政治学者、PTA会長になる [Kindle]

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  • 毎日新聞出版
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感想・レビュー・書評

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  • うちは子どもがいないので、PTAとは縁が無いのだが、魔界だと漏れ聞くので怖いもの見たさで。

    政治の研究者である著者が、PTAの不合理な部分と戦う話だと思ったら、違っていた。そういう部分ももちろんあるのだが、正面から戦わないで「うまくやる」局面も結構多い。それはPTAが本質的にボランティア活動で、何かを犠牲にしてでもやらなければならないものではない、という原理原則を著者が守っているからだろう。前例に拘泥しないボスって大事だな。

  • ちょうおすすめ.
    PTAってやべーんだって印象だったけど,この本を読んで考えが変わった.
    PTAに限らず,身の回りの組織や集団で当たり前のように生じているであろう何となく嫌な空気を少しでもよくできるような話が書かれている.

  • 子どもがいないのでPTAについてよく分らないまま読んだがそれなりに面白かった。政治学者といえども理論を実践するのは容易くないんだなと思った。古い組織を改善したいときに読むと役に立ちそう。

  • PTAの闇を予習するつもりで読んだが,現場は理屈じゃない。ベルマークや古紙回収に意味があるという視点には驚く。ポイント制についても功利主義だけでは割り切れないというのはまさに現場の学びだと思う。
    「自分が何者かである」という意識は僕自身にもある。というか,みんな自分が何者かであると思っているのが当然だと思っていた。だって,誰かの子であり,親であり,職業人であり,ときには各種団体のメンバーであり,そういう重層的なアイデンティティで個人は成り立っているんじゃないの?「自分は何ものでもない」というアイデンティティの在り方は想像もしなかった。そういう人たちに思いを致すことができていなかった。

    PTA「思い出そう,十のこと」
    1 PTAは,自発的に作られた「任意団体」です。強制があってはなりません。
    2 PTAは,加入していない家庭の子を差別しません。企業ではないからです。
    3 PTAに人が集まらないなら,集まった人たちでできることをするだけです。
    4 PTAがするのは,「労働」ではありません。対価のないボランティア「活動」です。
    5 PTAのボランティア活動は,もともと不平等なものです。でも「幸福な不平等」です。
    6 PTA活動は,ダメ出しをされません。評価はたった1つ「ありがとう」です。
    7 PTA活動は,生活の延長にあります。家庭を犠牲にする必要はありません。
    8 PTA活動は,あまり頑張りすぎてはいけません。前例となって「労働」を増やします。
    9 PTAは,学校を応援しますが指導はされません。学校と保護者は対等です。
    10 PTAの義務は1つだけです。「何のためのPTA?」と考え続けることです。

  • 学びが大きい、畑の違う人がこんなにも噛み合わないかという学びが特に大きいです。
    副会長の懸念が全てだと思う、この人が辞めた後に、成文のルールも(おそらく)ない状況でどうなっていくのかが結果なのではないかなと。そんなことは知らないとおっしゃる方は多いのだろうけど、じゃあ結局影響以前以後で何が変わったのか、しかも時間の経過の中で見るしかないのではないかな、と。
    個人的には田舎におだてられて行った医師が馴染めずに騒ぎを起こして辞めていく姿を見ているので、なかなか感慨深いです。仕事ではないことが大きな違いであり、難しい点でもあると考えるが、だからこそこの方の場合少なくとも周囲10メートルではうまく行ったのだろうなと想像します。
    それまでそういった仕事をしてこなかった人が、急にPTAという文化的にも組織的にも拝コンテクストな役職に恐れながらつき、期間が決まっていてなんとかやり過ごしたいと思っていると背景を想像します。
    最終的には政治学者が相手でもその人が気に入りそうな発言が増えてたりで興味深いです。言葉は発言者の存在感も伴うので、畏怖を感じる声が大きい人がいれば周辺は影響されたにせよ合わせてるにせよその人の心地よい環境が作られがちと感じました。
    特に何かの専門職の陥りがちな間違いとして背景知識の差を相手の問題に帰属させるというものがあると思います。憲法学者さんの例を出していたが、そんなら受けない、もしくは受けたなら背景の違いに配慮して話の展開をすべきと当然ながら思いました。現場を見てないので詳細はわからないが、相手にとっては難しい原則論を述べて、詳細を聞かれたときには説明を気質を理由に省くなら、相手はその人が気にいるような忖度をするほかないんだろうなとおもいます。コロナ関連の時、全体の意見を聞くべきと副会長が言ったという点において、べき論を中心に添えて展開させおり、結局全体がどういう思いかをわからないまま進むなら誰のための組織なのか、とも思えてしまいます。
    などと。とても面白い本でした。『田舎はいやらしい』という本と併せて読むと、さらに学びが深いと思いました。

  • タイトル出落ちと思いきや、ちゃんと面白かった。ナーロッパ転生異世界攻略テンプレラノベに飽きてきた方あたりにオススメかもしれない

  • 大学で教える政治学者が、公立小学校のPTAを義憤で引き受けてしまい、それを義憤故にいろいろ錯誤しながらこなしていき、地獄のようなPTA組織を風通しのよい、自治組織としてのPTAにしていく過程を鮮やかに軽やかに描出している。

    本当にPTAに求められている働きはなにかを探り、それは本当に必要な行事なのか、制度なのかを問いながら、政治学者が仲間と作り上げてきた三年間は、自治組織としての一つの形になったのだろうと考えられる。

    私もわずかながらPTAに関わったが、これほど硬直化した組織とは思わなかったが、少なからずこの本の中にあった専業主婦と、ワーキングママとの断絶は感じて、た。私が関わったPTAが。こういった組織だったなら是非とも参加して、自治の経験をしたかったと読後に思う。

  • 政治学者の岡田憲治による、エッセイ/体験記。政治学者としての矜持を持つ著者が、小学校PTAの会長を務め、身近な政治を3年間実践した経験の物語。著者の学問的な理論と、これを圧倒する学校現場やこれを取り巻く教師と親達の現実を対比しながら描き、それにより仕組みや環境などの深い課題を浮き彫りにする、良質なエスノグラフィーともいえるのではないかと思う。例えば、「PTA役員選出は公益のため独立性の担保された機関により行われるべきである」という正論と、「自分自身意味も分からない中で子どものためと言われて辛い思いをしながらなんとか頑張ってやってきたPTA活動の引き継ぎ先は自分たちに了解を得てから決めるべきだ」と考える旧役員の気持ちが対比される。その背景として、活動の意味を説明しない行政や学校側の余裕や意志の無さ、意味を問わない親たちの文化、意味がわからなくても与えられた仕事を完璧にやろうとする真面目さ、マネジメントばかりが発達しリーダーシップが欠如した仕組みなどが描かれる。PTAメンバーの人はもちろんだが、組織のリーダーをしている人、リーダーの観点で組織の問題をより深く理解したい人には相当な含蓄がある本だと思う。

    現場は常に理論を圧倒する、という趣旨の言葉が書かれていたが、この言葉がこの本によって非常に腹落ちした。
    理論は実験室内のことでしかなく、現場でその理論を再現するためにはさまざまな「ノイズ」に打ち方ねばならず、それこそが難しい。

    また、著者が「自治」=「自分のことはできる限り自分で決めること」の考え方ことをとても大切にしているようで、自分の人生や、自分のコミュニティにおいてリーダーシップを発揮することの大切さを描いている。

  • ふむ

  •  政治学者が子どもの学校のPTA会長に。

     PTAの問題点は様々なところで指摘されているが、この本のすごいところはそこに政治学者ならではの民主主義的なプロセスとは何かという視点で常に語られているところだ。
     だからこの本では一見不合理に見える今のPTAのやり方も簡単に切り捨てない。そこに関わる人々の意見と共に時に温存し、時に時間をかけて緩やかに変えていく道を選んでいく。

     政治参加とは選挙で投票することだけではない。身近な公的な性質を持つ集団に関わることもまた政治参加であり、民主主義が試される場なのだ。

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