メタバースとは何か~ネット上の「もう一つの世界」~ (光文社新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 2022年3年号

  • 事例の説明よりも、筆者なりのメタバースという概念の理解に関する説明が中心。
    SF的で面白いが、やや癖のある語り口かつ、後半部分は繰り返しも多く読んでいてしんどくなる点も。情報量はそれほど多くないが、メタバースというものを自分の頭で考えるきっかけにはなった。

    ・メタバースはミラーワールドと違い、リアルの模倣に拘らない「都合のいい」空間を指す。足が悪い人が空を飛べ、自分の見た目に自信がない人が別の見た目になれる。重力が邪魔なら重力がない世界を作れる。

    ・これに没頭することはもはや仮想空間への逃げではなく、居心地の良い国を求めて移民することと変わらない、というのが筆者の主張。今は実世界でうまくいかない人がSNSのフィルターバブルに閉じこもるが、SNSはあくまで日常生活から離れた一部でしかないので、これが日常世界化する

    ・「ブレグジットも、トランプ旋風も、異世界転生ものの流行も、リアルで報われない自分や、リアルでいくら頑張っても正当な利得は得られそうにない状況をリセットする欲望が共通項である」

    ・今なぜメタバースなのかというと、技術的に発展したことに加えて、自由で自分に都合のいい世界に住むという価値観が当たり前になりつつあるから

    ・「実際、これは本当に魅力的なのだ。人間の極めて根源的な欲望に、承認の欲求がある。人間の極めて根源的な欲望に、承認の欲求がある。居場所を見つけ、誰かに認めてもらい、好きだと言ってもらう。とても安心する瞬間だ。でも、現在この安心を獲得するためのコストが高騰している。自由を実現した結果、一人一人の考えていることが大きく異なるようになったからである。」

    ・今はインターネットの世界をAppleやGoogleが構築してみかじめ料をとっているが、フォートナイトのような新たな世界がユーザーからの圧倒的な支持を武器に、GAFAのシマから出て行こうとしている。Facebookもビジネスモデル的にこの2社に生殺与奪を握られているので、GAFAMの中ではメタバースに食いつきやすかった

    【意見】
    ・メタバースは想定していたよりも「メルヘンチックな」世界だと感じた。つまりみんなが常に潜って暮らすような世界というよりは、異世界を楽しむための空間でしかないのだなと。そうなった時に「損害保険」などという以下にも「現実社会代表」「みんな嫌いだけど事故は怖いからしょうがなく入る」みたいな概念はメタバースへの入場を許されないなと感じてしまった。

    ・この時代、「いかに世の常を無思考に受け入れず、自分の居心地のいい場所に身を置くか、居心地良く生きるか、承認を得られるよう自己アピールするか」みたいな感覚が問われていると実感。自分はある程度恵まれている故に「まあこんなもんだ」と現実を安易に受け入れていたかもしれない。人生1度なのだからもっと自由に楽しく生きれないものか、とは思ったので、その1つとしてこうした空間も知っておきたいと感じた(知った上で選ばないのと、知らないから選べないのは違う)

    ・インターネットにより承認欲求も得られうる承認も肥大化している。そんな中でいかに承認にこだわるか、こだわらないか、自分なりの答えを出していないと生きにくい。

  • ふむ

  • イギリスでの産業革命で機械工業が進んだ。
    そしてデジタル革命で、誰もが動画や写真を手軽にとれるようになり、マスコミだけではなく誰もが世界に向けて発信できる世界になった。
    さらにこれから、デジタルの世界と現実の世界の境界があやふやになる……デジタルの世界で生きることができるようになる仮想現実「メタバース」の世界が現れる。
    その技術と企業についての動向から、そんな世界になったときにデジタル世界で生活し生きることについて、幅広く網羅した書籍。

    GAFAのうち、グーグル、Amazon、アップルは、メタバースに対応した機器に参入しているが、フェイスブックは出遅れているというのは言われてみれば確かになあ、と思った。
    だからこそ、メタバースに対応した会社になるように、社名を変更し決意を露わにした。
    デジタルの世界を著者は歓迎している。

    自分はこれを読んで、確かに仮想現実の世界は面白そうだとは思うが、現実世界に生きないと、身体機能がどうなっていくんだろうか、と危機感を抱いた。
    現在も、座りすぎで運動不足が言われているのに、パソコンを打つという作業すらなくなり、指先の触感すら必要としなくなったら……それも10代20代の若者からそれに触れ親しんでいたらどうなってしまうんだろうか、と思う。
    今でも、座りすぎの事務職は寿命を縮めるというし。
    ただ、本書でも触れている通り、病気や事故、老化などですでに身体に不調を来たした人にとっては救いになるだろうとも思う。
    (自分は事故で身体障害者になったが、メタバースの世界でまた走れる日を夢見ている)

    世界はメタバースを生み出す方向に進んでいることは確かで、その動向が本書によくまとめられている。読んでよかった。良書。

  • Amazon unlimited
    印象に残ったことを下にまとめ。
    メタバースについての基礎知識がかかれてて、全体的に面白かった。
    自分はゲームをしないけど、子供たちの様子を見てると、なるほどなぁって思うことも多くあった。
    結局能力のあるものは、リアルでも仮想空間でも 勝ち組になれると思う。
    ただ、勝負の仕方が変わるので、国や人種や性別、見た目、障害の有無関係なく、実力のみで勝ち上がれる場所になっていくのかな?
    まぁでもプラットフォームを抑えたとこが一番強いけど。
    その中でどれだけ踊れるか?かな。

    ◇以下ネタバレ◇
    自由には責任が伴う、自由には格差が生じる→能力に恵まれたものには良いがそうでない者にはしんどい
    平等を推し進めると自由でなくなる(再分配・制約等)
    「みんな違ってみんないい」は正解が多数ある→間違いの修正は生き方を否定すること。自分が不快=不正義となってしまう。
    マジョリティは昔からサイレント
    メタバース内で勝利をつかむには「いいね」の数になってくる
    人間能力の拡張
    議論は向かない。パーソナルスペース
    メタバース内の仮想通貨
    格差リセットの可能性をはらむ未開のフロンティア

  • 2次元の世界に没頭する著者が、メタバースに関する技術的な情報だけでなく、今後メタバースが浸透していくであろう根拠を社会学的な?視点でも分かりやすく論じている。嗜好に大分偏りがあることを差し引いて読んでも興味深い内容ではある。
    大筋の流れとしては、人は心地いい世界に浸るのが好き→ネットでは自分の価値観の近い世界に閉じこもる(SNSもそう)→メタバースでもその流れは変わらず、加速→仮想世界で生きる人が増える(メタバースでお金を稼げるようになるようになれば尚更)という感じ。
    私としては、社会で生きていく上で、価値観の異なる人と仕事をしたり、擦り合わせたりしていくことってものすごく基本で大切なことだと思うのだが、「そんなの関係ねえ!」とばかりに心地よい関係に埋もれていきたい著者。
    いかに五感がリアルに近づいても、リアルとの間に差はあるから、やっぱりネットはリアルを補完する位置づけだと思うなあ。キャンプ好きだなあ。

  • ネット社会の住人の視点が冗長だが、飛ばし読みしてもメタバースの世界の今がわかる現時点では唯一の解説書。

  • メタバースってなんぞやと思ったので、読んでみたが、SNSやテックジャイアンの動向など、想像以上な内容が展開されていて非常に参考になった。
    また、一番知りたかった答えとしてメタバースにはまだ実態がない。コンセプトというか考え方だけというのがわかった。ちょっと勘違いしていた。
    で、SNSは自分と同じ志向の人を集める仕組みという分析もよかったし、「自由と平等は食い合わせが悪い」はなるほどと思わせた。
    この人の別の本も読んでみようかと思った。

  • (2022/21)フェイスブックが社名をメタへと変えるなど、メタバースなる言葉が飛び交うようになったけれど、実のところ僕には「?」な感じだった。本書はメタバースを「現実とは少し異なる理で作られ、自分にとって都合がいい世界」と定義するが、これがなかなか理解しやすい整理かも。息子がやっていることを横目で眺めてきただけだったけど、シノゴの言わずにフォートナイトとか色々やってみるべしなのかもね。一昔前にSNSを理解できなかったおじさん達のように僕自身がなってしまわないためにも。

  • - メタバースは仮想現実なので、現実ばなれ(リアルばなれ)した「都合のいい世界」 を作ることができる。これがメタバースの本質だろう。
    - 自分が活躍したり、 寛いだりする場所、作られた仮想世界の中くらい、いやな要素を排した都合のいい空間に浸りたいという気持ちにメタバースは響く。
    - 衝突が大きい社会において、SNSは友だちとつながるサービスではなく合わない人を切り捨てるサービス。居心地がよく、好まれる。メタバースが伸びる素地を作っている。
    - インターネットはフラットな世界ではなく、資金と設備を擁した者が勝つ重厚長大産業だ。

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著者プロフィール

中央大学国際情報学部教授

「2021年 『デジタル/コミュニケーション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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