1984 (角川文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 1ページに対してかかる時間が多い。内容としてのスリリングさはピカイチでした、やはり名作と言われるだけありました。現代の日本にも通づる部分もあるのかなぁと自分事に考えておりました。
    実際自分に見えている事実は認識によっていくらでも変えられてしまう部分には恐ろしさも感じました。
    今後の生活においてもこのような視点はもっていたいなと思います。
    何より70年前にこの内容を書いたジョージ・オーウェルに感服致しました。

  • 二重思考《ダブルシンク》。

    世界のあらゆる歪の要因もこの思考にあるのではないか。

  • ディストピア小説の最高傑作とも言われる「1984」。全体主義・監視社会の恐ろしさが、これでもかと描かれている。刊行は1949年なので、そこから35年後の近未来が舞台になっているが、今から見ると37年前。さぞかし時代遅れになっているかと思いきや、スマホやインターネットによって個人の行動履歴や購買履歴が共有され、AIのレコメンドにしたがっていれば何も考えなくても「不自由のない」生活をおくれる現代だからこそ、「1984」のリアルが際立って見えてくる。

    「1984」は一党独裁の世界。数少ない党の幹部が全てのことを決める。主人公のウィンストン・スミスは党員として、資料を捏造する仕事をしていた。党員以外は、「プロレ」と呼ばれる労働者階級だ。

    資料の捏造とは、過去を書き換えることだ。たとえば、戦争の状況分析において、昨日発表した予見と、今日の実際の戦況が異なった場合、普通に考えれば党は予見を外してしまったということになるが、そうではなくて予見じたいを書き換える。あたかも初めから正しい予見をしていたように昨日の新聞を書き換える。そして、昨日の「正しくない」新聞は「メモリーボックス」と呼ばれるゴミ箱行きだ。これで党はいつでも「正しい」。

    いやいや、でも昨日の新聞にはこう書いてたじゃん、となりそうだが、そうはならない。忘れるのだ。党員には「二重思考」という考え方が求められる。二重思考とは、ふたつの矛盾する信念を同時に心の中に持ち、どちらも受け入れる能力のことである。ここでは、もともとあった事実を認識しつつも、それと相反する事実を突きつけられた時に、それも事実だと認めたうえで、もとあった事実を忘れる。党のスローガンには「過去を支配する者は未来を支配する。今を支配する者は過去を支配する」とあり、過去が改変できる性質のもののようにとれるが、改変したことはないと党は言う。

    「1984」の世界には、町中、そして家の中のいたる所にテレスクリーンと呼ばれる、双方向型のテレビが設置されている。党からの情報が届くだけでなく、監視もされる。「思想警察」からいつ見られているかわからないという状況であり、進化版のパノプチコンだ。また、他人を愛することも許されず、たとえ夫婦間であろうと快楽的なセックスは否定され、単に子供を産むための行為とされた。そして、テレスクリーンには「2分間ヘイト」というプログラムがある。これは、人類の敵「エマニュエル・ゴールドスタイン」がテレスクリーンに出てきて、みんなで力の限り「憎悪」を叫ぶというものだ。共通の敵に向かうと、一体感が生まれる。

    そして言語改革も行われる。標準英語に代わって「ニュースピーク」が公用語になる。ニュースピークでは、単語の数が大幅に減らされる。似たような単語は簡単なものに統一されたし、例えば「free」という単語からは、「自由」という意味が削除され、もっぱら「sugar-free」のような「〜がない」という意味に使われた。こうやって、「言葉がないから考えられない」という状況を作っていく。

    このような状況のもと、党の体制に対して違和感を覚えているウィンストンは、記憶と真実を留めるために、密かに日記を書き始めた。そして、若い娘ジュリアと出会い、テレスクリーンから隠れて逢瀬を重ねるようになる。そのうち反逆組織と接触し、禁断の本を入手するが…この先はご自身で手に取って読んで欲しい。

    過去の改竄も二重思考も、テレスクリーンも2分間ヘイトも、そして言葉の減少も、多かれ少なかれ似たようなことは現代社会でも起きている。というか技術が進んでいるから、それ以上かもしれない。気をつけていないと、考える力も自由も、ぼくらの手の中からこぼれ落ちてしまう。いやもうこぼれ落ちはじめていて、そろそろ手遅れになっているのかもしれない。

  • 1940年代に40年後の世界を描いた小説だけど、80年後に本当にやってきたという感じだ。管理・監視社会の描き方はウルグアイを監視している中国にそっくりだし、文書を改竄し、歴史まで書き換えようとしているのは今の日本そのものだ。国家に刃向かうものは拉致されるのは、ロシアや朝鮮人民共和国みたいだし。そんな馬鹿げた世界になってしまっていても暴動が起きない今の世の中はリアルなディストピアだ。

  • 前回は約1/5まで進んだところで挫折し今回再挑戦。 やはり監視と密告が支配し恐怖心と憎悪、妄信が充満する社会は異様で恐怖以外の何物でもなかった。 思えばこれはSFなどではなく世界には現実にこれに類似した国家が存在しどの国にも陥る危険性はあるんだなと。

  • 文学のみならず、学術分野などにも大きな影響を与えるSF小説の傑作を読了。

    長大な上、描写や設定が細かすぎて大筋とはズレたところで難解な内容があるなど読むには骨が折れるが、現在の社会と通じる部分が恐ろしいほどあり、そういった内容も読む価値が大いにある。強いていうなら設定に対して主人公の軽薄さ、単純な話の流れが気になるが、訳者あとがきを読むと、そういった部分のオーウェルの意図が垣間見える。好き嫌いは別にして、経験として一度は読んでおくべき名著だと感じた。

  • ■評価
    ★★★★☆

    ■感想
    ◯現代の社会でも比喩的に、「ビッグブラザー(が見ている)」という言葉を使うことがある。その語源たる本。

    ◯徹底的な監視・全体主義の社会が舞台である。社会主義国がモデルであり、ソ連や北朝鮮を彷彿とする。

    ◯主人公はヒーローではない。ディストピア小説である。

    ◯1948年に書かれた本であるのに、登場する小道具などは、そのまま現代にあるものを彷彿とさせる、とても示唆深いものであった。

    ◯「二分間ヘイト」は、ニュースの見出しに見えるし、テレスクリーンはスマホ・SNSに見える。

  • どんどん加速していく本。
    難しい表現が出てくる。

    また何年か後に読み直したい。

  • 情報と思想の関係性。どの時代どの国の誰にとっても切れないものであり、今日本に生きる私もこの世界観に当事者意識を持たざるを得ませんでした。オーバーな表現かもしれませんが、一度現代社会を俯瞰する良いきっかけになりました
    毎章続きが気になって、私はほぼ一気読みしました
    面白いです!

  • す、すご……
    さすが大御所SF。圧巻だった。
    す、すご……
    圧倒的緻密な世界観、そして精神の書き換え。

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著者プロフィール

1903-50 インド・ベンガル生まれ。インド高等文官である父は、アヘンの栽培と販売に従事していた。1歳のときにイギリスに帰国。18歳で今度はビルマに渡る。37年、スペイン内戦に義勇兵として参加。その体験を基に『カタロニア讃歌』を記す。45年『動物農場』を発表。その後、全体主義的ディストピアの世界を描いた『1984年』の執筆に取り掛かる。50年、ロンドンにて死去。

「2018年 『アニマル・ファーム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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