノベーションは考える必要がある。
それを未来から、こうすればもっと革新が早くなっただろうとか指摘するのは、ちょっとなんというか、ズルいと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
さまざまなイノベーションの事例を紹介するとともにイノベーションを起こす(または阻害する)共通の法則について紹介した名著。
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さすがマッド・リドレーという1冊。まずはイノベーションについての定義、たんなる発明ではなく、実際に人々の生活を一変させるにいたった製品や技術体系や方法論といったものとされる。その実例をエネルギー、公衆衛生、輸送、食料、「ローテク」(インド数字やコンテナやスーツケースのキャスターなど)、通信とコンピュータといった分野別に解説。このへんの説明の手際がすばらしくて、「天才発明家による飛躍」ではなく、「人類のいろんな知識の蓄積とその交換による必然」と描かれるのがたいへん説得的。知的財産権については、結果的に訴訟ばかりが多くなり、イノベーションを阻害するものとして、過剰な保護を与えないほうがいいとする。イノベーションには抵抗がつきものだが、それがホンモノのイノベーションであるならばいずれは克服されるのだろうと読める。イノベーションは自由に大きく依存しているうえ、リスクをとり、失敗を賞賛する環境でしか発生しないという本書の主張が正しければ、おおむね世界はいい方向に向かうだろう。本書の将来に対する予言がすべて当たるとは思わないが、骨格としては正しい論考だと思うし、そうでなければ人類の行く末を悲観するしかないということになるのだと思う。
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ふむ
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イノベーションが複数の協働作業で起きること、しかし特許制度は発明に近い時点を優遇する傾向があること、加えて、特許制度による一定期間の利益の独占の保証ではなく、特許を認めてこれに報酬を支払いつつ当該内容を無償で公開する制度の提案など、示唆に富む。具体的な事例も豊富。
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【印象に残った話】
・イノベーションとは、発明を実用的かつ手ごろな価格で、信頼できるかたちで定着するところまで発展させることだ
・イノベーションは下記の例のように、必然的に同時多発的に起こる
・氷河時代(更新世)から現在の間氷期(完新世)に移行したことで、世界各地で農業が起こった
・電球の発明や検索エンジンの開発も、多くの人が同時期に同じことを思いついていた
【考えたこと】
・コロナで外出できない状況の今、新たなイノベーションが起こるのではないか -
筆者による「繁栄」が非常に面白く、新刊が出たとニューズピックスで見かけて購入する。
特にラジオ、電信、無線通信、コンピュータに関するイノベーションの章を重点的に読んだ。
- 大外れした未来予測 。IBM社長トマス・ワトソン「世界のコンピュータ需要は5台」1943年。FCC チュニス・クレイヴン「衛星がアメリカ国内で、電話、電報、テレビ、ラジオのために利用される可能性は事実上ゼロ」1961年。
マーティー・クーパー(モトローラー、携帯電話の生みの親)「携帯電話が地域の優先システムに取って代わることは絶対にない。」 -
前半7章までは様々な分野におけるイノベーションの事例集で、やや物語的な冗長な内容。
後半8章からは、イノベーションに関する著者の主張で、自由と失敗の繰り返しがイノベーションを生むという内容。
前半の回りくどい話では、イノベーションは天才のひらめきではなく、連続的な取組の先にある成果だという主内容であったため、後半はその趣旨に沿った論が展開するのかと予想したが、残念ながら前半の話は後半にほとんど反映されておらず、特に目新しくない主張のオンパレードでややがっかり。
規制や特許等がイノベーションを阻害するという主張は一面ではわからなくはない。
がしかし当然世の中そんな単純ではなく、ロビーイング企業や官僚主義的なお役所を悪者に仕立て上げて(もちろん実際に悪い場合もあるけど)、イノベーション礼賛的な論を展開するのはいかがかなと感じた。
ケースバイケースでしょ。
全体的にはあまり参考になる意見はないなと感じたが、一点だけ同意できたのが、イノベーションを生むためには失敗の繰り返しが必要であるという点。
失敗の繰り返しと書いたが、本書で中国の9-9-6を言及しているように、要するに時間をかけろ、働けということだ。
イノベーションを生むのに種も仕掛けもなく、お金と時間をかけることが必要だ。
もちろんこれは十分条件ではなく必要条件であるので、お金と時間をかけても失敗することが多数。
しかしそのかけたお金と時間の量に比例して、生み出されるイノベーションの数が増加するのではないか。
中国が成果を出している原因はそこなんじゃないの(中国の場合は悪い意味での自由(=規制の対象となるような悪い結果が生じても構わないという自由)ももちろん「イノベーション」を生み出す要因であるが、そういったものをそもそも「イノベーション」と呼ぶべきではないと感じる)。 -
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