最悪の予感 パンデミックとの戦い [Kindle]

制作 : 池上 彰 
  • 早川書房
4.05
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感想 : 21
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感想・レビュー・書評

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  • Audibleで聞いたのだが、なかなか馴染まない。。。最初の1冊としてマイケル・ルイスを選んだのは正解であった気はするが。

    コロナに絡めてお得意の群像劇仕立て。でも金融ものに比べると今ひとつ切れ味不足か。最後の章での専門家と政治の関係性は考えさせられた。

  • 米国におけるパンデミック対策の体制などについて生々しい現状を紹介した書。CDCがいかに機能していないか、地方(州やカウンティ)にその皺寄せがどう来ているのか、他方、数理モデルなどを使って正しい戦略を編み出していた人たちが存在していたことなど、米国におけるウィルス対策の背景がよくわかる優れた作品。

  • 『マネー・ボール』のマイケル・ルイスによるCOVID-19に対するアメリカの専門家たちの奮闘と失敗の記録。
    アメリカは、トランプ大統領やCDCが初動でCOVID-19の感染力や致死率を楽観視していたこともあり、感染者数も死亡者数も世界最多となった。
    しかし、その裏で「ソーシャル・ディスタンス」を早くから提唱し、数理モデルを使っていかに効果的に感染爆発を封じ込めることができるかを検討していた人たちがいた。
    彼らがアメリカ各地からホワイトハウスに集結する様は、まるで虐げられたヒーローたちが未知なる悪に立ち向かうアベンジャーズのようである。物語の展開が巧みで、一癖も二癖もある専門家たちが、数理モデルという武器を手に入れて対策を練っていく姿は、Netflixですぐにでも映像化できるのではないかと思うくらいドラマチックである。
    実際にCOVID-19が登場してからは、読者の記憶にも鮮明に残っている経過を辿っていく。有効な手段として提言されていたはずの感染症対策プランは実現されず、アメリカ社会のシステムや人事的ヒエラルキーによって阻害され、時期を逸してしまう。
    世界はまだCOVID-19との戦いの真っ只中にある。デルタ株だけでなく、イオタ株やラムダ株がさらなる脅威になる中、日本でもオリンピック期間と「たまたま」同じ時期に「人流は減っているはずなのに」かつてない感染爆発が起こっている。尾身茂会長や西浦博教授らが20年の早い段階からずっと提唱していた「感染拡大を抑えるには人流を抑えるしかない」と言っていたのは、まさにこの物語で語られる数理モデルによる予測の結果なのだ。

    「実際、中国政府はつい二週間前に患者がわずかしかいないと発表したのに、いまではかなり多いような行動をとっている。「茶殻で占った結果……」とカーターはウルヴァリンズの仲間に書き送った。「中国当局はもうすぐ武漢に一〇〇〇床の検疫病院を建設するでしょう。それも、五日以内に。また、人手が足りなくなって、軍の出動を要請するはずです。(中略)チェルノブイリ原発事故のとき、軍が出動したことを思い出します」

    「茶殻で占った結果……」、日本でも軽症者を集中管理するような大規模収容施設を作らない限り確実に医療崩壊に向かっていくだろう。

    感染爆発を抑えることができるのは、人々の流入を抑えた上で、感染初期にソーシャル・ディスタンスを取ることだと数理モデルは示している。数理モデルは「政府が何もしなければ」感染者数は指数関数的に増えることを示している。そうなると医療崩壊は防げない。

    感染者数と死亡者数がいつも遅れて発表されることも考慮に入れる必要がある。今の数字は、二週間前の我々の行動の結果なのだ。

    「感染症予防は公衆の利益だが、公衆がみずから進んでじゅうぶんな対策に努めるとは期待できない。」

    とチャリティは語る。本当にそうであろうか。もし仮に、公衆が自ら進んでじゅうぶんな対策に努めるようになれば、それは感染症予防に効果があるのではないか。そしてそれこそが、日本がこれまで「なぜか」感染をなんとか抑えられていたファクターXだったのではないか。

    「公衆自らが十分な対策に努める」ことしか、我々には残されていないのではないかと思う。

  • マイケル・ルイスの作品が好きなので買った。

    アメリカがどんな経緯を踏んでコロナウィルス対策に「失敗」したかがわかる。

    そして、横浜で長いこと洋上にいた「ダイヤモンド・プリンセス」の中で起きていたこと、それに対してアメリカがどのような対応を取ったかもわかる。

    感染症対策という仕事に地道に取り組む人を描写した本。

  • 「マネー・ボール」で有名なルポライターによる、米国のパンデミックとの戦い。「米がコロナに敗北した理由」(日経21/10/16書評)と評されているが、明確に勝利した国はないので、ネガティブイメージを抱かせる書ではない。
    改めて感じるのは、CDCなどの権威ある組織は、後になって非難されるような行動は取りたくないので、リスクを取る必要がある対策は打ち出さない。また、科学を軽視する独裁者(トランプ大統領)の顔色ばかり伺って、最新の数理モデル疫学も活かされなかったという現実は罪深い。
    この点、わが国は少しましな気がするが、いかがだろうか?

  • それぞれの分野で活躍していた人達が、コロナウイルスという脅威を前に、集合し闘っていく話。説教臭くなく、過剰な脚色も(多分)されていないので面白く読めた。官僚制やアメリカ政権の問題、歴史を(に)学ぶことの大切さを感じれる良い一冊。カーターさんかっけえっす。

  • とにかく面白かった。リスクに対する備えはアメリカが優れていると思っていたが、そのアメリカでさえ政治的な思惑で大きな動きにならなかった現実は厳しい。日本は元々リスクを過小評価する傾向にあり、パンデミックにも無力であることが証明されてしまった。示唆に富む内容であるし、勇気ある人の活躍に拍手を送りたくなる。

  • アメリカにおけるCOVID対策をタイムリーに評価した書。
    興味を惹くのは日本で今なお批判を浴びる施策を本書では「アメリカが幾多の失敗の上にやっと正しい道筋としてシミュレーションの末に獲得したもの」として大きく評価している点である。
    ・学校を閉鎖することで子供を介した感染拡大を防ぐ
    ・集団免疫ではなくワクチンによる免疫獲得を目指す
    ・スプレッダーをトレースする

    もちろんアメリカでも批判の声が大きくあるので、これを取り上げてアメリカが素晴らしいといいたいのではない。重要なのは、批判が渦巻く中で何が正しい情報で、それをどのように一市民として選択しうるかということがとても困難であることである。
    政府が正しい解をみつけて実行すればよいというのはその通りだが、世論の支持を基盤とする民主主義国家では、市民による批判は批判の中身が間違っていようと政府の決定を歪めてしまうのである。

  • 『マネーボール』や『世紀の空売り』で有名なマイケル・ルイスが、いかにしてアメリカの新型コロナ対策が失敗したかを書いた本。本書を読むと、どんなに優れた個人がいても、組織が機能しなければどうしようもないことを思い知らせる。

    優れた有志がネットを通じて連携し、有効と思われる対策を検討し、まとめて提言まで行うが、なぜか実行されないというのが繰り返される。提言が受け取られた時の反応は良かったというのに。個人単位の連携はされるが、組織単位の連携が機能していない。検査に用いる鼻腔用綿棒を手配したはずが、まつげブラシが届く。そうしている間にも感染者数と死亡者数がどんどん増える。本書で書かれている2020年時点でも相当に酷い。そしてその後のアメリカがどうなったかは知ってのとおりだ。

    本書を読んでも爽快感は得られない。読み終えた後に「どうすれば良かったのか」と考え込んでしまうタイプの本である。そして自分の所属する組織はどうなのか、とも。

  • たくさんの人に詳しいインタビューをして書いたのだろうなと思わせる。アメリカの制度・組織が、トランプ政権のせいだけでなく、けっこういいかげんだというのが意外だった。それでも国が回っているのはL6の人が個人的にがんばっているから。個人個人はこんなに優れた人がたくさんいるのはさすがアメリカ。特にチャリティとカーターがすごい。とはいえ結局せっかくの優れた人たちのアイディアがうまく活かされず、アメリカのパンデミック対策はどうみても失敗だが、次に発生したときはこの教訓が物を言うだろうか。それにしても、感染対策は空振りに終わることもあるため、世間から評価されにくい分野だとつくづく思う。関係者の地道な努力に頭が下がる。うまく行っても、うまく行かなかった場合と比べにくいので、あまり評価されないのかもしれない。その点、今回のコロナでは各国の対策の違いで成果の表れ方が違うので、めずらしいケースなのではなかろうか。
    素人としては、一人死者が出たときにはすでにその何十倍何百倍の人に感染しているとわかったのはよかった。

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