頼朝と義時 武家政権の誕生 (講談社現代新書) [Kindle]

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  • 鎌倉幕府の成立により、政治の中心は天皇・貴族から武士の手に移った。この移行は源頼朝と北条義時という全く異なる個性と才能を持つ2人がそれぞれの役割を忠実に担ったことで達成されたのだ。

    頼朝は日本全国に散らばる武士たちに収入源を与えることでまとめ上げる。が、彼の立場はあくまでも朝廷の下請け。彼の実行する徴税、治安活動は朝廷より委託された権力にもとづいていた。

    しかも、こうした頼朝の成果は頼朝自身の強烈なカリスマによるものであり、組織的なものではなかった。実際、頼朝の死後、彼の創り出したシステムやルールは崩壊寸前となり、まとめ上げたはずの武士たちによる内乱が頻発する。

    権力は勝ち取ることよりも維持することの方が難しい。天皇の凄さはそれを克服していたことだ。

    こうして武士たちは再び分裂、天皇率いる朝廷がタナボタの利を得るはずだった。それを阻止し、武士の政治的地位を維持したのが、義時だ。頼朝死後、御家人たちの反乱、源氏一族の滅亡、承久の乱と多くのトラブルに対応しつつ、その反省とその防止策を施すことに努め、未来へ続く武家政権を確立する。

    歴史は常にその時代に適材適所な人材を正しい順番に送り込んでくれる。頼朝から義時という順番は絶妙だった。

  • 鎌倉時代ってよくわからないんですよ。なんであんなに陰謀うずめいていたのか、頼朝の周りってなんであんなに死んでばっかりなのか。今年の大河ドラマで三谷脚本がそれをわかりやすく紐解いてくれているが、とにかく登場人物が多く入り乱れているため前提の知識が欲しい。本書は中立的な呉座さんの視点から執権義時がなしたことをじっくりと解説してくれているので価値が高く思える。

  • 朝廷と交渉しつつ、したたかに武士の権利を拡大していった、頼朝と義時の功績(特に武家社会の成立における位置づけ)をそれぞれきちんと総括している本です。
    基本的に他説も引き合いに出した上で、著者の見解を併記しているのが好印象でした。

  • NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を、本でリフレインしているような感覚。いや、そこから、更に詳しく知れた感じ。武将の名前と俳優の顔が思い浮かんで、楽しめた。

  • 北条義時、日本史を学んできた中であまり興味を持たなかった気がする。
    頼朝や政子に比べて、教科書上ではそこまで重要人物である印象はなかったのだが、日本初の武家政権を確立し、鎌倉幕府の基盤を作った、とても大きなことを成し遂げた人物なのだということをドラマを通して改めて学び、とても興味深い人物なのだと思った。
    ドラマではこれから朝廷との争いになるが、どのように描かれるのかますます楽しみになってきた。

  • 2022年の大河ドラマが「鎌倉殿の13人」ということもあり、鎌倉時代の幕開け期についての書籍多数。私が習ったころは1192年が幕府開設の年として覚えこんだものですが今はそうではない。歴史ですら年を経ることに解釈が変わる。ならば、「いま」をみるためには必要以上に突き放して観ることが大事では。

  • 頼朝から、承久の乱後まで、頼朝と義時を中心に、やや『吾妻鏡』と距離を取りながら描いている。

    頼朝・義時(北条家)は、平家よりも源氏内の粛清の方に重きを置いていたのがわかる。

    本の面白さとは一線を画すべきだが、呉座氏のSNSトラブルが返す返すも残念。

  • 流れもよくわかり、既説もよく整理してある。
    大河のため、類書は多いが、一番いいのではないかと思う。
    頼朝と義時の役割も納得できるし、全体像がスッキリと入ってくる。
    もう少し詳しく読みたくなるが、新書という分量では量的にこれくらいがいいところだろう。
    呉座さんの本はどれもわかりやすくていい。

  • 保元・平治の乱を通じて清盛は国家的な軍事警察権をほぼ独占したとはいえ、国衙機構を通じた統率にすぎなかった。一方、平氏の専横に対する反対から始まった長い内乱の間に、頼朝は武士との私的な主従関係を作り上げた(具体的には、旧平家方の荘園を含む荘園への地頭任命)。頼朝は征夷大将軍である間に御家人たちとの関係を私的なものから制度的なものに変えている。国家的な軍事警察機能を担う御家人たちを任命する人事権を将軍が握る。これが鎌倉幕府の本質である。絶大な権力を握った頼朝だったが、それを乱用するようなことはしなかった。頼朝はそもそも朝廷から独立した武家政権を樹立しようとは考えていない。頼朝には源氏の棟梁として一家を復興させる課題があり、跡継ぎ問題を考えれば朝廷に対して抑制的である必要があった。頼朝は自らの課題を達成する鍵として北条義時を見いだしていた。実朝の死後、義時は朝廷に反抗的な態度を取る。そして、承久の乱を経て幕府と朝廷の関係は大きく変化した。あくまで朝廷との共存を図るものの、武士が朝廷に仕えることはできなくなった。義時は、中世の武家社会の定着に大きく貢献したのである。

  • 応仁の乱みたいに、読者が処理しきれないような圧倒的な情報量で迫るみたいな感じじゃなくて、現時点での有力な解釈を読みやすくまとめた感じ。もともと「鎌倉殿の13人」の時代考証を担当されていた(例の事件で降板)こともあるので、この大河ドラマの時代背景を知るにはとても良いね。

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著者プロフィール

国際日本文化研究センター助教
著書・論文:『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』(中央公論新社、2016年)、「永享九年の『大乱』 関東永享の乱の始期をめぐって」(植田真平編『足利持氏』シリーズ・中世関東武士の研究第二〇巻、戎光祥出版、2016年、初出2013年)、「足利安王・春王の日光山逃避伝説の生成過程」(倉本一宏編『説話研究を拓く 説話文学と歴史史料の間に』思文閣出版、2019年)など。

「2019年 『平和の世は来るか 太平記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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